育て達人第166回 谷田 真
個人でも、研究室でも、社会に向けて多面的に発信
理工学部建築学科 谷田 真准教授(建築計画)
天白キャンパスの正門アプローチのデザインやそこに設置されているベンチの制作、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)とのコラボレーションなど。タレントぞろいの建築学科にあって、個人でも研究室でも露出が多い谷田真准教授。社会に向けて多面的に発信するマルチタレントの素顔に迫りました。
ベンチを作ったり、大型書店にユニークな移動式本棚を置いたり、学内外でさまざまな活動をしていますが、次々と湧いてくるアイデアの源は何ですか。
好きな言葉を色紙に書いた谷田准教授
基本的には依頼者側に拠っている部分が大きいです。依頼者への丁寧なヒアリングやリサーチにより、先方が何を必要とし、何を求めているのか。予算や工期、アウトプットのクオリティーなどを、学生たちと総合的に考え、一つのアイデアとしてまとめていきます。結果的に、依頼者も気づいていなかった解が生まれるということもあるかなと。なので、アイデアが突然ひらめくということは少なく、われわれとしては、必然的に導き出されるという感じです。
これまでに最もヒットした取り組みは何ですか。
研究室の学生と作った天白キャンパス正門アプローチのベンチ
これまで多くのプロジェクトに関わってきましたが、ひとつひとつが特殊解で、目的や目指すべきゴールも異なります。なので、「ヒットした取り組み」と言われると、なかなか答えるのが難しい。ただ、たくさんのプロジェクトで賞を頂いたり、メディアに載せていただいたりしていますので、そうしたプロジェクトは社会的に評価されたり、関心を持たれたりしているのかなと感じています。
本学が今年3月26日にUR都市機構と連携協定を締結し、その取り組みの第一弾となった「ちりゅう団地『みんなのリビング』プロジェクト」はどう進んでいますか。
このプロジェクトのテーマは「多文化共生」と「コミュニティーデザイン」です。団地内に住む外国人と日本人が、もっと関わり合える場の創出を目指して、ワークショップなどを繰り返しています。大学側と連携協定を締結していただいており、このように大きなところで合意がとれているプロジェクトは、他者を巻き込みやすいです。実際プロジェクトには、学生や地域住民はもちろん、外国語学部の先生や学生、UR都市機構、愛知県知立市、本学の社会連携センターなど、多くの人や組織が関わっています。それだけ「自分ごと」としてプロジェクトを気に掛けてくれている人たちがたくさんいるということであり、大風呂敷を広げることも大事だなと感じています。
社会連携活動をするために気を配っていること、力点を置いていることは何ですか。
終わり方を、始める前から考えておくことでしょうか。どんなプロジェクトもスタートを切る時はモチベーションが高い状態で比較的ハードルが低いのですが、引き際が難しくて。何となく終わるのではなく、どういった形で培った資源が残せるのか、持続性が担保できるのか、いつも試行錯誤しています。
研究について語ってください。
活動の方は盛んなんですけど、研究も同じくらい頑張ろうと、現在いくつか取り組んでいます。私自身は「子どもを取り巻く成育環境」に関心があって、学童保育施設の研究や、ホームゾーンと言って一般の道路を子どもの遊び場などコミュニティースペースとして活用する海外事例などを調査しています。
授業ではどのようなことを教えていますか。
「建築計画」という座学と、「建築設計」という演習が、担当授業の基本となります。建築デザインと言うと、創造性とかクリエイティビティーとか、センスを磨くことが必要なように思われるかもしれませんが、建築にも最低限具備していなくてはならないマナーみたいなものは当然ある訳です。地味ですけど、そう言ったこと、ベーシックなこと、社会に出ても、あるいは建築の世界から離れることがあったとしても、人が生活していく上で、建築的に大切なことを、しっかりと教えていくと言うか、伝えていきたいと思っています。
そのノウハウは。
建築では、デザインからエンジニアリングまでバラエティに富んだ内容を学びます。それだけに、将来さまざまな場面で建築のスキルが生かせるのではないかと思います。また研究室のプロジェクトには、短期間で成果が見えるものも多く、その分、学生たちの達成感も高いと感じています。
学生にメッセージをください。
いろいろな人と出会い、多くの刺激を受け、共感できる人、ひかれる人とは、どんどんつながってほしいなと思います。できれば世界中の人々と。
受験生にもメッセージをください。
「建築」は楽しい学問です。世界中に建築はありますし、どこへ行っても、何をしていても、勉強になります。建築を深く学ぶと、日常の風景や生活が、また違って見えてきますよ。
趣味は。
登山、スキー、テニスです。昨年から走り始め、名古屋シティマラソンなど大会でも走っているので、マラソンも入れておきます。
好きな言葉を色紙に書いてください。
「つながり」です。これまでの多くの人や学生さんとの出会いやつながりがあって、今があると実感しています!
谷田 真(たにだ・まこと)
1971年、名古屋市東区生まれ。1995年、名城大学建築学科卒業。1997年、名古屋大学大学院修士課程修了。1997年、東京の建築設計事務所、環境デザイン研究所入所。2003年、名古屋大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2004年、名城大学理工学部建築学科講師、2008年、University of East London在外研究員を経て2010年、同学科准教授。「四観音道の家」で2014年度グッドデザイン賞ほか受賞多数。日本建築学会、こども環境学会に所属。