大学概要【2021年度実施分】"E=mc² for SDGs
(Empowerment = movie × creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs) のための人づくり"
経済学部
(Empowerment = movie × creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs) のための人づくり"
2008年にスタートした谷村ゼミでは、「持続可能な開発目標」(SDGs)に先立つ「ミレニアム開発目標」(MDGs: 2000-15年)のもと、国際開発・協力に関心を寄せるゼミ生が、PBL(Project-Based Learning)形式で主体的に貧困削減や開発教育などの課題を探究してきました。そのようなゼミでの活動をベースに、2016年度からは、国際機関や公益社団法人のビデオ・コンテストなどへの作品づくりにも取り組んでいます。
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ACTIVITY
2021年4月1日 オンライン講演会
ハビタットひろば「自らの生活を取り戻す: イラクにおける復興・平和構築支援」受講報告
2021/04/15
2021年4月1日、国連ハビタット(UN-HABITAT)・福岡県国際交流センター主催のオンライン講演会に参加しました。国連ハビタットでは、近年、イスラミック・ステートとの戦いに起因する国内避難民や被災都市を支援するプログラムを展開されています。今回は、国連ハビタットイラク事務所にて本事業を主導されているプログラム・マネージャー 寺岡亮輔氏より、その復興・平和構築支援の概要をうかがいました。
■戦闘で破壊し尽くされたまちの復興においても、「だれも置き去りにしない」支援
成瀬瑠里子 (経済学科3年)
ハビタットひろばにて、ご講演テーマとして「イラクを取り上げるのは、初めて」とのこと。国連ハビタットイラク事務所の寺岡亮輔氏は、これまでに、インドのNGO、青年海外協力隊、国連世界食糧計画(WFP)などで、孤児や青少年、学校給食に関わる諸事業に当たられ、2020年12月に現在の要職に就かれたそうです。現地の不安定な通信状況を気遣いながら、「社会的、環境的に持続可能なまちや都市づくり」の推進というハビタットの使命から、分かりやすくお話しくださいました。
イラクは、人口が約3千万人以上、イスラム教徒(シーア派)が多数を占める国家です。戦争が長く続き、1980年代にはイラン・イラク戦争、1990年代初頭には湾岸戦争、21世紀の幕が開くとイラク戦争、そして近年は過激派組織イスラミック・ステートとの戦いがありました。ご講演では、激しい戦闘で破壊された市街地や銃弾を浴びた門扉のスライドを拝見し、「開発」はもとより「復旧・復興」さえも大変困難で、途方もない作業であることを痛感しました。続いて、寺岡氏は、今にも崩壊しそうな建物の前の歩道に急場しのぎの屋根をかけ、商店を営む地域住民の写真も見せてくださいました。こうした厳しい環境にあっても、当地の方々の「未来」への力強い歩みは、確かに始まっています。
イラク事務所は、1996年に事業を開始。イラク戦争以降は、早期復興支援-特に、避難施設等の提供、住居の修復等を通じた国内避難民への支援-に注力されてきたそうです。また、現在は、イスラミック・ステートとの戦いで破壊されたまちを復興し、避難生活を送る人々の帰還をはかるなど、イラクにおける平和構築に力を尽くされています。具体的には、「低価格住宅の建設」、「住宅およびインフラの修復」、「職業訓練(住宅建設・修復)、生計支援・雇用促進」、「土地権利確定の支援」の4つがプログラムの柱となっています。この取り組みにおいては、女性世帯主や障害者とされる方々への支援も進められていました。今後は、水・衛生設備の修復をはかりながら、新型コロナウイルス感染症予防に関する啓蒙活動も展開されるそうです。
ご講演のなかで、最も深く心に感じたことは、戦闘で破壊し尽くされたまちの復興においても、「だれも置き去りにしない」支援をめざすという方向性でした。そこでは、細かいところまでデータ集計を行い、各国政府、国際機関、市民社会組織などを含む、広範なステークホルダーとの協議をもとに、各種の基準、優先順位、さらには配慮すべき事項を決めていくプロセスが大切にされています。私たちの身のまわりでの施策形成においても、こうした視点を、改めて確かめてみたいと思いました。
ハビタットひろば「自らの生活を取り戻す: イラクにおける復興・平和構築支援」
左: 当地の方々の「未来」への力強い歩み
右: 国連ハビタットイラク事務所 プログラム・マネージャー 寺岡亮輔氏
第17回ACジャパン広告学生賞「新聞広告部門」「テレビCM部門」奨励賞受賞報告
2021/06/03
2020年度後半、谷村光浩ゼミナールでは、次代を担う若者が広告制作を通じて「公」への意識を培うことを目的に実施されている「第17回ACジャパン広告学生賞」への応募をめざし、作品づくりを進めてきました。そして、21年1月に取りまとめました8作品のうち、2作品につきましては、大変ありがたいことに「奨励賞」にいたりました。
末筆ながら、新型コロナ禍のなか、「ACジャパン広告学生賞」を企画・運営くださいました関係各位には、改めて心より感謝申し上げます。
【新聞広告部門】奨励賞
■作品名・制作スタッフ
「勝手な思い込み」 牧野凱 内藤圭 田中皓登 石原稔晴
■作品テーマ
コロナ禍の「水」
■企画意図・ねらい
新型コロナが世界的に蔓延。手洗いが有効な対策とされ、私たちは日々実践しています。しかし、よく考えれば、世界にはきれいな水が手に入らない人たちがたくさんいます。そうした人々には貴重な飲み水、「まずは手洗い」と勧められるだろうか。自分たちの考えだけでは語れないことに気づかせてくれた、コロナ禍の「水」。
【テレビCM部門】奨励賞
■作品名・制作スタッフ
「私たちは、必要としている」 高島幸佑
■作品テーマ
アフター・コロナ
■企画意図・ねらい
コロナ禍において、私たちの生活は一変した。人と人との接触機会の削減、ソーシャル・ディスタンシングなどの感染拡大防止策が推奨されている。私たちは、暮らしの様々な局面において、ウィズ・コロナ、さらにはアフター・コロナの時代を生きる新たなかたちの手立てを、そして何よりも「発想」を必要としている。
□ACジャパン広告学生賞
https://www.ad-c.or.jp/campaign/cm/recruit.html
2021年6月1日 オンライン講演会
ハビタットひろば「フィリピンにおける健全な海洋と綺麗な都市づくり」受講報告
2021/06/17
2021年6月1日、国連ハビタット(UN-HABITAT)・福岡県国際交流センター主催のオンライン講演会に参加しました。国連ハビタットでは、海洋プラスチックゴミ問題への初めての取り組みとして、2020年より、「フィリピンにおける健全な海洋と綺麗な都市イニシアティブ(Healthy Ocean and Clean Cities Initiative [HOCCI])」事業を展開されています。今回は、国連ハビタット フィリピン事務所長 クリストファー・ロロ氏、ならびに、同事務所 環境社会配慮専門家 藤平純氏より、その新たな事業の概要をうかがいました。
■「ハッカソン」で、現地の若者が創出したモデル等もベースに事業を運営
三宅梨乃 (産業社会学科 2年)はじめに、国連ハビタット フィリピン事務所長 クリストファー・ロロ氏から、国際的な研究(2015)によると、海洋プラスチックゴミの流出において、フィリピンは世界第3位との厳しい現状が示され、海洋の環境破壊は、人々の暮らしや文化等に関わる主要な開発課題のひとつであるとのお話がありました。本プロジェクトは、COVID-19が広がりをみせ、「コミュニティ隔離措置」がとられるなかでのスタートとなり、大半の活動はオンラインでの実施とならざるを得ず、事業対象の都市・コミュニティでの不可欠な現地調査は、安全に十分な配慮がなされながら進められたそうです。
続いて、同事務所 環境社会配慮専門家 藤平純氏は、フィリピンにおける海洋ゴミに関わる諸課題から解説くださいました。2000年、「固形廃棄物エコ管理法」が施行されたものの不適切なゴミ処理がなされていること、プラスチックの利用を削減する政策的な手立てが欠けていること、国際基準のゴミ処理に関するデータ収集システムが整備されていないことに加え、地域社会・ビジネスにおける3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進にむけたインセンティブや意識面での問題が、海洋ゴミ問題のおもな原因であると強調されていました。
そして、藤平氏は、「ところで、フィリピンからの海洋プラスチックゴミは、何%が一度回収されたゴミでしょうか?」との問いを、スライドにて提示されました。何と、その答えは、上述の研究(2015)によると「74%」だそうです。フィリピンから流出する海洋プラスチックゴミのほぼ3/4は、一度は陸上で回収・処理されたゴミであり、それらを運ぶ際にトラックからこぼれたり、風に飛ばされたり、ゴミ処理場が海岸近くに設けられていることによるそうです。
持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、本プロジェクトは、目標11[持続可能な都市とコミュニティ]、目標12[つくる責任と使う責任]、目標14[海の豊かさを守る]に貢献する取り組みとのお話をうかがい、自らが強みと考える専門分野に引きこもらず、グローバル/ローカルな問題に立ち向かうために関連する領域の方々と広範に連携することの大切さを実感しました。また、効果的な解決策を見出すため、目下、フィリピンの若者たちは、本事業に関連した「ハッカソン」形式のバーチャル・コンテストで新たなアイデアを練っていらっしゃるとのこと。先進国が解決策を提案するのではなく、問題に直面している現地の方々が創出したモデル等を取り込む事業運営の手法にも、大いに心をひかれました。
■暮らし方を見直す、「意識」を一段と高める、そして、そのようにできる基盤を
原穂乃佳 (経済学科 2年)「フィリピンにおける健全な海洋と綺麗な都市イニシアティブ(Healthy Ocean and Clean Cities Initiative [HOCCI])」事業においては、まもなく始動する「フィリピン海洋ゴミに関する国家行動計画」(National Plan of Action on Marine Litter [NPOA-ML] of the Philippines)の地域レベルでの推進に向けた戦略・ロードマップの作成、海洋プラスチックゴミの流出に関わるデータ収集・管理の向上、さらには海洋プラスチックの削減・管理の試験的なプロジェクトの展開等が、おもな目標に掲げられています。
具体的には、マニラ、カラパン、レガスピ、オルモック、カガヤン・デ・オロ、そしてダバオの6都市を事業対象地域に指定。これまでに、政府機関・地方自治体・事業パートナーとの会議、環境技術専門家による国際会議、事業対象地域におけるワークショップ、「ベースライン調査」[各都市でのゴミの排出・流動に関する基礎データの収集]等を推進されてきたそうです。なお、この「ベースライン調査」については、国連ハビタット本部作成の調査方法「Waste Wise Cities Tool」が導入されたとうかがいました。
国連ハビタット フィリピン事務所 環境社会配慮専門家 藤平純氏は、こうしたワークショップや「ベースライン調査」をもとに、事業対象地域における今後の活動(案)としては、違法なゴミ処理に関する条例づくり、川底の浚渫、現在利用されているゴミ処理場の閉鎖ならびに新たな埋立地の整備、コミュニティ・レベルでのリサイクル活動、インフォーマルなゴミ処理事業者等への支援等が検討されている情況を、お話しくださいました。
海洋プラスチックゴミが、海洋生物・生態系に悪影響を与え、人間の身体・社会を蝕むことに対して、私たちも、ゴミの分別にとどまらず、プラスチック製品に依存した暮らし方の見直しまで含め、「意識」を一段と高めることの重要性を改めて認識しました。また、この海洋プラスチックゴミの世界的な解消にむけては、誰も置き去りにされることのない「学びの場」、そして「働きがいのある仕事」へのアクセスも、長期的にはとても大事なことのように感じました。
ハビタットひろば「フィリピンにおける健全な海洋と綺麗な都市づくり」
左: フィリピンにおける海洋ごみ問題 (スライド Part 1: 背景)
右: 国連ハビタット フィリピン事務所 環境社会配慮専門家 藤平純氏
「One Minute Video コンテスト2021」入賞報告
2021/11/27
2021年度、谷村光浩ゼミでは、地球環境、公衆衛生・健康などを糸口に、グローバル社会が抱える諸課題のつながりを考えつつ、「One Minute Video コンテスト2021」(事務局長: 小林和男 元テレビ朝日プロデューサー/ 審査委員長: 五嶋正治 元東海大学教授)が掲げられたコンテスト・テーマ「日本の社会に、そして国際社会に向けた1分間のメッセージ」(https://oneminute.jp) に取り組み、今秋5作品を応募させていただきました。そして、大変ありがたいことに、次の作品につきましては「入賞」にいたりました。末筆ながら、新型コロナ禍のなか、「One Minute Video コンテスト2021」を企画・運営くださいました関係各位には、改めて心より感謝申し上げます。
「それだけでは、十分ではない...」入賞
市橋美空 原穂乃佳 三宅梨乃 [海洋プラごみ班]
■メッセージ
海洋プラスチックごみの大半は街で発生したもの。そして、その多くは、一度はリサイクルのために分別して回収されたが運搬や処理中に流出したもの。ペットボトルを回収ボックスに入れるだけで「おしまい」ではない。
□One Minute Videoコンテスト2021 入賞20作品 (YouTube)
https://oneminute.jp/others/「one-minute-videoコンテスト2021」本審査の模様を公開します!/
2022年2月1日 オンライン講演会
ハビタットひろば「ベトナムにおける国連ハビタットの活動: 若者と公共空間」受講報告
2022/03/02
2022年2月1日、国連ハビタット(UN-Habitat)・福岡県国際交流センター主催のオンライン・レクチャーに参加しました。今回の主題は、急速かつ広範な都市化が進展する「ベトナムにおける国連ハビタットの活動」です。講演者の国連ハビタット人間居住専門官ラクスマン・ペレラ氏からは、特に「若者の参画によるクリエイティブな公共空間の構築」について、関連事業の概要をうかがいました。
■「若者は、明日の世界だけでなく、今日の世界でもリーダーである」
市橋美空 (経済学科 2年)
国連ハビタットは、1990年からベトナム政府と都市開発にともに取り組み、2007年にはベトナム事務所を開設しました。都市計画・都市経営、気候変動、廃棄物管理などの分野にて、様々なプロジェクトを展開しています。今回のレクチャーでは、2012年に開始された「グローバル・パブリック・スペース・プログラム」―世界中で185万人を対象に実施された参加型の公共空間整備事業―の解説に続き、ベトナムでの取り組みとして、同国の4分の1を占める若者が中心となって都市の未来を創るプロジェクトを紹介くださいました。
アートでより良い街づくりを目指す「タムタン壁画村」事業では、街の美化に加え、観光開発などを視野に家屋や塀に壁画が描かれ、小さな漁村が活力のある街に生まれ変わりました。また、「ハノイ公共空間づくりプロジェクト」では、若者とともに都市・公共空間の課題解決をはかるため、マインクラフトゲームを活用した新たなプラットフォームが構築されています。さらに、クリエイティブな若者たちのアイデアを社会や政策決定者とつなぐ試みとして「イラスト・コンテスト」なども開催されるなど、工夫の詰まった施策が次々と行われています。
具体的な事業例を拝聴するなかで、「都市の将来に何を期待するのか」、「自分の街がどうあって欲しいのか」など、自分たちが主体的に考え、若者のイノベイティブな着想や意見をベースにIT技術を活用し、専門家とのコラボレーションが展開されれば、無限大の力を生み出す可能性を感じました。日本においても、若者の参加を促すような仕組みや場を考え出し、より住みよい「クリエイティブな街」をともに創り出せないかと考えます。私自身も、これからの未来を担う一人の若者として、地球・地域社会の進路を常に思い描きながら、小さなことからでも社会に貢献できるよう、着実に力をつけていきたいと思いました。
「若者は単なる受益者ではなく、開発するためのパートナーであり、街の資産であり、実践的な変革をもたらすエージェントである」
これは、私が今回のオンライン・レクチャーにおいて、一番印象に残っている言葉です。ラクスマン・ペレラ氏のご講演にて若者がいかに期待されているのかを知り、公共政策の進め方に対する私自身の意識が大きく変わりました。