育て達人第170回 雑賀 憲彦

就職指導に情熱を傾ける「経営のプロ」

都市情報学部 都市情報学科 雑賀 憲彦教授(企業経営論)

都市情報学部名物のゼミ室に「皆で一緒に就職スキルを身につけよう!」と書かれたポスターが掲げられています。雑賀憲彦教授のゼミ室です。学生の就職指導に情熱を傾けるのが売り。「学生の幸せを最大限に満たすゼミ」をうたうだけあって、それに向けた指導方針を聞くと、関西弁でキーワードがポンポン飛び出しました。

大学と企業を結ぶ富士ゼロックスの地域人材育成プロジェクト「志プロジェクト」にゼミ生が2年連続して参加しました。どんな収穫がありましたか。

座右の銘を色紙に書いた雑賀憲彦教授

座右の銘を色紙に書いた雑賀憲彦教授

3年生と4年生が地元の中小企業を対象に、社長にインタビューするなどして、学生目線の会社案内を半年がかりで作りました。「生きた経営学」「生きた地元学」「生きた社会人基礎力」を身につける絶好の機会でした。

就活にも役立ちますか。

志プロジェクトの発表会で、学生手作りの会社案内の出来栄えを講評する雑賀教授

志プロジェクトの発表会で、学生手作りの会社案内の出来栄えを講評する雑賀教授

ゼミ指導では就職に有利になることばかり考えています。学生たちは就職のいい名城大学に入ってきました。ここを出て将来性のある会社に就職し、いい人生を送ってほしい。志プロジェクトで社長や社員の生の声を取材したことで、面接では他の学生とは違った話題ができます。学生には「面接でアルバイトのことなんか話すな。そんなことは誰でも話せるから」と指導しています。他人が言わない、言えないことを、実体験をベースに話せば、企業の人事担当者は驚きます。自分を差別化でき、就活の武器になります。

実践的ですね。

ゼミ室のポスター

ゼミ室のポスター

企業が分かることは、社会を知る近道です。学生には、財務分析、業界分析に重点を置いた指導をしています。「自分の入れそうな、将来性のある会社を徹底的に探してこい」と言っています。企業の成長とともに人間も伸びるのです。人生がいい方向に化けるようになってほしい。そのためのお手伝いはなんぼでもします。だから、学生の自己PR書は何度も添削します。

よい企業の決め手となる指標は。

*売上高経常利益率です。企業がなんぼもうけているかが分かる財務指標です。学生には何度も何度も耳にたこができるほど言います。「頭蓋骨にプリントしておけ」とまで。

「経営のプロ」を自認されています。

中小企業診断士、FP、一級販売士など多くの資格を持っていて、日本総合研究所では主任コンサルタントとして多くの企業診断をしていました。鳥取大学助教授時代は、地元銀行の紹介を受けた企業の経営診断をしました。物差しはやはり売上高経常利益率です。経営コンサルタントは企業版の医者です。財務分析はレントゲン検査、ヒアリング調査は問診です。健康体の人でも人間ドックを受けると悪いところが見つかることがあります。企業も5年に1回は経営診断を受けるべきです。

他に学生に力説していることは何ですか。

「世の中で一番大事なのは知識やで」と言っています。以前、身内が経営する会社が税務署から追徴課税を受けたことがあります。税の知識が不足していたからです。知らないということは、お金を取られることだと実感しました。学生には、知識を積むようにと教えています。知識を植え付けるためには、難しいことを言っても右から左に抜けてしまいます。具体的な例を挙げ、手に取るように分かりやすく、相手が理解するまで説明することを信条としています。

学部が旧可児キャンパスからナゴヤドーム前キャンパスに移転して2年。気が付いたことは。

やはり、都会的なキャンパスで華やかさを感じます。

名城大学に期待することは何ですか。

もっとメジャーな大学になってほしい。目玉の教員をテレビコメンテーターなどに売り出し、PRしたらいいと思います。関西人や東京人にも知ってもらえるように。

座右の銘を色紙に書いてください。

「知行合一」です。知識は行動を伴って初めて生きるという意味です。学生には、学んだことを実践する人になってほしいと願っています。

愛読書を聞かせてください。

今はありませんが、若い頃に司馬遼太郎、山岡荘八などの歴史小説は時を忘れるほど読みました。阿刀田高の短編も好きでした。経済学、社会学では堺屋太一、日下公人、野口悠紀雄の3氏は最高です。

2018年度の志プロジェクトで出来上がった会社案内

2018年度の志プロジェクトで出来上がった会社案内

*売上高経常利益率とは、企業の売上高に対して、経常利益が占める割合(比率)を示す財務指標。財務活動なども含めた企業の事業活動全体における利益率を表す。通常、金融収支の良しあしや資金調達力の違いなどの財務面も含めた総合的な収益性が反映されるため、この比率が高いほど収益性が高い(良い)と言える。

雑賀 憲彦(さいが・のりひこ)

1955年、神戸市生まれ。1979年、大阪大学経済学部卒業。2003年、大阪大学大学院国際公共政策専攻博士後期課程修了。株式会社日本総合研究所主任コンサルタント、大阪府富田林市にある大阪大谷大学助教授、鳥取大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)助教授を経て、2007年から現職。博士(都市情報学)。所属学会は実践経営学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会。著書に「経営戦略入門」など。可児市上下水道事業経営審議会会長。

  • 情報工学部始動
  • 社会連携センターPLAT
  • MS-26 学びのコミュニティ