育て達人第179回 佐藤 布武

理論と実践 東日本大震災被災地の復興に取り組むリサーチング・プレーヤー

理工学部建築学科  佐藤 布武助教(建築計画)

東日本大震災から間もなく9年。被災地の一つ、宮城県石巻市の牡鹿(おしか)半島で復興のフィールドワークをしてきた研究者が名城大学にいます。津波に襲われた漁村に通いつめ、地元の人たちと一緒に復興計画を検討し、イベントを開いて地域活性化にも取り組んでいます。「集落研究家」や「リサーチング・プレーヤー(実践・研究者)」を自称する佐藤布武助教に3.11を前にインタビューしました。

2011年3月11日午後2時46分にはどこにいて、どんなことをしていましたか。

千葉大学にいました。すごい揺れに見舞われ、グラウンドに避難しました。

東日本大震災と復興に対する思いをお聞かせください。

佐藤布武助教

佐藤布武助教

学部卒業の年でした。宮城県気仙沼市の漁港のリデザインが千葉大の卒業設計でしたが、一生懸命リサーチして建築の提案をした漁港が壊滅的な被害を受けました。卒業ということで一通りの建築教育を終えていたわけですが、同時に、学んで来た建築というものの脆弱(ぜいじゃく)さも痛感しました。われわれは「建築を学んでも何もできない」という無力感にさいなまれた世代とも言えると思います。

人生の転機になりましたね。

はい。幸いなことに、震災後に進学した筑波大学大学院では、指導教員の貝島桃代准教授の下で、被災地でフィールドワークをする機会に恵まれました。建築家による復興支援ネットワーク「Archi+Aid(アーキエイド)」の活動の一環で、牡鹿半島の漁村に通いつめました。

自身の研究について語ってください。

農山漁村をフィールドに集落・民家の研究を行っています。歴史資料を調べ、街を練り歩き、集落の古老に話を聞くことで、地域の伝統的な住環境形成手法を明らかにする研究を蓄積しています。

「集落研究家」や「リサーチング・プレーヤー」を称するゆえんですね。

本質的な快適性や暮らしの知恵を求めて日本全国の農山漁村を飛び回って集落や地域を研究しています。さらに、研究成果をわかりやすいパンフレットやブックレットにまとめたり、住民とまちづくり活動を行ったりもしており、研究に加え研究成果をアウトプットすることに力を入れています。良いものを探してその価値を調べ(理論)、それらを守ったり継承したりする(実践)ようなイメージで、理論・実践を横断的に考えて研究に取り組んでいます。他には、研究成果に基づいて建築設計や設計施工をしたり、景観の保全などを実践したりしています。

研究が面白いと思った瞬間はどんな時ですか。

研究成果に基づいて誰かとコラボレーションするのが好きです。地域の文化を読み解き現代的に再解釈した上で、違う専門性の方と一緒に面白い未来を描き、活動展開したりします。

ウェブサイトに「ツアーやイベントを主催します」とありますが、具体的には。

漁村の復興の一環で石巻市と現地社団法人と一緒に新規に漁師を目指す若者を集めるイベントをもったり、現地の人たちと一緒に地域資源をテーマに間伐材伐倒やアースオーブンづくりなどをしたり、環境省と一緒に山歩きイベントをしたり、活動は多岐にわたります。もちろん、建築学科ですから建築設計も行いますし、学生と一緒に一般参加型イベントで小屋作りをしたりもしました。古民家改修も楽しいですね。

学生は楽しそうですね。

学生が学内だけじゃなく、さまざまな人と接する機会を大切にしています。ただし、教育目的でただ学生を連れて行くだけではなく、必ず何かしら現地に返せるように意識しています。

学生に繰り返し説いていることはありますか。

とにかく失敗しなさい、と言っています。1個の成功は100個の失敗がないと成り立ちません。また、建築の現場ではコミュニケーション能力が重要視されますし、作品を作るにはコラボレーションが必須です。バイトなどの社会経験も大事だし、いろいろな人と知り合いになって、良いところを吸収してほしいと思います。

座右の銘を色紙に書いてください。

座右の銘を色紙に書いた佐藤布武助教

座右の銘を色紙に書いた佐藤布武助教

「顕在化」です。眠っているものに価値を見いだすという意味です。良いものって、当たり前のものになりがちなんです。地元の人には当たり前でも、大局的に見ると大切なものもあります。広い視座をもち、地域の良いものを価値化することができればと考えています。

尊敬する建築家は誰ですか。

恩師らによる「アトリエ・ワン」です。貝島先生、塚本由晴先生の二人から受けた影響は大きいですね。

趣味やストレス解消法を教えてください。

幼稚園から現在までずっとサッカーを続けていて、健康維持とストレス解消になっています。毎年、建築家のサッカー大会やフットサル大会にも出て、建築家や学生と一緒にサッカーと空間を楽しんでいます!

佐藤 布武(さとう・のぶたけ)

さとう・のぶたけ 1987年、千葉県白井市生まれ。2011年、千葉大学デザイン工学科建築系卒業。2016年、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程芸術専攻修了。博士(デザイン学)。2018年から現職。日本建築学会などに所属。NOBLOG(https://www.nobusato.com/)で情報発信中。

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