育て達人第182回 近藤 歩

サボテンになろう⁈

農学部生物環境科学科 近藤 歩 准教授(植物機能科学)

「サボテンになろう。また一つ、新しい自分を積み上げる」。運営する植物機能科学研究室が、サボテンの産地、愛知県春日井市の協力のもと「コロナ禍でもがんばろう!」と呼びかける応援ポスターを作製しました。新型コロナウイルスの感染症拡大で生活や経営にいろいろな影響が出ている今、サボテンからのメッセージが広がっています。

サボテンのポスターが好評を博しました。狙いと動機からお話しください。

6月17日、タワー75の学生ホールでサボテンポスターを掲示

6月17日、タワー75の学生ホールでサボテンポスターを掲示

研究対象でもあるサボテンには、過酷な環境下でも生き抜く、たくましさを感じていました。また、サボテンのまち・春日井には、伊勢湾台風(1959年)で大打撃を受けてもなお、サボテンの一大産地にまで発展させたストーリーがありました。コロナ禍における先の見えない不安につつまれている時こそ、サボテンの生命力、そして苦境を乗り越えてきた歴史を見つめ直すことで、何か勇気づけることができるのではないかと考えました。

また、ポスターに掲載したウチワサボテンは、新しい茎節 (丸い葉状茎) を積み上げるように成長します。すべてを崩してまた一から組み立て直すことは、とてもしんどいことです。でもこのサボテンのように「また一つ、新しい自分を積み上げればいい、今までだって積み上げてきた自分の力を信じ、また新しい変化を受け入れてみよう」という思いも込めました。

反響は。

6月17日、温室でテレビ局の取材に答える

6月17日、温室でテレビ局の取材に答える

大学からも発信していただいたおかげで、すぐにテレビや新聞などメディアに取り上げていただきましたが、実際に町で掲載されたポスターを見て、取材していただいた新聞社もあり、うれしく思いました。なかなか多くの人の目に留まるのは難しいことですが、少しでも、そのメッセージがお役に立てることを願っています。

サボテンメニュー「エスニック・サボーレ」も近く発売ですね。

食用サボテンとタンドリーチキンを包んだピタパンです。MS26学びのコミュニティ創出支援事業で採択されたサボテンプロジェクトから考案し、天白キャンパス校友会館のグリーンベーカリーブックカフェと共同開発したものです。今年1月28、29日に「アグリビジネス創出フェアin東海・近畿」(会場:ウインクあいち6階展示場) にて試食も含めて発表しました。また7月16日には改めて学生らと試食会を設けました。おいしくヘルシーな食品として好評でした。たくさんの人に食べてほしいです。

どんなことを研究していますか。

耐乾性に優れた多肉植物特有の「CAM型光合成」を研究しています。CAM (カム) は、Crassulacean acid metabolism (ベンケイソウ科植物の酸代謝) の略で、CAMを営む植物をCAM植物と呼びます。私は特に、環境の違いに応答して、葉内細胞内でどのような変化が起こっているのか、透過型電子顕微鏡などを使って調べています。

サボテンを研究対象とした動機は。

CAM植物の王道をゆくのがサボテンだと思っています。おそらく、多くの人も乾燥地の植物と言えば、まずサボテンを思い浮かべることと思います。地味で華やかさはないのですが、多少のことで枯れることなく、たくましい。形も変わっていますが愛嬌(あいきょう)も感じられます。愛好家が多いのも、そんなところにひかれるからだと思います。

研究の面白さはどんなところですか。

葉緑体を中心に細胞の構造を観察していますが、その振る舞いや形は環境に応じて変化を示します。こうした変化を自分の目で実際に捉えることができるのが、顕微鏡による研究の面白さです。また、その構造を見るだけでなく、それがどんな意味を持ち、機能を果たすのか、謎解きのように考えることも面白いんです。また、その隠れた機能も含めて、きれいに写真を撮り構図を考えていくことも、手間ではありますが、楽しいことでもあります。

在外研究の思い出を語ってください。

「ideas start here」と色紙に書いた近藤准教授

「ideas start here」と色紙に書いた近藤准教授

カナダのトロントから100kmほど西にあるウォータールー大学で2010年に1年間、研究員として滞在しました。カナダを代表する理工系中心の大学です。また2018年にはノーベル物理学賞が出ました。女性物理学者として3人目、55年ぶりにノーベル賞を受賞したことでも注目されました。

その大学で出合ったのが「ideas start here」、つまり「新しい考えはここから始まる」というスローガンです。これは、イノベーションを促進させることをうたったものですが、私にはそんなに気負うことなく受け入れることができました。「自分で思ったことは自分で始めればいいんじゃないの」と背中を押してもらえたような気持ちになりました。

今も「ideas start here」が記された缶バッジをバッグに付けて、その言葉をモットーにしています。実は、サボテンのポスターを作ろうと思った時も、「研究成果を発表するわけではないし…」とためらう気持ちもあったのですが、「やらなければ何も始まらない」「一歩踏み出してみたら」「やってみよう」という思いが後押ししてくれました。

学生に繰り返し説いていることはありますか。

まずは目の前の事象を素直に受け入れるということです。学生実験を担当して思うことですが、学生の頭の中は最初から「決まった答え」で固まっています。ですから、実際に自分で実験した結果に対して、その答え通りになったか否かの選択しかありません。仮説自体が間違っていることはよくあることですが、それに気付くためにも、まずはよく結果をみて、その変化を言葉にして発することが大切です。「こうならなければならない」という固定観念は学生の就活の時にも現れてきます。自らの行動領域、可能性を狭めているような気がします。もっと柔軟に、そして自分に正直に、思い切り弾けてほしいと思います。

趣味や気分転換法を教えてください。

趣味は特にありません。気分転換法というほど大げさではないのですが、天白キャンパスの北東隅にある温室で、植物に水やりをしていると、気分転換になります。新しい発想が出たりします。

近藤 歩(こんどう・あゆむ)

2000年、鹿児島大学大学院 連合農学研究科 生物資源利用科学専攻博士課程修了。博士 (農学)。2001年、科技庁特別研究員を経て、名城大学農学部応用生物化学科講師に着任。2007年より現職。日本作物学会、日本植物学会などに所属。

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