育て達人第126回 小澤 哲也

数学大好きの「飛び入学生」を歓迎

理工学部数学科を窓口に14年目始動

理工学部数学科 小澤 哲也 教授(幾何学)

名城大学が「飛び入学」制度を設けたのは13年前の2001(平成13)年度ですが、このところ、文部科学省が高校の早期卒業制度の検討を始めたり、名城大学より3年早く飛び入学に取り組んだ千葉大学が今年から秋の飛び入学も始めるなど新たな動きが相次いでいます。14年目を迎えた名城大学の「飛び入学」について理工学部数学科の小澤哲也教授に聞きました。

2001年度にスタートした名城大学の「飛び入学」の受け入れ窓口が、総合数理教育センターに代わり2014年4月から理工学部数学科になりました。経緯を教えてください。

ご指摘のように名城大学では「飛び入学生」の受け入れ窓口として総合数理教育センターを開設し、高3を飛ばして入学して来る学生たちのための教育や、早期教育の研究にあたってきました。歴代3人がセンター長に就任し、飛び入学生の人間形成に必要だということで、外部講師を招いて講義をお願いしたり、子ども向け科学教室のボランティア活動、海外研修などにも取り組んできました。さらに、科学教育を中心とする地域貢献活動にも積極的でした。これらを検証するなかで、2014年3月でセンター長の川勝博先生が退職されるのを機に、4月からは飛び入学生の教育にかかわる機能が理工学部に移管され、「総合数理プログラムワーキンググループ」が数学科内に発足。私が代表になりました。

名城大学が受け入れた飛び入学生は過去13年で26人。2014年度は入学者ゼロでした。先行した千葉大学など全国での「飛び入学」実施大学も6大学にとどまっています。

飛び入学で中退したら中卒扱いになるなど制度的な不安定さもありましたし、教育現場もまだまだ消極的でした。高校では教育は平等に受けるものだという意識が強いし、「そんな優秀な生徒がいたら、しっかり受験勉強させていい大学に入れたい」と考える先生方がまだまだ多い。名城大学に入学した26人の中には、大学院に進んだ学生が最も多いですが、残念ながら中退者もいました。ご指摘のように入学者ゼロの年も過去に3回ありました。

13年間の反省もあるわけですね。

そうです。数学が好きで飛び入学してくる学生たちには、まずは原点に戻り、しっかり数学科のカリキュラムを勉強してもらうことが大切ではないかと。飛び入学というのは非常に特殊な進路で、そういう道を選んだ学生には並々ならぬ決意があったと思います。その決意に応えようと、さまざまな受け入れプログラムも用意してきました。ただ、研究職への道だけがそういう才能を発揮する場所とは限りませんし、民間企業や、数学の先生になってその力を発揮するケースもあります。大学4年間で、多くの仲間と交わることで幅広い選択肢を見つけてほしいと思いました。このような観点から、今回教育内容について精査し、また入試方法も改善しました。

小澤先生はもともと数学が好きでしたか。

「名城大学の数学科には素晴らしい先生方がそろっています」と語る小澤教授。手にしているのは小学生時代に読んだ『数学小景』

「名城大学の数学科には素晴らしい先生方がそろっています」と語る小澤教授。手にしているのは小学生時代に読んだ『数学小景』

子どものころから大好きな世界でした。電気の図鑑のコラムに書かれた二進法についての意味が分からず、2週間も3週間も毎晩考え、満足な理解が得られる体験をしました。やはり小学生の時ですが、数学者高木貞治が書いた『数学小景』という啓発書を父からもらい、夢中になりました。高木先生は東京帝大教授で第1回フィールズ賞選考委員。手に入れた『数学小景』は岩波書店発行の1943年の初版本。旧かなづかいで小学生にはかなり読みづらいものでしたが、一筆書きのオイラーの定理の解説など、すごく新鮮でした。

自分の高校時代に飛び入学という制度があったら利用しましたか。

中学時代も数学の授業は好きでしたが、計算を間違えたり、問題を読んでも勝手なことを考えて正解を出せなかったから、成績はよくありませんでした。高校の時はまさに数学に夢中でした。放っておいたら数学しか勉強しませんでした。高3の時は、大学受験があるので嫌いな国語、社会、英語もしなければなりませんでした。「数学の勉強をいかに我慢するか」が大学受験勉強であったような気がします。数学の勉強を好きなだけやれる飛び入学という制度があったら、喜んでチャレンジしたと思います。ただ、父親は数学科に行くことは反対でした。「もっと金儲けができる工学部とかに行ったらどうか」と。

名城大学の数学科は数学大好きの飛び入生たちを満足させてくれますか。

理工学部数学科にはその業績で国際的にも名前が知られた、研究者としても一流の先生方がそろっています。そういう先生方を自分の数学の勉強のために利用できるわけですから、恵まれた環境といえます。先生たちも自分の研究について、数学好きな学生たちと話ができることを楽しみにしています。国内外を問わず、数学者は、研究を通じて太いパイプやネットワークを持っています。名城大学の先生方と一緒に数学の研究に打ち込むことで、国際レベルの研究を体験でき、また人脈も広がるでしょう。一方、名城大学数学科は飛び入学をメーンでやっているわけではありません。数学が好きな人、数学を一生懸命勉強したい人、数学の先生になりたい人、いろいろなタイプの数学が大好きな学生たちを歓迎します。

学生が持ち込んだアインシュタインのマウスパッドが飾られた研究室入り口

学生が持ち込んだアインシュタインのマウスパッドが飾られた研究室入り口

小澤 哲也(おざわ・てつや)

名古屋市出身。名古屋大学理学部数学科卒、同大学大学院理学研究科数学専攻博士後期課程満期退学。パリ大学第7より博士学位取得。名古屋大学理学部講師を経て1995年、名城大学理工学部助教授。1998年から現職。数学科学科長など歴任。2014年度から飛び入学生受け入れ窓口となった数学科の「総合数理プログラムワーキンググループ」代表。

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