育て達人第178回 打矢 惠一

増加する肺NTM症の正体に迫る 日本結核病学会の学会賞を受賞

薬学部薬学科  打矢 惠一准教授(微生物学)

肺NTM症を知っていますか。結核と同じ抗酸菌に属するNTM(非結核性抗酸菌)による肺の感染症で、世界的に増えているそうです。罹患(りかん)率は肺結核以上とされ、根治する治療法がなく、重症化すれば死亡するケースもあると言われています。打矢准教授は、これまで不明だった感染様式や病勢と病原体因子との関連性を世界で初めて明らかにし、日本結核病学会の学会賞である「今村賞」を受賞しました。

今村賞受賞の研究とは。

「ゲノム解析を基盤としたMycobacterium avium症の感染様式および病勢に関わる病原体因子の解析」というテーマです。この成果は、臨床応用につながる重要な研究であると評価され、2019年6月6日の第94回の総会で受賞記念講演を行いました。

研究の中身は。

今村賞の賞状を手にする打矢惠一准教授

今村賞の賞状を手にする打矢惠一准教授

NTMは土壌や水中などの環境中に広く存在しています。結核菌に比べて人に病気を引き起こす力は弱いですが、現在、この菌による感染症が急増し大きな社会問題となっています。また、その増加や悪化の要因は不明であり、さらに抗菌薬による治療効果が高くなく、難治性の感染症です。そこで、2005年から国立病院機構東名古屋病院(名古屋市名東区)の小川賢二副院長らと共同研究を行い、多くの学生たちの積極的な協力を得て、患者さんから分離された菌株を遺伝学的解析により詳しく調べることで、これらの解明を行いました。それゆえ、今回の受賞はこれらの多くの方々の協力のおかげであり、心から感謝しています。

結核とは違う病気なのですね。

結核は、せきやくしゃみによって人から人に広がり、今でも年間1万5000人以上が発症しており、とくに免疫が低下している高齢者などは注意が必要です。感染を広げないためには早期発見・早期治療が重要であり、また適切に治療すれば治る感染症です。患者数は、国内では減少傾向にあり、最近の疫学調査では結核に比べてNTMによる感染者の方が多いことがわかりました。

研究の意義は。

やっかいな病気でありながらあまりわかっていなかった感染症の正体が、遺伝子レベルでわかってきたということです。

受賞を機に身辺で変化はありますか。

これまで参加したことがなかった研究会から声を掛けていただくことがあり、研究者との交流が増え研究の幅が広がりました。しかし、一番の変化は自分自身で、このような栄誉ある賞をいただき身の引き締まる思いであり、今後はこの感染症の克服を目標に研究を行っていきたいと考えています。

大学でどんなことを教えていますか。

微生物学研究室で学生を教える打矢准教授

微生物学研究室で学生を教える打矢准教授

細菌やウイルスなどによる感染症や、これらの微生物を排除する生体防御システムである免疫について教えています。近年、感染症の治療薬である抗菌薬が効かない耐性菌が増え、このまま放置すると30年後には、がんで亡くなる人より耐性菌が原因で亡くなる人の方が多くなり、世界レベルで対策が必要とされています。その主な原因は、抗菌薬の不適切な使用であり、その対策には薬のスペシャリストとしての薬剤師が中心的な役割をすることが望まれており、卒業生の活躍を期待しています。

学生に繰り返し説いていることはどんなことですか。研究でも生活でも。

「やればできる」です。何を行うにしても気持ち(意識)の持ち方が大事だと思います。授業科目の単位取得についても、真剣にやらないからできないのであって、やればできるはずです。また、精神的に自立をしてほしいと感じることがあります。高校の延長ではなく、大学で学んでいる理由をもう少し真剣に考えてほしいと思います。そうすれば、今何をすべきか、また自分の進む道が見えてくるのではないでしょうか。

研究者人生で転機はありましたか。

学生時代に卒論生として微生物学研究室で研究を行ったこと、東京大学医科学研究所で研究を行ったこと、米国ワシントン大学で研究を行ったこと、このような機会を得たことで病原微生物や感染症について多くの事を学ぶことができました。そして、東名古屋病院と共同研究の機会を得たことも、研究者人生の大きな転機であり、これまで積み上げた経験から今回の研究成果を得ることができたと思っています。

尊敬する人や目標とする人はいますか。

未知の事を深く追求し続ける人は、目標であり、尊敬します。

好きな言葉を色紙に書いてください。

好きな言葉を色紙に書いた打矢准教授

好きな言葉を色紙に書いた打矢准教授

「継続」、やはり「継続は力なり」だと思います。

趣味や気分転換法を教えてください。

趣味は、大学時代から続けている山登りで、登山家で小説家でもある深田久弥氏が選んだ日本100名山にも登りました。今は登る機会が少なくなりましたが、四季折々の山の表情を感じるのは良い気分転換になります。

打矢 惠一(うちや・けいいち)

1982年、名城大学薬学部卒業、同大学院薬学研究科修士課程修了。同年、名城大学薬学部助手、博士(薬学)。1993年、東京大学医科学研究所研究員、1996年、米国ワシントン大学医学部に博士研究員として留学。2009年から現職。所属学会は日本薬学会、日本結核病学会、日本細菌学会、米国微生物学会など。

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