育て達人第103回 小高 猛司

「21世紀型自然災害」で戦略的研究基盤形成プロジェクト   災害リスク軽減への5か年研究計画を文科省が採択

理工学部 小高 猛司 教授(地盤力学)

 文部科学省の平成24年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に、名城大学からは2つの研究プロジェクトが採択されました。理工学研究科の赤﨑勇教授が代表の「窒化物半導体・新領域エレクトロニクス」と、理工学部建設システム工学科の小高猛司教授が代表の「21世紀型自然災害のリスク軽減に関するプロジェクト」です。小高教授に聞きました。

――「21世紀型自然災害のリスク軽減に関するプロジェクト」とは、東日本大震災を教訓に減災への対応に本腰を入れようということですか。

「目前の課題には全力で取り組んでほしい」と語る小高教授

「目前の課題には全力で取り組んでほしい」と語る小高教授

 もちろんそれもありますが、実はプロジェクト申請の準備を始めたのは大震災が起きる前の2010年の秋でした。名城大学では2007年度から5年間、私も含め理工学部建設系3学科教員13人による「制震構造化等の新しい概念による構造物の耐震性能向上プロジェクト」が文部科学省の私立大学学術研究高度化推進事業であるハイテク・リサーチ・センター整備事業として取り組まれてきました。プロジェクト代表を務められた建設システム工学科の宇佐美勉教授から、5年間の研究実績を基礎に、新たな研究プロジェクトを立ち上げるよう強く勧めていただきました。

――採択されたプロジェクトは5つの研究テーマで構成されています。各テーマとリーダーは①連動型巨大地震に対する土木構造物の安全性と修復性の向上に関する研究(葛漢彬・建設システム工学科教授②大空間構造物の耐震安全性評価による震災リスクの軽減(武藤厚・建築学科教授)③豪雨および水災事象の発生機構とリスク軽減方策に関する研究(原田守博・建設システム工学科教授)④水工学-地盤工学の連携による沿岸域低平地の自然災害リスク軽減への挑戦(小高教授)⑤「中核被災者」を主体とした被災限界からの自律再建メカニズムの解明(柄谷友

 耐震関係だけでなく③~⑤のような新しい枠組みやテーマも取り入れています。これからの自然災害のリスク軽減のためには、地震だけではなく豪雨対策も重要です。毎年必ず起きる豪雨災害では気候変動の影響がリスクを高めていますし、堤防の破堤への備えには地盤工学と水工学との連携によるアプローチも重要です。さらに、これまでの体験を踏まえた被災者の生活再建メカニズムを解明することも重要です。

――名城大学では、こうした学部・学科の垣根を越えたプロジェクトはめずらしいのでは。

 最近の研究分野は細分化が進み、極端に言ったら、隣の研究室でさえ何をやっているのかよく分からない状況です。東日本大震災のような大きな災害が起きると、いろんな現象が連動して起こります。そうした連動現象をどうとらえるかが非常に重要です。お互いにタコつぼに入って研究しているのでなく一緒に考えましょうということで具体化が進みました。参加研究者は若手を中心にした19人です。これだけたくさんのテーマが並んでいると、研究としては違和感を持たれる面もあると思いますが、ハード的な研究だけでなく、ソフト的な対策も入れないと不十分になります。

――東日本大震災では巨大津波によって破壊された護岸堤防、根こそぎ倒壊した鉄筋構造物の映像を見て、脱力感に見舞われた研究者もたくさんいました。

 私もその一人です。私が最初に調査に出向いた被災地は宮城県女川町ですが、コンクリートのビルの基礎が引き抜かれて倒れていて、何も言えませんでした。想定外という言葉は使ってはいけないのでしょうが、本来なら地中にしっかり入っているはずの基礎部分が、地盤が液状化したところに津波の外力が襲いひっくり返ったのです。いろんなことが連動して起こりえるんだということを目のあたりにしました。見るもの全てショックで、昨年前半は無力感でいっぱいでした。自分は一体、何をやってきたのかと。

――自然災害のリスク軽減を目指した大型プロジェクト立ち上げの準備中に、その大震災が起きてしまったわけですね。

 そうです。理工学部3学科(建設システム、環境創造、建築)が合同でやるということで、大震災前日の教室会議で審議していましたし、京都大学時代、同じフロアに研究室があった柄谷先生にも震災前から声をかけていました。ですから、本当にショックでした。何もできないうちに、恐れていたものが起きてしまったわけですから。大震災から半年ほどたって、これから何をすべきかとか、今までやってきたことは実は間違ってはいなかったとか、やっと落ち着いてものが見えるようになりました。プロジェクトの申請を文部科学省に提出したのは今年1月でした。

――学生たちにメッセージをお願いします。

 目の前にある、自分がすべきことを見つけて全力で取り組んでほしいと思います。それをしなければ次のステップには進めません。現在その場に自分がおかれているということは、何か縁があるわけで、どんなことでも全力で取り組んでいれば必ず誰かがそれを見てくれています。日々修行だと思って自分を高める努力をして下さい。

小高 猛司(こだか・たけし)

名古屋市出身。名古屋大学工学部土木工学科卒、同大大学院工学研究科博士後期課程土木工学専攻修了。博士(工学)。名古屋大、東京大、京都大助手、京都大助教授を経て2006年名城大学助教授。2007年から現職。著書に「地震と豪雨・洪水による地盤災害を防ぐために~地盤工学からの提言~」(地盤工学会)など。46歳。

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