育て達人第162回 相馬 仁

自動運転を研究 課題克服に向けデータ解析の日々

理工学部交通機械工学科 相馬 仁教授(動力学、制御学、人間工学)

人工知能(AI)が運転操作を担い走行を制御する自動運転車に対する期待が高まっています。全国各地で実証実験が行われ、実用化に向けてピッチが上がってきています。もちろん本学でも研究が進められています。16日11時~12時30分に校友会市民公開講座で「自動車の最先端技術」について講演する相馬仁教授にそのさわりを聞きました。

ご自身の研究について語ってください。

自動または半自動で衝突を回避するITS(Intelligent Transport Systems)や自動運転システムについて、計算機シミュレーションとドライビングシミュレーター実験によって、システムの特性や安全性評価を行っています。

▼具体的には。

自動運転の研究でポイントは二つあります。一つは、運転システムの設計です。自動ブレーキなら、どこからかければ衝突しないのか、計算機シミュレーションで細かくデータを集めます。ブレーキだけでなく、ハンドル操作と併用して衝突を回避する方法もあります。状況に応じてハンドルの切れる角度を変えるなどコンピューター制御で事故回避ができるシステムをつくります。

 もう一つは、人間工学的にそのシステムが妥当かどうかを検証することです。天白キャンパス2号館3階と地階にドライビングシミュレーターがあり、それを使って何万通りも条件を変えて解析します。

▼自動運転の現状は。

25年くらい前、アメリカの高速道路で、時速100㌔の自動運転を経験したことがありますが、今はレベル3(条件付き運転自動化)の装置が続々と登場しています。レベル5が完全運転自動化です。

▼自動運転の未来についてどう描いていますか。

運転自動化で、まず事故件数は減ります。これまでの事故はヒューマンエラーによるものが大部分でしたから。効率よく走れるので省エネにもなります。事故当事者も変わります。ハンドルを握る人だけでなく、遠隔で運行を管理する監視者も事故当事者になりえます。ハード面では電動化、知能化、情報化が進み、IT企業や電気電子系の企業が参入し、経済構造が一変します。

▼研究者になるための転機はありましたか。

子どものころから研究者になりたかった。小学2年ぐらいのとき、図書館で「せいめいのれきし」という絵本を借り、生命の進化の歴史に興味を持ちました。もっと深く知りたい、もっと勉強したいと思い、科学者を志望しました。若いころは、基礎研究志向でした。しかし、大学院を出て就職する際、自動車関係の会社の人と知り合い、茨城県つくば市にある日本自動車研究所に勤めました。自動車の操縦性安定性や予防安全を研究していました。

▼学生にはどのようなことを教えていますか。

学部では、自動車工学、車両運動学、大学院ではマンマシンシステムを教えています。私自身が実際にやった経験を交えて話すようにしています。

▼日頃学生に言っていることは何ですか。

「自分がやることに付加価値を」です。言われたことをやるのはもちろんですが、併せて自分で課題を発見し、解決し、報告する。社会に出てからも、付加価値のある仕事をすれば、上司や周囲の評価は高くなります。

▼8月4、5日のオープンキャンパスに向けて受験生にもメッセージをください。

大学は高校の延長線で入る学校ではないということです。将来、プロとして生きていくための手前の学校です。どんなプロになるか、意識を高くもち、そのための勉強をする場所だという気持ちで受験してほしい。

▼座右の銘、愛読書、趣味を教えてください。

座右の銘は「七転び八起き」です。努力してはい上がることです。本はたくさん読みます。活字を読みながら場面を思い描く作業が楽しい。自分の専門分野に直接関係ない本を読むことが大切です。最近読んだ本では「君たちはどう生きるか」(岩波文庫)を学生には薦めます。趣味は写真です。風景と花を撮ります。

相馬 仁(そうま・ひとし)

1984年、東京都立大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。同年、日本自動車研究所入所、車両運動・予防安全部門配属、その後、人間-機械系部門、ITS部門に異動。2001年、新潟大学工学部専任講師、2004年、同大学工学部助教授、2007年、同大学技術経営大学院准教授兼務。2009年、名城大学理工学部教授に就任し、現在に至る。博士(工学)。日本機械学会フェロー、自動車技術会本部理事、自動車技術会中部支部理事、日本人間工学会東海支部理事、日本交通医学工学研究会理事。

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