大学概要【2018年度実施分】まちづくり実習プログラムの実践的改良

理工学部

まちづくり実習プログラムの実践的改良
実施責任者:松本 幸正

理工学部社会基盤デザイン工学科では,平成25年度から,まちづくりのデザイン力を養成するため,「デザイン学入門」,「ランドスケープデザイン」,「都市デザイン学」などの科目を設け,学んだ知識を実践する科目として「まちづくり実習」を開設している.
 昨年度に引き続き,この「まちづくり実習」では,実際に自治体が抱えている課題を自分たちで調査し,その解決策も受講生たち自らで考えて提案してもらう.
 課題調査では,対象自治体でのまち歩きを行うが,その際に,改良された「まち歩きアプリ」を活用する.このアプリによって,まち歩きをしながら写真やコメントをリアルタイムで投稿して,受講生同士で情報を共有できる他,どこでどのような課題があったかを後から地図上で確認できるようになり,アイデアに富んだ課題解決策の提案につながると期待できる.

ACTIVITY

長久手市の課題概説とまちの視察

2019/04/03

 理工学部社会基盤デザイン工学科では,まちづくりに対するデザイン力を養うための科目を1年生から開講しています.3年生の後期には,デザイン力の実践的養成の場となる「まちづくり実習」を開講しています.この講義の一環として,実際のまちを自分たちの目で見て,抱える問題や課題を見つけるため,10月2日に長久手市の現地視察に行きました.
 まずは長久手市役所において,まちづくりの企画の担当者から,長久手市の現状と課題についてのプレゼンテーションを聞きました.長久手市の全般の理解を深めます.続いて,バスに乗って,説明を受けながら長久手市の抱える問題や課題を車窓越しに実感しました.
 比較的新しく区画整理が進んだ長久手市は,街路も整い,建物も整然とし,一見はきれいで問題が無いように見えますが,実際には,いくつかの問題を抱えています.近い将来,ジブリパークが開業予定など,新たな課題も出てきます.このような,現状を「聞いて」「見て」「感じた」ことは貴重な体験であり,まちづくりデザインの必要性を肌で感じたことでしょう.
 バスで市内を視察しながら「はなみずき」駅まで移動し,そこからは,長久手市を東西に貫くリニモに乗車して,長久手市内を上空から観察するとともに,愛知万博開催時に開業した新交通システムの利便性や快適性を実感することができました.
 リニモで「陶磁資料館南」駅に到着後,今度は,愛知高速交通株式会社の車両基地へ向かい,車庫でリニモの実物を見ながら磁気浮上の仕組みの説明を受け,その後,運転指令室の見学もさせてもらいました.長久手市のまちづくりにとってリニモは欠かせない存在ですが,その交通手段としての魅力だけではなく,まちづくりにどう生かしていくかのデザインが重要であると気がついていたようです.

長久手市の担当者による長久手市の現状と課題の説明

愛知高速交通株式会社の車両基地でのリニモの説明

瀬戸市の課題概説とまち歩き

2019/04/03

 理工学部社会基盤デザイン工学科3年生の講義科目である「まちづくり実習」では,10月2日の長久手市の視察に続き,10月9日に,隣接しながらも長久手市とは様相が大きく異なる瀬戸市の現地視察に行ってきました.
 はじめに,バス車内で,昭和40年代に開発が始まった菱野団地の現状についての説明を受けながら,車窓を通して実際の姿を目にしました.前週に視察を行った長久手市とは全く異なる問題に直面しており,まちづくりデザインはまさに地域地域にふさわしい形で,オーダーメイドである必要性を実感しているようでした.
 その後バスを降り,菱野団地にある商店街の空き店舗へ徒歩で移動し,菱野団地コミュニティ交通運行協議会のメンバーから,菱野団地住民バスについての話を聞きました.高齢化の進んだ菱野団地では住民たちの生活の足の確保が課題となっており,それを支える住民バスのために汗を流している方々の生の声を聞くことができ,郊外団地の高齢化問題を知る良いきっかけとなりました.
 続いて,菱野団地から市中心部にある瀬戸蔵へバスで移動し,2つの班に分かれて中心市街地の商店街,無風庵周辺などをまち歩きしました.中心市街地を自分たちの足で歩き,自分たちの目で見ることによって,郊外団地だけではなく,中心市街地においても多くの問題があることを実感していたようです.

菱野団地住民バスの説明を受けている受講生たち

中心市街地をまち歩き中の受講生たち

ファシリテーション技術と対象自治体における課題設定

2019/04/03

 10月16日と23日に,パブリック・ハーツ株式会社代表取締役の水谷香織氏を非常勤講師にお招きし,ファシリテーションの役割と方法,ワークショップ技法などについての講義を行ってもらいました.
 この講義では,理解を深め,ファシリテーションの役割を実感してもらうため,実際に受講生たちでワークショップを行ってもらいました.3人程度で班を編成し,対象とする自治体の課題をワークショップ形式でまとめました.
 はじめに,エフィカシーアップ(自己効用感を高める)を行うことで集中して積極的にワークショップに参加できるようになっていました.課題をまとめる段階では,立ち上がって一生懸命に作業を進める班が目立ちました.これもエフィカシーアップの効果でしょう.
 ワークショップの最後には,班でまとめた対象自治体の課題をポスターとしてまとめ,班ごとに発表を行ってもらい,受講生全員で課題の共有を行いました.
 今後は,今回まとめた課題の現状を知り,そして解決策を探るためにもう一度現地調査を行い,設定した課題とその解決策を提案していくことになります.

立ち上がって作業をする受講生たち

発表の様子

対象の自治体のまち歩き調査

2019/04/03

 「まちづくり実習」の講義では,これまでに,現地視察とワークショップを行うことで,取り組むべき課題を自分たちで設定しました.11月6日には,その課題の現状把握と,解決策を提案するための基礎データの収集を目的として,対象自治体にてまち歩き調査を行いました.
 受講生たち自身でアンケート内容や観測等の調査方法を考えており,調査地域・方法がそれぞれの班で異なります.普段の講義は,座学が中心の受動的な姿勢が多いので,自分たちで調査の計画から実施までを考え行うことは経験が無く,戸惑いも多かったようです.
 調査中は,各班で1台ずつタブレットを持ち,開発してきた「まち歩きアプリ」を使用しながら調査を行いました.これにより,各班がどこにいるかがわかるだけではなく,リアルタイムに各班がWEB上に挙げた現地の写真やメモを見ることができるため,お互いに情報共有をしながら効率的に調査を行うことができました.また,メッセージ機能も追加されたため,班同士での情報交換も容易になりました.「まち歩きアプリ」の使用により,調査結果もまとめやすくなりました.

市役所で担当者に質問をしている受講生たち

開発したアプリでの受講生のメモ例

対象の自治体の課題解決策の発表会

2019/04/03

 自分たちで設定した課題の現状把握と,解決策を提案するための基礎データの収集を目的とした11月16日のまち歩き調査の後,受講生たち同士で意見を出し合いながら課題解決策をワークショップ形式でまとめました.その後,発表練習を繰り返しながら,いよいよ自治体担当者の前での発表の日です.
 教員や受講生仲間に加え,実際にまちづくりに携わっている自治体担当者の方の前での発表は,これにまでにない緊張感をもたらします.ですが練習の甲斐もあり,これまでにない熱のこもった素晴らしいプレゼンテーションを行うことができました.
 発表後は,各自治体の担当者から講評を受けました.教員とは異なる実務の視点からのコメントは,受講生たちにとっては実社会を知る良い機会になったようです.「まちづくり実習」でのすべての経験は,通常の座学や実験では得られない貴重なものであり,今後,まちづくりデザインを考える上で大いに役立つと期待しています.

発表の様子

自治体の担当者から講評

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