大学概要【2025年度実施分】地域課題に向き合う
経済学部
"地方創生が叫ばれて久しいなか、今なお社会構造の諸変化は地域経済に大きな影響を与えています。少子高齢化に加え、多くの地域は商店街・繁華街の衰退といった「減少・衰退」に悩まされており、地域の中小企業や関連自治体は、その対応に急いでいます。では、「拡大」を図るにはどのような視点が必要となるのでしょうか。
本事業では、特定「地域」に焦点をあて、どのように地域の〇〇「拡大」をすすめていくのか、様々な視点から調査、分析をおこないます。"
ACTIVITY
岩手県陸前高田市のスローモビリティ「モビタ」の魅力
2025/11/28
わたしたちは2025年8月5日から8日にかけて、岩手県陸前高田市を訪問しました。陸前高田市は岩手県の南東端に位置し、人口は約1.6万人、そのうち約4割が高齢者です。同地は2011年の東日本大震災では大きな津波被害を受けましたが、その後は宅地の高台移転や産業の再生など復興に向けたさまざまな取り組みが進められています。市内では毎年、震災で犠牲になった方々への鎮魂の思いと、支援への感謝の気持ちを込めた「うごく七夕まつり」が開催されています。
今回の訪問では、地域エネルギー事業やモビリティ運行を担っている陸前高田しみんエネルギー株式会社にお話を伺いました。同社は陸前高田市の委託を受けて、地域モビリティ「モビタ」を運行しています。「モビタ」は観光地と過疎地域を結ぶ公共交通で、平日と休日で運行の目的が異なることを特徴としています。平日は高齢者を主な利用者とし、100円/1回で利用できるルートを運行しています。災害住宅や市役所、商業施設、駅などを結び、高齢者の外出を支える役割を果たしています。買い物や通院がしやすくなることで社会とのつながりを保ち、フレイル予防にもつながっているとのことです。一方、土日祝日は観光客を対象にした「観光ガイド便」が運行され、500円乗り放題で提供されています。震災遺構や観光スポットを巡ることで市内の回遊性を高め、地域経済の活性化につなげる取り組みです。
今回の調査でわたしたちの印象に強く残ったのは、「モビタ」のドライバーさんの多くが、ボランティアとして運行を支えているという側面でした。「陸前高田が好きだから」、「自分たちのまちを良くしたい」想いで関わっている方が多く、地域のあたたかさや、まちへの強い愛情を感じました。「モビタ」は単なる移動手段というだけでなく、人と人がつながる“交流の場”としても大きな役割を果たしているのです。
なお、現在は自家用有償旅客運送に関する制度の制限があり、「モビタ」運行にも少し工夫が必要とのことです。そのため、今後は無償運送の活用や、地元企業との協力によって自主財源をつくる仕組みなど、より柔軟な運行方法が検討されています。こうした取り組みを通して、持続可能な地域交通を目指しているとのことでした。
今回の訪問を通して、わたしたちは「交通」は単なる移動手段ではなく、地域をつなぎ、支え合うための仕組みでもあることを学びました。「モビタ」のように、地域の人々の想いが形となった取り組みは、今後のまちづくりやMaaSの発展にも大きなヒントになると感じました。
陸前高田市「モビタ」の進展とバッテリー交換式コンバージョンEVを知る
2025/11/28
2025年10月末、わたしたちは再び岩手県陸前高田市を訪問しました。同市では、小型EV「モビタ」を公共交通システム事業として展開しています。この事業は、民間企業の陸前高田しみんエネルギーと陸前高田市の共同で実施されているものです。わたしたちは同地の「地域住民に寄り沿った取り組み」に注目し、市内で開催された産業祭に参加するとともに、「モビタ」試乗会の担い手にインタビュー調査を行ってきました。
陸前高田市は2011年の東日本大震災にて被災した地域で、わたしたちは前回(2025年8月)の訪問時に被災後の復興の中で移動手段の乏しい高齢者の外出促進のため、「モビタ」がサービス開始されたと知りました。それから2か月後の陸前高田産業祭の調査時は、通常は有料で乗車できる「モビタ」が無料で試乗できることに加え、「モビタ」やその停留所について詳しい解説を加える音声ガイドが新たな取り組みとして備わっていました。お試しで「モビタ」に乗車してもらい、その魅力を感じてもらいながら音声ガイドによって地域を知ってもらうことにつなげるとのことです。また、今回試乗した「モビタ」は神奈川県川崎市をホームタウンとする川崎フロンターレ装丁になっていました。同市は東日本大震災をきっかけに、陸前高田市支援を続けているとのこと、モビリティでも陸前高田市を盛り上げている様子を目の当たりにしました。
加えて試乗会では、上記2社に加えて大手自動車部品企業が合同で手掛けるバッテリー交換式コンバージョンEV事業も調査することができました。バッテリー交換式コンバージョンEVとは、ガソリン自動車から内燃機関部品を取り出し、新たにモーターやバッテリーを取り付けることでバッテリー式EVに変える技術を意味します。ガソリン自動車からEVへの乗り換え時に価格的なハードルを下げることができる技術は、グリーンスローモビリティとは異なるエネルギー問題への対策アプローチです。
被災した地域だからこそ感じるエネルギーの重要性、その地で展開されるモビリティ導入やその関連技術が地域課題や環境問題を解決する一助になることを体感した体験となりました。
大阪府豊中市が創り上げる「モビとよ」を知る
2025/11/28
今回は大阪府豊中市への訪問報告です。同市では4つの地域課題を解決するためにグリーンスローモビリティを活用した取り組みを展開しています。この取り組みの特徴は、2021年度に実施した実証実験で一定の効果が得られたため、2023年10月正式に導入された経緯です。わたしたちは岩手県陸前高田市、静岡県焼津市のグリーンスローモビリティを活用した取り組み調査を経て、「他地域の取り組みと、どう異なる特徴があるのか」問題意識を抱き、実施主体である豊中市役所の方にインタビュー調査を行ってきました。
豊中市は大阪府北部に位置し、千里ニュータウンが広く知られる地域です。千里ニュータウンの開所から60年以上が経過し、地域住民の外出意欲低下や住民間のコミュニティ不足、近隣センターの衰退化、まちの治安への不安などの地域課題が浮上しました。そこでニュータウン再生への取り組みの一環として導入されたのがグリーンスローモビリティ「モビとよ」です。わたしたちもインタビュー後に試乗させていただきました。地域の雰囲気を見て周るなか、事前に情報として得ていたとおり高齢者や子供が多い印象を受けました。乗車中は私たちに話しかけ、手を振る地域の方もいらっしゃいました。また、停留所はアバウトなもので自宅まで送り届けてくれることもあるそうです。
グリーンスローモビリティを活用した取り組みを展開している地域は他にもありますが、豊中市では誰でも無料で乗車可です。また実施主体は市役所を主軸としていますが、地域住民のコミュニティも主となっており、運転も地域ボランティアの方が行い、走行ルートも地域住民の意見を取り入れて決めるなどといった地域住民主体の「モビとよ」運営が展開されていました。また、地域住民主体で運営しているため「モビとよ」の認知度も高く、地域に広く受け入れられ馴染まれている様子でした。移動手段としての活用方法を持ちつつ、地域課題を解決すべく導入された「モビとよ」。地域住民が主体となって解決していくといった、持続可能な取り組みになり得ることを学んだ豊中体験となりました。






