育て達人第150回 梅田 孝

五輪メダリストの人脈に囲まれ、スポーツ医科学を研究、実践

薬学部 梅田 孝 教授(スポーツ医科学)

2015年4月に開設された名城大学総合研究所・スポーツ医科学研究センターの代表者。出身の日本体育大学や前任の弘前大学との人脈で大勢のオリンピックメダリストを学外研究支援・協力者としてもち、最先端のスポーツ医科学を研究、実践しています。

スポーツ医科学研究センターの取り組みから聞かせてください。

梅田教授と身体組成測定装置=八事キャンパス新3号館で

梅田教授と身体組成測定装置=八事キャンパス新3号館で

われわれが目指すスポーツ医科学サポートは、スポーツ障害予防と適切なリコンディショニング(疲労・身体機能回復)の構築です。これまでに経験、集積してきたスポーツ医科学研究・サポート活動の成果や指導実績を活用し、対象となるアスリートの身体的・精神的コンディション状況を医学、体力学、心理学、栄養学的な観点から包括的に検討しています。この結果に基づき、対象者となるアスリートの健康管理、コンディショニング方法を考究、指導しています。さらに、これに関連する栄養やトレーニング、休養の介入の効果なども検証しています。

学内でシンポジウムを開いたとき、全国各地から名だたるスポーツ選手たちが集まりました。

スポーツ医科学研究センターの設立記念シンポジウムを2015年12月2日に本学で開催した時、柔道のオリンピック金メダリスト、古賀稔彦さん、野村忠宏さん、谷本歩実さんらが参加してくれました。いずれも弘前大学時代に学位研究(博士課程)の指導をした人たちで、古賀さん(バルセロナオリンピック金メダリスト)は日本体育大学大学院の同級生でもあります。弘前大学時代に学位指導した大学院生のオリンピックのメダルを数えると十数個になります。

そもそもスポーツ医科学研究に取り組んだきっかけは。

もともとは野球小僧でした。大学卒業後は大分県の高校に勤め、高校野球の監督をしました。5年やって人にものを教える、伝えることの難しさを実感しました。自分が経験した話しかできないのです。このまま続けては自分も不幸だし、何よりも選手がかわいそうと感じ、客観的に野球を勉強し直したいと考え、日体大大学院に進学しました。大学院修了後は野球の指導者に戻ることも考えていましたが、大学院生時代から研究面で指導いただいていた弘前大学医学部の菅原和夫先生、中路重之先生に正式に弟子入りさせていただき、その後はスポーツ医科学の研究者の道に進みました。

目指す方法論は。

私の2人の師匠の教えの一つでもありますが、私は、一見、根性論過ぎるスポーツの世界とアカデミック過ぎる医学の世界の間に立ち、両者を結びつけ、コーディネートする役割をしていると思います。現役の選手を対象に体調管理から効果的なトレーニング方法まで研究し、必ずその成果を現場にフィードバックする方法を追求してきました。これも弘前大学の両師匠の教えの一つです。医学と体育学の共通項は実学です。私はこの2つの実学を、トップアスリートを対象とした研究・サポート活動として応用してきました。

これまでどんな現場で実践したのですか。

3年間サポートした東洋大学駅伝部は3年目に箱根駅伝で総合初優勝してくれました。また、同様にサッカーの湘南ベルマーレもサポート3年目でJ2からJ1に昇格してくれました。その他、印象に残っている選手として、コマツ女子柔道部に所属する選手で年齢的にも、体力的にも限界を感じ引退を考えていた選手をメディカルチェックし、貧血と診断、そこから指導、改善させ、日本代表として世界選手権に出場するに至ったケースがあります。

実学志向の本学でも、運動部のサポートをしていますね。

女子駅伝部の米田勝朗監督(法学部教授)は日体大大学院の後輩で、名城大学に赴任する3年前から女子駅伝部にはメディカルチェック(血液検査、身体組成測定、心理テスト、骨密度測定など)をしています。また、選手たちはメディカルチェックの結果を自分の健康管理、コンディショニングの指標として活用してくれています。現在では女子駅伝部以外にも硬式野球部、アメリカンフットボール部、ラグビー部など特別強化、強化クラブに対象範囲を広げ、昨年度は全部で33回のメディカルチェックを行いました。

研究・サポート活動のだいご味は。

私が行ったサポートが少しでもプラスになって競技成績に結びついてくれた時が、最もやって良かったと実感できる瞬間だと思います。スポーツ現場で選手や指導者が「今日は120%の力が出せた」とコメントしたことをしばしば耳にします。しかし、私は本質的に練習時に100の力を持つ選手が、試合時にそれ以上を出せることはほとんどないと思っています。われわれのサポートは、選手が持つ100の力を試合の時に遺憾なく発揮させる準備を手伝うことだと考えています。

本学学生へのメッセージをください。

弘前大学で所属していた医学部ではラグビーや柔道、野球などのクラブ活動が盛んで、スポーツが大好きな学生が私の周りに集まり、色々と面倒をみる機会もあ りました。名城大学では日頃は薬学部の学生と主に接していますが、もう少し活発かつ積極的であってほしいと感じることが多いように思います。
薬学部の学生は将来、薬剤師となることを目指し頑張っていますが、一つはその知識と技能を生かし、地域の人たちの健康づくりの担い手になってほしいと思っています。また、日本アンチ・ドーピング機構の事業の一つに「スポーツファーマシスト(アスリートのドーピング予防の担い手としての薬剤師)」を育成、認定する制度があります。スポーツが大好きで、将来、これを目指す薬学部の学生には在学中からチーム名城の一員として一緒に本学運動部のサポートをしてもらいたいと思っています。

モットーや愛読書は何ですか。

モットーは「人と人の縁を大事にする」です。名城大学に赴任するきっかけになったのも米田先生との縁、古賀さんをはじめ多くのオリンピック選手と結びつけたのもやはり何か縁だと思っています。今の私にとって人は宝、人は財産と感じています。 愛読書は大学進学に際して祖父からもらった司馬遼太郎の「竜馬がゆく」です。

この機会に強調しておきたいことがあればどうぞ。

1人でも2人でも、名城大学の名前を背負って本学の在校生、卒業生に東京オリンピックに出てほしいと思っています。また、このためにも学内の関係者と連携、協力しながら一丸となってチーム名城で彼らをサポートできる体制を学内に整えていきたいと考えています。

スポーツ医科学研究センター設立記念シンポジウムで記念写真に納まる梅田教授(前列右から5人目)、古賀さん(同6人目)ら

スポーツ医科学研究センター設立記念シンポジウムで記念写真に納まる梅田教授(前列右から5人目)、古賀さん(同6人目)ら

梅田 孝(うめだ・たかし)

大分県中津市出身。1992年、日本体育大学大学院体育学研究科スポーツ運動学専攻修士課程修了、2001年、医学博士(弘前大学)。弘前大学大学院医学研究科准教授を経て2013年4月から現職。所属学会は日本衛生学会、日本体力学会、体力・栄養・免疫学会など。

  • 情報工学部誕生
  • 社会連携センターPLAT
  • MS-26 学びのコミュニティ