育て達人第139回 亀井 栄治

都市情報学部とともに歩む
ナゴヤドーム前キャンパス移転は学際的空間づくりの契機に

都市情報学部 都市情報学科 亀井 栄治 教授(景観工学)

都市情報学部が設置された1995年に同学部講師となり、学部とともに歴史を刻んできた亀井教授。自然に恵まれた可児キャンパスから2017年には都市型のナゴヤドーム前キャンパスに学部と一緒に移転します。同じ年に人間学部も天白キャンパスからナゴヤドーム前キャンパスに移ります。この4月に誕生したばかりの外国語学部と合わせて3学部が融合するナゴヤドーム前キャンパスを「学際的な空間にしたい」と思い描いています。

5月14日の「新キャンパス開放day!」のトークライブで、人間学部の水尾衣里教授とトークライブをもちます。どんな話をするのですか。

研究室で景観の色彩分析をする亀井教授

研究室で景観の色彩分析をする亀井教授

ナゴヤドーム前キャンパスでは、名古屋市千種区の鍋屋上野浄水場で使われていた赤煉瓦が建物の床や広場の敷石の一部に使われています。地域のDNAを取り込んだキャンパスといえます。人が集まりコミュニティができる場を研究対象とする人間学部、街を研究する都市情報学部、キャンパスから世界へと活躍する人を育てる外国語学部。キャンパスを核にバウムクーヘン形にスケールが広がるキャンパスになります。その魅力を、名古屋大学大学院時代隣の研究室にいた水尾先生と率直に語り合いたいと思います。

可児キャンパス最後の1年をどう過ごしますか。

可児キャンパスには落ち着いて物事に取り組める良さがあります。専用のゼミ室があり、ゼミ活動が盛んです。残された時間を大切にすると同時に、可児キャンパスの良さを引き継いでいきたいと思っています。

都市景観の専門家として多くの自治体に、美しい景観形成のための提言を行っていますね。

岐阜市景観審議会委員として、金華山麓の川原町の古い街並みの保存・修景に助言しました。鵜飼観光船が出る長良川左岸の一画です。岐阜城がそびえる金華山が美しく見えるように、麓の建物の高さを抑えました。また、東海環状自動車道可児御嵩インターチェンジができる前、一帯に看板が無秩序に林立するのを防ごうと、可児市景観アドバイザーとして地元の人たちと一緒に考えました。

研究室のパソコンには景観の色彩分析のソフトが立ち上がり、一眼レフカメラも置いてあります。

研究に用いる写真は、すべて自分で現場へ赴き撮影しています。景観は同じ場所でも、時刻によって、天候によって、季節によって見え方が変わるため、何度も足を運びます。経年変化も追います。現場写真を色彩分析ソフトにかけると、例えば大阪・道頓堀のネオン街では、色彩が氾濫していることがわかります。逆に、岐阜県高山市や岡山県倉敷市の伝統的な街並みは、使われている色彩が少なく、それによって落ち着いた景観が形成されていることがわかります。この作業は、研究の一環として、ゼミの学生にもしてもらっています。自分で撮った景観の色彩を分析すると、理解と関心が高まります。

学生に望むことは何ですか。

最近の学生は「答」を早く知りたがる傾向がありますが、私としてはプロセスを重視してほしい。プロセスのない結論はありえません。プロセスを大事にしながら熱意をもって行動に結びつけてほしいと願っています。『よい意味での不器用さ』をもたなければいけないとも言いたい。また、学生は時間を無駄にしすぎると思います。私はというと、学生時代、よく旅行に出かけていました。ただ何となく過ごすというのではなく、趣味でいいので、やりたいことに熱中し、それに打ち込んでほしい。

今、抱いている研究課題をお聞かせください。

「現場主義」の研究者として、そこに住む人の目の前の景観がよくなることを研究してきました。さらに20年、30年後の日本の姿にも責任をもちたいと思います。その前に直面するのが「空き家問題」です。現在、可児市空き家等審議会会長を務めていますが、都市でも地方でも、空き家は恐ろしいスピードで増えています。所有者が近くにいなかったり、連絡がつかなかったりで、問題は非常に深刻で、まちや地域の景観を一変させてしまうことが心配されます。

趣味は。

海に潜ること、すなわち、スキューバダイビングです。10年ほど前から続けています。国内では宮古島の海、国外ではモルディブの海が気に入っています。深さ30mくらいまで潜り、写真や動画を撮ります。普段の自分とは別の人間になって、憑かれたように熱中しています。ダイビングは年をとってもできるスポーツなので、生涯を通してするつもりです!

モルディブの海を潜る亀井教授=2014年

モルディブの海を潜る亀井教授=2014年

モルディブのダイビングポイントに向かう船で=2015年

モルディブのダイビングポイントに向かう船で=2015年

亀井 栄治(かめい・えいじ)

1963年、岐阜県可児市生まれ。1993年、名古屋大学大学院工学研究科建築学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。1995年、本学都市情報学部都市情報学科講師、2000年同学科助教授を経て2006年から現職。日本建築学会会員、日本感性工学会会員など。共著に「Q&A: 入門 複雑系の科学 -ゆらぎ・フラクタルで現象を測る-」「アドバンスコース 情報リテラシー」ほか。

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