育て達人第157回 Mark Rebuck

外国人には奇異な日本の交通マナーを指摘 全国的に注目を浴びる

薬学部 マーク・リバック准教授(英語教授法)

11月9日付朝日新聞朝刊に載った「横断歩道のルール 止まらぬ車 戸惑う外国人」という投稿が注目を浴びました。「私が日本に来て、とまどったことのひとつは、日本は『信号機のない横断歩道は車優先』ということだ」という書き出しで、外国人の目からは奇異に映る交通マナーを指摘しました。同紙のコラム「天声人語」にも取り上げられました。筆者の名前は名城大学准教授の肩書とともに全国に知れ渡りました。

投稿では、日本人には気づかない交通マナーについて教えてくれました。反響はいかがでしたか。

好きな言葉を色紙に書いたマーク・リバック准教授

好きな言葉を色紙に書いたマーク・リバック准教授

ロンドン出身の自分の経験に基づいて書きました。イギリスだけでなく、毎年行くシドニーでも、横断歩道ではすべての車が一時停止します。これが投稿の動機です。朝日新聞の記者によると、約70通のEメールが届き、70%は支持。反対に、30%は「外国ではもっと悪い」という内容だったそうです。私自身もイ ギリス・シェフィールド在住の日本人からEメールを受け取りました。彼からは「イギリスの交通マナーは、自分が行ったことのある80カ国で最悪の一つだ」 と指摘されました。私はただ、自分の視点で書いただけです。どっちの国がいいか、悪いかを競っているのではありません。

交通マナーで思うことは。

私は、道を渡るときは、信号機ではなく車を見ます。停車するまで必ず待ちます。自分の子どもにも横断歩道を過信しないように教えています。愛知県一宮市で2016年10月、信号機のない横断歩道を渡っていた下校途中の小学4年生が、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」をしながら運転していた男のトラックにはねられて死亡しました。私にも子どもがいますが、「ながらスマホ」はとんでもないことです。自転車が歩道を走るのも危険で、あってはならないことです。

東京オリンピックが近づいてきましたが、訪日外国人にとって、交通マナー以外の不安はどんなことがありますか。

レストランなどでの喫煙です。イギリスではありえない。子どもがいる場所での喫煙は、私にとっては子どものころの悪夢でしかありません。ヘビースモーカーを「愛煙家」と称するのも変です。

逆に、期待は。

日本語が分からなくても、グーグルの翻訳ソフトを使えば大丈夫です。栄駅で外国人旅行者が使っているのを見てください。街が安全で人々が親切なのは大いに助かります。私の両親が日本に来たとき、それがとても印象的でした。両親は日本語を一言も話せないのに、素晴らしい旅行ができました。

どんな英語の講義ですか。

2、3、5年生にはテキストを使いません。BBC(英国放送協会)の科学番組などを利用して最新のトピックスを扱います。薬剤師を目指す学生たち相手です から、アスピリンの効き方、抗がん剤、ステロイド剤といったことを薬学とは違った角度から教えます。トピックスを日本語で学ぶ前にまず英語で読むと、新し い視野が広がることがあります。学生には英語をツールとして学んでほしいのです。

医学用語の単語はどうやって覚えたらいいのですか。

語源が分かると覚えやすい。たとえば、anemiaのanは「ない」、emiaは「血」だから「貧血」、dementiaのdeは「離れる」、mentは「心」だから「認知症」、myocardial infarctionのmyoは「筋肉」、cardialは「心臓」だから「心筋梗塞」といった具合に。漢字の偏とつくりのようなものです。

どのようなことに力点を置いて教えていますか。

オーセンティック・マテリアル(authentic material、生教材)を使います。ラジオ番組や記事の切り抜きや患者との面談など、教室に実際の世界を持ち込みます。講義を通じて新しい視点や教訓を示せるようにしています。

外国では薬剤師はどんな位置づけですか。

アメリカでは、最も信頼される職業の一つです。アメリカとイギリスでは職能が広く、インフルエンザの予防接種をしたり、禁煙指導をしたり、生活習慣病の検査をしたり。特定の疾患の薬を処方することもできます。

AI(人工知能)が進展する将来、薬剤師はどうなっていくと予測しますか。

ロボットが薬を取り分け、患者に渡す「robotic dispensing」は今や、アメリカの病院では当たり前になっています。 アメリカでは医療ミスによる損害が大きな問題になっていますが、ロボットを使うことでミスを防ぎ、薬剤師の時間や技能を患者へのケアに最大限活用できるようになります。

名城大学の学生にメッセージをください。

もっと質問をしてください。質問がないということは、何も考えずに講義を受けていることと同じです。教員からの質問にも答えてください。答えが間違っていたり、的外れだったりすると、それは学生の学びの機会になり、クラスメートにも同様の効果があります。講義全体も活発になります。

趣味は何ですか。

以前は空手などの武道をやっていました。今は、BBCのポッドキャストを聞きながら料理やジョギングをすることです。いろいろなジャンルのものを聞きます。特に科学や医学です。そこから取ったトピックスを講義に使っています。

好きな言葉を語ってください。

「禍(わざわい)を試練と受け止めて前進せよ。今からでも遅くはない」です。英語で表現すると、Turn the knocks in life into challenges and move forward。 2人の息子が脳性まひになり、戦後の厳しい経済状況の中、私財をなげうって知的障害児教育施設の先駆けとなる「しいのみ学園」を創設、運営した昇地三郎(しょうち・さぶろう)さん(1906~2013年)の言葉です。

ロンドンの魅力を語ってください。

れんが造りの古いビルの街並みが好きです。魅力たっぷりの街を巡るのは楽しいものです。美術館や博物館は入館無料です。イギリスの批評家サミュエル・ジョンソン(1709~1784年)は言っています。「ロンドンに飽きた人は人生に飽きた人だ“The man(person) who is tired of London is tired of life.”」と。

薬学部の1年生に講義するリバック准教授

薬学部の1年生に講義するリバック准教授

Mark Rebuck(まーく・りばっく)

11月9日付朝日新聞朝刊に載った「横断歩道のルール 止まらぬ車 戸惑う外国人」という投稿が注目を浴びました。「私が日本に来て、とまどったことのひとつは、日本は『信号機のない横断歩道は車優先』ということだ」という書き出しで、外国人の目からは奇異に映る交通マナーを指摘しました。同紙のコラム「天声人語」にも取り上げられました。筆者の名前は名城大学准教授の肩書とともに全国に知れ渡りました。

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