大学概要【2022年度実施分】歴史文化・近代遺産を活用した市街地・コミュニティ活性化プロジェクト
学部・部署共同
本取組では、建物や都市・景観の調査や住民との共同ワークショップを実施し、学生が主体となって地域とコミュニティの活性化案を考える。参加学生は、企画から成果の発表・提案までの体験を通して実社会と関わる活動の面白さを実感し、異なる学部の学生との協働から多様な見方や価値観を得て視野を広げる取組である。本年度も昨年度と同じく、岐阜県郡上市にて歴史や地勢、まちなみ・景観、人々の生活等を考えた提案を作成する。
ACTIVITY
夏の活動準備を進める合同ゼミ(5/25、7/19)
2022/08/05
本取組では、夏休みに郡上市の2つのサイト、白鳥町白鳥と白鳥町石徹白で活動します。それにむけて、参加研究室合同のゼミを実施して準備を進めています。5月25日の初回ゼミでは、本年度の活動の概要と、活動地の説明を行い、参加希望地を決めました。この日は、2つのキャンパス間での移動が時間的に難しかったので、オンラインで2会場をつないで実施しました。以降は活動サイト毎の打合せを行い、事前学習を進めました。
7月19日の合同ゼミはドーム前キャンパスで参加者が実際に集まり実施しました。お互いの研究室以外のメンバーと直接顔を合わせるのは初めてでした。今回のゼミでは、現地活動についての具体的な説明があり、活動のための道具の準備、現地で行うことを全員で確認しました。ここから最終準備を整えていよいよ現地活動となります。
郡上市白鳥町石徹白地区での活動(8/23,24)
2022/10/24
石徹白地区では,「石徹白の自然や文化,そこに長く暮らす方々や移住してきた方々の考えに触れ,そこから学んだこと,魅力を伝える」ことを主眼に置いて活動しました。
事前のオンラインミーティングでは自然の中の暮らしや,移住,手仕事,伝統を受け継ぐ姿勢など,個々の学生が深めてみたいと思うテーマを共有し,石徹白地区地域おこし協力隊の加藤健志郎さんのご助言を得ながら,3日間の滞在計画を立てていきました。
【活動内容】
1日目は石徹白地区の上在所にある「白山中居神社」を訪ね,禰宜の石徹白隼人さんのご協力のもとに正式参拝をさせていただきました。2年目となる合同ゼミでのフィールドワークを安全に,充実して終えられるようお願いをしながら,神聖な気持ちでスタートを切ることができました。正式参拝の最後には,神様に捧げた神饌をいただく神人共食の儀礼である直会をしながら,石徹白隼人さんが地域にかけられる思いについてお話を伺いました。
2日目の朝は石徹白地区の入口にある桂清水の湧水をいただいてから,白山中居神社の背面の山中にある「浄安杉」に向かいました。浄安杉までは「美濃禅定道」を通り,地域で行われている道刈や古道の整備について加藤健志郎さんからお話を伺いながら急な林道を登っていきました。
その後,3つのグループに分かれて地域の方のお話を伺いにいきました。特定非営利活動法人地域再生機構副理事長の平野彰秀さんには,東京や岐阜市でのまちづくりの経験から,石徹白に移住し小水力発電を実現された経緯をお聞きするなかで,山奥にある地域の不便さではなく,チャレンジできる環境に目を向けられていることに大きな気づきをいただきました。代々石徹白に暮らし,地域で土建業を営みながら地域づくりに取り組まれている石徹白秀也さんには,短い年月では成果を得にくい地域づくりの経験から,長く継続していく活動を更新しながら引き継いでいく姿勢を学びました。地域の山仕事に携わり,郷土史に造詣の深い上村敏治さんには,豪雪地帯である石徹白地区の冬の厳しさや,除雪機や自家用車が容易に手に入らなかった頃の峠の往来の様子をありありとお話いただき,冬の石徹白滞在に思いを馳せました。
午後には石徹白川に行った後,石徹白地区の子どもたちと一緒にスイカ割りをしました。石徹白小学校は全校生徒で13人。「将来にわたっても,石徹白小学校を残す」ことが地域づくりのスローガンで,移住や山村留学で子どもが少しずつ増えています。加藤健志郎さんのお宅とその周辺に作られているガーデンは子どもたちが自然と集まる場になっており,この時間や共同作業を共にしながら,子どもたちが真ん中になって遊び,相互にコミュニケーションをしながら主体的に活動する様子を,体験的に感じることができました。
今回の滞在で気づき学んだことは,石徹白地区のことでありながら,学生がもつテーマや学生生活での悩みにつながり,学生自身の視点や考え方の変化をもたらすきっかけにもなったのかもしれません。そうした人材が交流人口となって石徹白地区を再訪問したり,他地域に広がっていったりすることで,フィールドワークで学び身につけた活力が循環していくことを期待したいと思います。
郡上市白鳥町白鳥での活動(8/23~25)
2022/10/24
白鳥地区では、この地域のコミュニティの状況を把握し、その魅力を発見し、さらに良くしていくためにどうすれば良いのか、ということを考える活動を行いました。
【活動内容】
1日目は、朝に石徹白班のメンバーとも一緒に大学を出発し、昼食を阿弥陀ヶ滝で取り、滝の見学を行った後、それぞれの班に分かれての活動となりました。白鳥班はまず、白山文化博物館を見学し、白鳥の町の発展の元となった白山信仰に関わる文化財について、学芸員の方に説明して頂いた。続いて、長滝白山神社、長瀧寺を訪れ、白山信仰と寺社の歴史について説明を聞きながら境内を見て歩きました。
2日目は、午前中、町の北にある白鳥神社から南へ町の中心となる道を歩いて、古い建物や暮らしの様子を観察、記録しました。昔ながらの町家、袖卯建の有無や1階の庇の材質やデザイン、間口幅などに着目しました。途中、酒屋さんには聞き取りもでき、貴重なお話しを伺うことができました。午後は町にお住まいの寺田さんにインタビューを行い、町の昔の様子や、これまでのまちづくりの取組、今お考えのことについて、たくさんのお話しを伺うことができました。
その後、夕方にこれまでの調査結果と寺田さんのお話しから考えたことをまとめ、明日午前の発表会に向けてプレゼンを作成しました。
3日目は午前中に白鳥ふれあい創造館にて、地域の方にもご参加頂いた成果発表と意見交換の回を開催しました。そこでは次の2つのポイントを軸にこの2日間で考え、まとめたことを発表しました。
○一歩踏み出すと分かる“白鳥”のくらし
・お店は閉まっていても町の中に人がいることがわかる
・車は通るが歩行者は少ない
・商店街は観光ではなく、暮らしの場として役立っている
・薪が置いてある家が多い
・町の人と話してみると、外の人を受け入れてくれそう
・コミュニティの繋がりは大切にしていそう
→住民と外から来た人との交流となる場所、居場所を作ってはどうか
○立ちどまってみると“博物館”
・建物の形がさまざま…古い中にもいろいろな時代や素材、デザインを見ることができる
・個性のある建物がありつつ、建物の高さ、軒の高さが揃っているのでまちなみも作られている
・水路や地形による昔の町のかたちが今の町にも残っている
・時代毎の町の中心の移り変わりをエリア毎の違いとして感じることができる
以上の発表に対して、地域の方からは新鮮な見方である、町の歴史や変化を改めて思い出したと言った感想を頂き、道の太さ、水路についてのコメント、知見を頂くことができました。また、住んでいる人の豊かな日々の暮らしに加えて、訪れてきた人に対して、外に向けて魅力的な町であることを発信することについて、建物などハードも活かして考えてみようと思う、という見解も頂ことができました。
今後はこうした点にも着目して町のことを調べコミュニティの活性化に繋げていきたいと考えています。
白鳥&石徹白フィールドワーク 学生活動についての意見交換会(8/25)
2022/10/24
活動の最終日の午後は、白鳥ふれあい創造館にて、白鳥、石徹白両地域の住民の方々にも参加して頂き、意見交換会を開催しました。この会では、白鳥、石徹白に分かれて実施した学生活動での体験について、お互いに学びや気づき、新たな感性や発見を共有して学びにつなげることを目指しました。会のデザインと司会進行は地域おこし協力隊として石徹白で活動する加藤健志郎さんにお願いしました。
まず、各班での活動内容の発表をし、そのあと個人の感想の発表を行いました。発表に際して、聞いている班のメンバーは良いと思う点、自分も大切にしたい点など好意的な意見・感想を発表班へ伝えるポジティブ・フィードバックを行いました。ついで、感想の共有をしました。住民の方も含めた参加者全員が学生参加者1人1人に感じたことを伝えて場で共有しました。
多くの方から意見や感想をいただき、2日間の学びを整理して実感できました。また、学生発表に対するかたちで、地域の方々同氏の間でも意見交換があり、充実した会になりました。