育て達人第165回 加藤 雅士

日本酒「華名城」の開発など大学の知見を続々と社会に発信

農学部応用生物化学科 加藤 雅士教授(応用微生物学)

教育、研究、社会連携の三本柱をバランスよくこなす加藤雅士教授からは、大学の知見が社会に続々と発信されています。アイデア豊富で、研究室は「ネタの宝庫」。フランス・ストラスブールに学生と調査出張したり、インドネシアに招待講演に行ったりする過密スケジュールの合間に話を伺いました。

名城大学発のブランド日本酒「華名城(はなのしろ)」など数々のヒット商品を送り出してきました。出発点は。

好きな言葉を色紙に書いた加藤雅士教授

好きな言葉を色紙に書いた加藤雅士教授

名城大学に来た2010年、学生主体で何かオリジナル商品が作れないかと考えました。「華名城」は、微生物に興味のある学生2人が春日井キャンパスの附属農場の赤いカーネーションの花から酵母を採取、野生酵母を分離することに成功し、2011年には愛知県の食品工業技術センターの協力を得て試験醸造を行い、酒質の検討を行いました。2012年から県内の酒蔵と共同して、学生とともに酒を仕込んで、2013年から売り出しました。今年も仕込みます。醸造から3年たった「古酒」がことのほかおいしく、9月1日にフランス市場向け日本酒開発事業・試飲会を開いてフランス人に飲ませたら、好評でした。在庫はほとんどありませんが。

最近では、NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)、JAなごや(なごや農業協同組合)と連携し、名古屋市内で栽培された米を使ったオリジナル甘酒を発信しました。

オープンキャンパスで高校生に微生物学の魅力を説く加藤教授

オープンキャンパスで高校生に微生物学の魅力を説く加藤教授

NEXCOから商品開発の相談があり、「飲む点滴」と呼ばれ健康効果があるとされる甘酒に着目しました。JAなごやから名古屋産のブランド米「陽娘(ひなたむすめ)」が調達でき、2種類の古代米(黒米・赤米)を混ぜて新規性を出しました。発酵をキーワードに、相談を受けたところ同士を結び付け、コーディネートするのが私の役割です。自分の研究の知見が生きればいいという考えで取り組んでいます。

次々と湧いてくる研究や地域ブランド開発などの源はどこにあるのですか。

いろいろな方との交流の中で生まれてきます。こうじの研究をしていて醸造関係者と接点ができ、ブランド酒に結びつきました。

具体的な成果物が出てくると、外部から声がかかります。「うちの花ではどうか」とか。「発酵研究家」という人とのつながりもできました。どぶろく、パン、漬物といった分野の人へと交流の輪が広がっています。

大学ではどんなことを教えていますか。

生物学としての基礎的な微生物学を教えています。そこから発展して、醸造学の授業も受け持っています。酒の造り方から、みそ、しょうゆ、みりん、ワイン、ビールと幅広く。現場の声を大事にしたいので、製造に携わる人を紹介した映像を見せます。映像は見るだけに終わらせず、あらすじを書いてもらっています。文章を書く力を養えるからです。宿題として、醸造関係の2社に自分で交渉して見学に行き、リポートを提出してもらっています。学生の反応は良好です。農学を基礎とした人材を育てますが、さらに発酵、醸造のスペシャリストになることで食品業界や製薬業界への道が開けます。

研究も精力的ですね。

研究では、生命学、微生物学の知見を社会にフィードバックしなければならないと考えています。我々人類が取り出して増やし、調べることができる微生物は現在のところ、まだ現存する微生物のわずか0.1%であるといわれています。裏返せば、地球上には手付かずの微生物がまだまだ多く存在し、研究対象は無尽蔵です。微生物というシンプルな生物から、生命科学全体にインパクトを与える研究ができるのが魅力です。

最近、研究室ではカビの作る酵素の研究からとても面白い酵素が見つかりました。植物に多く含まれているβ−マンナンという物質を分解する全く新しいタイプの酵素が見つかりました。この酵素、面白いことにとても小型で高性能なばかりか、熱にも強くて、産業的にも利用価値が高いことが分かりました。酵素の研究はバイオマス(生物資源)の有効利用と密接な関係があります。国連が掲げるSDG’s(持続可能な開発目標)のうち再生可能ネエルギーの開発にも重要な一歩になると信じています。また、とても新しくて珍しい酵素であるということで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)にも関心を持ってもらい、共同でこの酵素の結晶を宇宙空間で作る研究も展開しています。さらに新たな発見が期待されます。

多方面から共同研究を呼び込むノウハウを教えてください。

いろいろな人とコミュニケーションをとることです。人の話を偏見なく、素直に聞くことです。言い換えれば、上手な聞き手になること。自分の能力には限界があるので、人の助けを借りなければできません。

学生も巻き込んで好循環ができていますね。

机上の学問だけでは閉塞感が出てくると思います。教育、研究、社会連携の3つがうまく回っていくことで、大学の教育に生きた教材を提供し、社会のニーズにマッチした研究課題を見つけ出し、そこから出て来た研究成果と社会に役立つ人材を社会に送り出すことができると考えています。

学生にメッセージをください。

何事においても興味を持って過ごしてください。勉強だけでは不十分です。人との付き合いも大事です。自分自身にリミットを設けないことが重要です。限界を超え、いろいろなことにチャレンジしてほしい。可能性は無限大です。

受験生にもメッセージを。

実学重視の大学です。特に農学部は。生命、食糧、健康、環境をキーワードに、人にかかわること、社会に役立つことを勉強し、研究できる学部です。興味のある人はぜひ来てください。

研究者人生で転機はありましたか。

名城大学に来たことです。基礎研究重視の国立大学より、実学重視の私大にあって、酒、しょうゆ、みりんの醸造が盛んなこの地域で微生物学の研究室を主宰できるのは魅力的です。

ご自身も左党だと思いますが、好きな酒は。

日本酒党です。日本酒研究会というサークルの教員部長を務めています。来年度は40周年を迎えます。

好きな言葉を色紙に書いてください。

「一生勉強 一生青春」です。相田みつをさん(詩人、書家)の言葉です。

加藤 雅士(かとう・まさし)

愛知県知多市出身。1987年、名古屋大学農学部卒業。1992年、東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻修了。博士(農学)。名古屋大学大学院生命農学研究科准教授を経て2010年、名城大学教授。日本農芸化学会、日本生物工学会、糸状菌遺伝子研究会所属、糸状菌分子生物学研究会運営委員、東海4県21世紀國酒研究会座長、東海発酵文化研究会代表。著書に「発酵・醸造食品の最前線(分担執筆)」など。

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