育て達人第121回 磯前 秀二

コーディネート力高める農学部での学び

自校史から先輩を知ることは学生の励みに

農学部長 磯前 秀二 教授(農業経済学)

全国の農学部が元気です。食への関心の高まりなど時代の要請もあるのでしょうが、学部や学科の新設の動きも活発です。名城大学でも農学部附属農場で採取されたカーネーション酵母を使った日本酒「華名城(はなのしろ)」など、農学部から名城大ブランド商品が相次いで誕生しています。元気な農学部の磯前秀二学部長に聞きました。

――農学系学部に熱い視線が注がれ、醸造学研究室をモデルにした漫画も人気です。

「興味を持ったことは必ず調べる習慣を身につけてほしい」と語る磯前学部長

「興味を持ったことは必ず調べる習慣を身につけてほしい」と語る磯前学部長

国公立55、私立20の農学系学部の学部長が集う全国農学系学部長会議というのがあります。私は広報委員を務めていますが、10月の京都での開催の際にも、全国紙記者から、最近の農学部の人気の背景について取材を受けました。安全でおいしい食への期待が高まっていること、さらには環境・バイオエネルギー、農業問題の国際化など、現在の農学部が扱う対象が広がっていることがあると思います。会議の参加者の多くから、「魅力的な学生が増えている」との声が出ました。今日の農学分野では、研究対象が多様化し研究手法も多様化しています。私としては、農学部で学ぶことを通して、思考法の総合性すなわちコーディネート力が養われるのではないかと考えています。

――名城大学の農学部の学生たちもコーディネートする力量が高いですか。

本学農学部は、学生の成長をたえず意識した教育や研究、地域貢献を展開しています。またグローバル化への対応として、大学院生等の英語による国際学会での発表を奨励しています。もちろん国際シンポジウムも毎年のように実施しています。吟醸酒「華名城」にしても、加藤雅士教授(応用微生物学)の研究室が、学生の卒業研究の一環として、花の酵母を使った日本酒造りに挑戦し、地元酒造会社等の協力も得ての成果です。プランを完結させるには、担当するスタッフのコミュニケーション力が大切であり、限られた時間内に各分野ですり合わせをし、結論を迅速に出しながら進めて行かなければなりません。こうした「学部風土」のおかげで、企業の採用担当者との懇談では、卒業生に対し、コーディネート力が高いとの評価をいただいています。

――農業経済という分野を選んだきっかけを教えてください。

今でいうiPS細胞のような細胞分裂の研究がしたくて東大理科Ⅱ類に入りました。農学、薬学、理学部の生物化学系に進む分野です。ところが教養の経済学の授業で、アメリカ経済論の第一人者である嘉治元郎(かじもとお)教授の講義に興味を持ったことで考えが変わりました。嘉治先生は、農業が生み出す価値が社会の中で循環し、経済循環を生み出し、社会を発展させていくという「ケネーの経済表」についての説明で、外科医でもあったケネーが、血液循環をヒントに経済循環を図式化したことを指摘しました。そして、「皆さんは理科系ですが、案外、生物の仕組みからの発想が経済学の分野でも役立つと思いますよ」と語ったのです。

――授業では環太平洋経済連携協定(TPP)の問題も扱うのですか。

テレビや新聞でのTPP等についての説明はどうしても「分かりやすい」ことが至上命令。3年生たちに教えている農政学の授業でTPPを扱う際は、学生たちには「テレビでは有名な先生が解説していますが、極端なまでに平易さを優先しているため、正確な言い方にはなっていません。ですから君たちには本当の理屈は伝わっていないと思います。本当の理屈に少しでも近づくのがこの授業です」と前置きします。農学部の学生たちは経済学は専門ではないので、経済学の基礎のみを必要な範囲に限定して使っています。

――農学部の30年史や60年史を読むと、草創期の学生たちは春日井市の鷹来校舎での農場整備など大変な苦労をしています。今の学生たちは知っているのでしょうか。

全く知らないと思います。これは他学部も同様でしょう。私は、愛国心や愛校心は、歴史を全体として正確に伝えなければ育たないと思っています。先輩たちがどういう想いで頑張ってきたのかを知ることで、学生たちは先輩に恥ずかしい生き方はできない、自分も頑張ろうと刺激を受けるはずです。名城大学でも音速滑走体の実験が行われるなど非常に面白い時代がありました。大学の苦労の歴史、輝いた歴史に学生たちが自然に触れるスペースが必要だと思います。

――学生たちへのエールをお願いします。

つらくても我慢して覚えなければならないことが学問にはたくさんあります。そして、興味を持ったことは必ず調べる習慣を身につけてほしいと思います。調べようとする人はたくさんいますが、実際にしっかり調べる人は少ない。調べることを習慣化すると、知識は蓄積され続けます。蓄積の差は、4年間では大きな差になって現れます。教育はサービス消費にあらず、投資です。

6月の田植祭であいさつする磯前学部長

6月の田植祭であいさつする磯前学部長

磯前 秀二(いそまえ・ひでじ)

茨城県出身。東京大学農学部農業経済学科卒、同大大学院農学系研究科農業経済学専攻博士課程修了。農学博士。文部省初等中等教育局教科書調査官等を経て名城大学農学部助教授、教授。2013年4月から農学部長、大学院農学研究科長。日本教育再生機構理事。著書に『愛国心の経済学~無国籍化する日本への処方箋~』(扶桑社)など。

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