育て達人第108回 伊東 慶

将来につながる一歩を信じたい   動き出せば世界は広がる

人間学部同窓会長(名城大学校友会副会長) 伊東 慶さん(2009年人間学部卒)

 開設10周年を迎えた人間学部。9月21日に行われた記念式典で、卒業生として運営の中心となったのが同窓会長の伊東慶さん(25)です。9人の校友会副会長の中では最年少でもある伊東さんに、卒業後、外から見た母校の印象、若い卒業生たちのエネルギーを母校のためにどう生かすべきかなどについても含め語ってもらいました。

――名古屋マリオットホテルでの10周年記念式典で、伊東さんが米アップル社共同創業者スティーブ・ジョブズの言葉とともに、「私たちは何かを求めてこの会場に来たのではなく、“来たいな”という思い一つで来ました」とスピーチしたのが印象的でした。

「動かなければ何も始まらない」と語る伊東さん

「動かなければ何も始まらない」と語る伊東さん

 僕らの年代は、ちょっと大きな会とか、知っている人が少ない会には参加したがりません。人間学部の卒業生は1200人しかいませんが、それでも、知らない人が集まる会合に出て何のメリットがあるのかという意識も強い。卒業生を束ねなければという同窓会長としての思いが、ジョブズの「先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来、何らかの形で点がつながると信じなければならない」の言葉と重なりました。式典に参加してくれた仲間たちには「きょう出会ったことはきっと将来につながるはず。まずは一歩を踏み出そうよ」という思いを訴えようと決めていました。

――学生時代も、授業でタンザニア大使館員のアフリカについての講演を聞いてタンザニアを1か月間訪れたそうですね。社会人になって、与えられた機会を生かして、状況を変えて行こうという積極的な姿勢がさらに身についたのでは。

 入社したリクルートエージェント社は企業の求人活動をサポートする会社です。母体であるリクルート社は創業時「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉を掲げていました。創業者江副浩正氏の経営哲学から生まれた言葉で「待っていても機会はない、自分の力でそれを作り出せ」という発想だと僕は捉えています。エージェント社では、ゼロから1をというより、「機会を自分で探しだし、自ら動くことでしっかり物にしなさい」というポリシーでした。江副さんには直接お会いしたことはありませんが、そのイズムがしっかりと社員たちに浸透しているわけで、すごい人だと思いました。この会社で働くことができたことで、より自らの姿勢が固まったのかもしれません。

――今年4月に退社されたそうですが、実家が経営する幼稚園を継ぐためですか。

 そうです。できれば、企業での経験のほか、人間学部時代に取得した中学・高校の英語教員免許を生かして教員も体験したかったのですが、予定が早まりました。名城大学創立とほぼ同時代の大正13年創立の幼稚園は母親が4代目園長。少子化での幼稚園経営は厳しい環境にあり、5代目を継ぐにもしっかりした覚悟が必要です。昨年、同窓会長と、校友会副会長を引き受けてほしいという話があった時も、幼稚園経営に役立つ経験ができるのではないかと前向きに考えてお引き受けしました。組織の運営、それに伴うお金の動かし方を学ぶことも大切な機会だとも思いました。

――人間学部同窓会や名城大学校友会運営にはどんな姿勢で臨んでいますか。

 人間学部同窓会執行部は僕ら3期生が4人、4期生1人の計5人。執行部と1200人のOBたちがともに楽しむことができるような企画をしていくことを心がけています。10周年記念式典も、会場の設定は大学が、集客は同窓会、学生チームは式典を盛り上げるゲームの企画など、役割分担がスムーズにできたことが成功につながったと思います。この成功をどう今後につなげるかですが、学部全体という大きな組織ではなく、ゼミとかもっと小さな単位で活動していきたいと考えています。昨年10月、僕ら3期生が初めて、卒業後3年目に集う「3年会」を開催し、200人中60人ちょっと集まりました。僕たち20歳代はメールとかツイッターとか、身近に誰かを感じるツールに恵まれています。だからこそ、こういった実際の出会いというか、「リアルな場」が必要だと思います。校友会運営でも経験豊かな諸先輩のリーダーシップ、企画力に学びながら、お役に立てればと思っています。

――卒業して外から見た名城大学の印象を教えてください。

 リクルートエージェント社での仕事が、会社回りだったこともありますが、東海地方では名城大学の知名度は抜群です。あちこちの会社で「僕も名城だよ」という声を聞き、部活の話題などで盛り上がります。製造業担当だったこともあり、「名城の電気の学生は優秀だね」などという言葉を頂いたこともありました。もっと頑張ってほしいなと思うのは、大学からの「名城らしさ」の発信です。電車内の広告を例に取っても、他大学に比べ、総合大学としての名城大学の魅力がうまく発信されていないような気がします。

――後輩の学生たちにメッセージをお願いします。

 どんどん外に向かって動いていくことが大切だと思います。外との関わりが生まれ、新しい可能性が開けます。就職の悩みでも、先輩への1本の電話で思わぬ展望が開かれるかも知れません。一歩を踏み出せば世界は広がるし、それで違うなと思えば違う道を選び直すこともできます。動かなければ興味も膨らみません。

人間学部10周年記念式典で

人間学部10周年記念式典で

伊東 慶(いとう・けい)

名古屋市港区出身。2009年3月、名城大学人間学部を卒業し、株式会社リクルートエージェント入社。2012年4月に同社を退職し、実家が経営する1924年(大正13年)創立の慶和幼稚園主事に。2011年度から人間学部同窓会会長、校友会副会長。25歳。

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