育て達人第120回 津川 定之

ハンドル握らない自動運転技術研究に挑む    まずはトラックの隊列走行と高齢者向け小型低速自動運転車が有望

理工学部情報工学科 津川 定之 教授(ITS工学)

津川定之教授の専門はITS工学。最先端の情報通信技術を利用し、事故防止や渋滞緩和などを図るITS(高度道路交通システム)開発に、わが国ではいち早く取り組んできた研究者です。自分でハンドルを握らなくても目的地まで行ける自動運転カーが脚光を浴びていますが、脚光を浴びる背景や課題も含めて語っていただきました。

「車が運転手 現実に?」「トヨタ、日産、グーグル…自動運転車に続々参入」「自動運転カー 開発競う」――など、自動運転カーに関する報道が目立ちます。

人が運転するから事故は起きるし渋滞も起きる。飛行機とか新幹線と同じように、オートメーションを導入することで、安全を確保し、効率を高めようというのが自動運転カー開発が始まったきっかけです。アメリカではすでに1950年代から自動運転に関する研究が始まり、日本では60年代から研究が本格化しました。ただ、研究の盛り上がりも山谷がありました。90年代にも自動運転が世界的に盛り上がりましたが、90年代終わりには、「実現は難しいのではないか」と日本でもアメリカでもプロジェクトが中止になりました。

自動運転カーがまた注目されるようになったのはどうしてですか。

コンピューター処理能力の向上やセンサー技術の進歩、測位システム(GPS)の普及などもありますが、グーグルが2009年頃自動運転カーを試作したことが大きなきっかけとなりました。アメリカ国防総省の高等研究計画局が軍用車両の無人化研究のため、2004年から2007年にかけてオフロードや模擬市街地を無人車を走らせるコンペをした際、グーグルは優勝チームからエンジニアを引き抜き、本格参入しました。ビッグデータを蓄え、自動運転カーOSを作り、自動車メーカーに売り込む狙いなのか、まだ不明ですが、グーグルの動きは世界の自動車メーカーの動きを加速させました。

ITSの研究を始めたのはいつからですか。

大学院での専門が制御だったこともあり、コンピューターを使って物を動かす研究がしたくて、通産省工業技術院の機械技術研究所に入り、そこで与えられた研究テーマが自動運転でした。自動運転の研究はアメリカが先行していましたが、我が国では60年代に私たちの先輩が道路に誘導ケーブルを敷く方法の研究を行いました。70年代に私たちが取り組んだのはコンピューター、テレビカメラを使い道路を検出する世界初の運転システム、日本名が「知能自動車」で、1979年に人工知能国際会議で発表した論文は今でも国内外の論文に引用されています。

自動車メーカーによっては「2020年までに実用化する」と発表しているメーカーもあります。

法律や制度の課題もありますが技術面でもまだまだ課題があります。障害物が少ない航空機や船に比べ、車は様々な環境を走るわけですから、全く手放しで乗用車を運転するとなるとハードルは高い。センサーや制御装置などのハードウェアとコンピューターのソフトウェアがどのくらい信頼に足るものかまだ十分検証されていません。2008年から私がプロジェクトリーダーを務めた、トラックの自動運転隊列走行を目指した「エネルギーITS」プロジェクトでも、例えば、異なった原理で動くセンサーを2種使うなどして信頼性をあげていますが、自動運転カーがどれくらい長時間、故障なしで動くか、雨や雪などどれくらい悪いコンディションまで機能するのかなどではまだ十分なデータは取れていません。コストをいかに抑えるかの課題もクリアしなければなりませんし、法律や制度の整備も必要です。

実用化にはまだ時間がかかるということでしょうか。

一般のドライバーが市街路でも使う乗用車に関してはそう思います。一方、高速道路では導入しやすく、列車のように数台が連なって走れば、風の抵抗が減らせて燃費改善、CO2排出削減にもつながります。「エネルギーITS」ではトラック4台を時速80km、車間距離4mで全車自動運転で走らせましたが、荷物を積まないデータですが燃費は約15%減らせました。乗用車に比べれば実用化水準に近づいていると思います。さらに、私が近未来に導入される分野ではないかと期待しているのが高齢者の移動手段としての活用です。小型で低速の車両なら公共交通手段がない過疎地など、マーケットはあると思います。

名城大学の教員になって10年。自動運転カー実現の夢を追っている学生はいますか。

「やりたい」と研究室に飛び込んできた学生は現在2人います。ロボットにセンサーを積んでいろいろ動かしながら制御アルゴリズム(計算手順)の研究に頑張っています。私は研究とは、他人が考えないこと、他人が行わないことに果敢に挑戦することであり、研究の目的は世のため人のためになることを明らかにする、そのようなものを創ることだと思っています。全ての学生の皆さんへの注文でもありますが、困難から逃げないで立ちかう知力と胆力を持ってほしいと思います。そして、理工学部の学生なら、工学の基礎である数学と自然科学から絶対に逃げないでほしいですね。

「数学と自然科学は工学の基本」と語る津川教授

「数学と自然科学は工学の基本」と語る津川教授

津川 定之(つがわ・さだゆき)

広島県出身。東京大学工学部計数工学科卒、同大大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了。工学博士。通産省工業技術院機械技術研究所(2001年からは独立行政法人産業技術総合研究所に組織改変)を経て2003年10月から名城大学教授。経産省エネルギーITS研究会座長、米国電気電子学会(IEEE)のITS部門理事なども歴任。

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