育て達人第185回 五十畑 浩平

フランス版インターンシップを研究 キャリア教育に情熱

経営学部経営学科  五十畑 浩平教授(キャリア・デザイン論)

「スタージュ(stage)」という言葉を知っていますか。フランス版「インターンシップ」だそうです。経営学部経営学科の五十畑浩平教授はフランスのインターンシップを研究しながら、キャリア・デザイン論などを教えています。日仏の勤労観は違いが際立っているといいます。

スタージュについて説明してください。

就職の厳しいフランスで、年間延べ160万人の学生が行っているインターンシップです。エリート養成校のグランゼコールに限ってみれば、スタージュを通しての就職が最も多く、3割から4割に達します。研修期間も1回当たり数カ月から半年と長く、1人で数回も行うのが一般的です。研修内容も充実しており、教育機関で学んだ理論や知識を、現場での就業体験を通して実践することができます。

一般の大学生もやっているのですか。

エリート校だけが行ってきましたが、それが大学などにも広がり、1980年代以降は、一般化・大衆化しました。大卒でも半数が非正規の仕事に就く就職難のフランスでは、正規雇用に結びつけるには、スタージュの経験が必須となっています。

新卒一括採用の日本とは違いますね。

フランスでは、学生のうちにスタージュを経験し、非正規雇用を経て正規雇用にいたります。正規雇用までの期間は3年から5年とも言われ、その間、雇用は不安定で収入は低いままです。このようにして学生は、社会に段階的に参入することになります。厳しいことには変わりありませんが、社会も「そのようなもの」と大らかに受け止めている面もあります。

新卒で正社員になれる日本は、世界的に見て恵まれていますが、ミスマッチが大きかったり、離職率が高かったりします。

研究成果は。

著書を手にする五十畑浩平教授

著書を手にする五十畑浩平教授

2020年に出版した『スタージュ フランス版「インターンシップ」:社会への浸透とインパクト』(単著・日本経済評論社)です。スタージュが浸透していく歴史的背景を解明してきました。スタージュがもつ制度上の「フレクシビリテ(フランス語で柔軟性)」という特性に着目し、学生・企業・教育機関の各アクター(当事者)との関係の中で、いかに浸透していったかを解き明かしてきました。

日本への導入は。

日本では短期間のインターンシップがほとんどです。なかでも、ワンデーインターンシップだったりすることも多くあります。仮に日本で本格的なインターンシップを発展させていくのであれば、新卒一括採用という雇用慣行を柔軟に見直す必要があります。ただ、日本のインターンシップとの比較は今後の課題としています。

そもそもフランスに興味を持ったきっかけは。

ブザンソンの中心広場にある教会(2014年撮影)

ブザンソンの中心広場にある教会(2014年撮影)

大学の英米文学科に入ったのですが、第二外国語のフランス語の方が面白く、アテネ・フランセ(語学専門学校)にも通って勉強しました。東京の実家に住んでいたため、実家を出て一人暮らしができるのと料理が口に合うだろうという理由で2001年から1年間、フランスのブザンソンに留学しました。小澤征爾さんが優勝したブザンソン国際若手指揮者コンクールで有名な音楽の街です。

どんな思い出がありますか。

ブザンソンの目抜き通り(2014年撮影)

ブザンソンの目抜き通り(2014年撮影)

日本と勤労観が全く違うのに驚きました。フランスではバカンスも長期間取りますし、人生の中で仕事に対する考え方が日仏でこうも違うとは。これが私の研究の原点です。フランスの社会・経済を体系的に学びたいと思い、大阪外大に編入学しました。

転機ですね。

ブザンソンの留学先(2014年)

ブザンソンの留学先(2014年)

寮生活が楽しく、学生時代を謳歌(おうか)しました。大学院は東京に戻り、修士、博士を5年で終え、東日本大震災があった2011年に博士号を取りました。キャリア教育の重要性が高まってきたころです。

大学ではどんなことを教えていますか。

2021年3月17日の学位記授与式で卒業生と

2021年3月17日の学位記授与式で卒業生と

ゼミ以外に、1年生にはキャリア・デザイン論、2年生以上にはワーク・ライフ・バランス論を教えています。例えば、アメリカの教育心理学者クランボルツが提唱した「計画的偶発性理論」とか。これは、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるという事実をもとに、そうした偶然を計画的にキャリア形成に活用していこうという理論です。

他には。

経営学部ということもあり、SWOT(スウォット)分析も授業に取り入れています。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字からとっています。もともと企業分析に使われますが、それを援用し自己分析に役立ててもらっています。

理論を教えた学生にはどう実践してほしいと思いますか。

学ぶ場は教室だけとは限りません。さまざまな活動を通して自己理解を深めてほしいです。授業での理論と実社会での実践の間を行ったり来たりすることが重要なのです。それを繰り返すことで徐々に軸ができ、価値観が揺らがなくなるのです。キャリア・デザインは人生の目的地とルートを決めるカーナビのようなものです。将来、どう生きるかという目的地をセットすれば4年間の学びが違ってきます。「もっと早く知っていればよかった」と言った学生もいます。

新入生にメッセージをください。

三つあります。まず、さまざまなコミュニティーに参加して人脈を広げてほしいということです。次に、何かに熱中してほしい。ゲームでも何でもいいのです。熱中するうちに、ある時、見えてくるものがあるのです。それは4年間かけないと見えてきません。最後に、多感な時期、一人で悩むことも重要です。

好きな言葉を色紙に書いてください。

「妄想でもいい、想像力を働かせて」と説く

「妄想でもいい、想像力を働かせて」と説く

「imagine!」を挙げます。想像することです。自分の可能性に勝手に線を引かず、自由に想像してほしいという意味です。妄想でもいいのです。「自分はこんなことができるんだ」と自信をもつ。根拠のない自信でもいいのです。自分の将来への想像力と同時に、他者への想像力も忘れてはいけません。

趣味や気分転換法は。

以前はハーフマラソンを走っていましたが、今は走っていません。気分転換はやはり酒を飲むことです。ビールが好きです。コロナ禍でZoom飲みをしましたが、加減がつかずついつい飲み過ぎてしまいます。

五十畑 浩平(いそはた・こうへい)

1978年、東京生まれ。青山学院大学文学部、大阪外国語大学(現・大阪大学)外国語学部卒業。2011年、中央大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。中央大学経済学部任期制助教、香川大学特命助教などを経て、2016年から名城大学経営学部准教授。2021年4月から同教授。専門は、フランスにおける若年者雇用問題、職業教育、人材育成など。紹介した単著以外に、『フランス―経済・社会・文化の実相』(共著・中央大学出版)などがある。

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