ナノサイエンスの先駆者・飯島澄男終身教授
カーボンナノチューブ発見から30年 飯島澄男終身教授が記者とオンラインで懇談会
近況や最先端の応用研究について語る 記者19人が参加
今年のノーベル賞は、10月5日(火)に物理学賞、翌6日(水)に化学賞が発表されます。これを前に、カーボンナノチューブ(CNT)の発見者でノーベル賞候補とされる飯島澄男終身教授(82)が9月9日、東京や名古屋の記者と研究室からオンラインで懇談し、近況を語りました。フリーライターを含む9社、19人が参加し、CNT発見から30年の応用研究の現状などについて質疑応答が交わされました。
半導体材料としての潜在力に期待
- 記者の質問に答える
- 論文引用数のグラフ
CNTは飯島終身教授がNEC研究員時代に持ち前の電子顕微鏡技術を駆使して発見、魅力ある材料として世界的に脚光を浴びてきました。飯島終身教授は科学誌「Nature」に1991年に発表した論文のサイテーション(引用)が、近年も右肩上がりで増えていることを数値で挙げて示し、「いかにポピュラーな材料かという証し。盛んに研究されている材料」と、その魅力を表現しました。
医療機器や半導体材料としての応用例を紹介しながらも、「応用研究は米中の研究者の戦いになっている」と指摘。シリコンに代わる省エネで高スピードの半導体材料としての潜在能力が期待され、「半導体産業の見直しが進んでいますが、日本も方向性を見誤らないようにしてほしい」と心境を吐露しました。
質疑応答で記者から米中競争の背景について問われると、「(国の)研究費の配分の問題。日本は科学技術でしか生きる道がないので、人・モノ・金をつぎ込んで基礎研究・応用研究を進めてほしい」と注文しました。
二酸化炭素など温室効果ガスの排出を抑える「脱炭素社会」が叫ばれていますが、飯島終身教授は「カーボンナノチューブは炭素でできています。炭素は有用で、むしろ『脱炭酸ガス社会』と言ってほしい」とこだわりを見せ、記者も納得する一幕がありました。
飯島終身教授はコロナ禍にもかかわらず、自転車で天白キャンパスに毎日通い、研究室で研究を続けています。自身50年前にアメリカで研究していた材料が全固体電池の材料として注目されているといい、それに関する論文も筆頭著者として発表しています。
私立大学研究ブランディング事業の研究成果発表も
- 電子顕微鏡を使った研究の歩み
- 研究年表。1991年に注目
懇談会の後、文部科学省の私立大学研究ブランディング事業に選定された2つのプログラムを主導する2教授が研究成果を報告しました。
ナノマテリアル研究センター長の丸山隆浩教授が報告
- 右下が丸山教授
うち、「新規ナノ材料の開拓と創製による名城大ブランド構築プログラム」は本学ナノマテリアル研究センター長である丸山隆浩理工学部応用化学科教授が担当。ナノ材料の基礎研究を中心に、学内的な広がりを伴いながら地道な成果を上げ、本学のブランディング向上にも寄与したことを説明しました。飯島終身教授は同センターの名誉センター長を務めています。
光デバイス研究センター長の竹内哲也教授が報告
- 右下が竹内教授
もう一つの「青色LEDを起点とした新規光デバイス開発による名城大ブランド構築プログラム」は、本学光デバイス研究センター長の竹内哲也理工学部材料機能工学科教授が登場。恩師の故赤﨑勇終身教授・特別栄誉教授の「良いデバイスは良い結晶から」という教えに基づいた新規光デバイスの開発や、世界初・世界最高性能を有する光デバイス実証など最先端の成果を紹介しました。
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