育て達人第140回 丸山 隆浩
応用化学科学科長として学習環境を整える
理工学部 応用化学科 丸山隆浩 教授(ナノ材料・結晶成長)
理工学部に2013年度誕生した応用化学科の学科長を務めています。2016年度は1年生から4年生までがそろった完成年度。学生の意欲を引き出す新しい指導法を導入したり、学年縦断のソフトボール大会を開いたりして雰囲気づくりにも気を配っています
本学の教育年報で応用化学科教育の質保証プロジェクトチームによる「化学技術者のコンピテンシー育成のための取り組み」を読みました。1年生向けにオープンラボなどをしていますね。
オープンラボは10研究室を5研究室ずつに分け、7月12日と19日に行います。1年生に2日間にわたって全研究室を回ってもらい、研究内容の紹介を受けながら、実験装置の見学をしてもらいます。卒業研究や卒業後の研究開発のイメージをもってもらうことで、専門科目の学習の動機づけを狙っています。
2015年度から一部の講義でクリッカーを導入したと書いてあります。効果のほどは。
研究室でクリッカーのリモコンを手にする丸山教授
クリッカーとは、赤外線リモコンによる学生回答システムです。教員がパワーポイントなどで出した問題に対して、学生は制限時間内に赤外線リモコンを使って回答し、その結果が棒グラフなどで瞬時にスクリーン上に表示されます。こちらは当たり前だと思っていた事柄が、意外に理解されていないことが分かるなど、役に立つツールです。挙手と違って、自分の回答は他の学生に見えないため、周囲に引きずられることなく、答えやすい利点もあります。学生にアンケートをとっても評判は上々です。
研究室や実験室には分子模型や結晶構造模型がたくさん置いてあります。
「結晶格子」と「結晶構造」の違いがあまり分かっていないといったことなどがあり、模型を使い、学生の基本的な理解を助け、興味を引くように工夫しています。
学科の全学年参加のソフトボール大会を開いていますね。
教員数10人、1学年の学生数60人前後と、理工学部の学科としては小規模なので、学生同士が比較的仲が良く、互いに協力しながら学習しています。しかし、中には孤立気味の学生がいたり、異なる学年の学生が交流する機会があまりなかったり。ソフトボール大会では上級生と下級生の混合でチームを組み、われわれ教員も一緒にプレーします。各学年から選出された学生でソフトボール実行委員会をつくり運営してもらっています。今年は10月に大学のグラウンドで開きます。
カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を発見した飯島澄男終身教授の「研究協力者」でもあります。今、どんな研究をしていますか。
カーボンナノチューブは耐熱性や耐摩耗性にも優れ機械的強度の高い材料ですが、製造コストがかかるのが難点です。私は真空装置の中で半導体を作る研究をしていました。その手法を応用し、700~800℃で作るカーボンナノチューブを400℃以下の低い温度でも作れないか研究しています。触媒を白金やロジウムなどに変え、カーボンナノチューブをより効率的に作れるようにする研究にも取り組んでいます。
今、抱いている夢をお聞かせください。
材料分野では急に新しいものができて注目を集めます。グラフェン(炭素原子が六角形の網目状に結合したシート)もその一つです。研究者としては、面白い性質をもつ全く新しい材料を発見したい。学科長としては、応用化学科を発展させていくことです
学生に望むことは何ですか。
「よく考えよう」と言いたい。学習内容が本当に自分の身になっているか怪しい。よく考え、イメージを描きながら理解を深めてほしい。論語の「学びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し」、学ぶだけで考えなければ何も分からない、という言葉を座右の銘にしています。学ぶことと考えることの両方が大事なのです。自分自身も、時々、立ち止まって考えなければならないと思っています。
この機会に学内に言っておきたいことはありますか。
名城大学の研究をさらに活性化させるために、大学からも予算など環境面でのサポートが欲しいです。
分子模型で学生に説明する丸山教授
丸山 隆浩(まるやま・たかひろ)
1965年、大阪生まれ。1993年、京都大学大学院理学研究科化学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(理学)。1994年、筑波大学物質工学系文部技官、1996年、筑波大学物質工学系講師、2000年、立命館大学総合理工学研究機構ポストドクトラルフェロー、2002年、本学理工学部材料機能工学科講師、2005年、助教授、2007年、准教授、2010年、教授。応用化学科は2013年の創設時から学科長。応用物理学会会員。著書に「Carbon Nanotubes」(INTECH社)