育て達人第171回 鈴木 秀和

さまざまな機会を生かしIT人材を育成

理工学部情報工学科  鈴木 秀和准教授(情報工学)

ビッグデータやロボットなど先端技術の急速な発達で、AI(人工知能)人材の不足が指摘されていますが、本学にはIT人材育成に熱心な教員がたくさんいます。その中でも、学生に各種の賞を取らせたり、自ら学内外に積極的に情報発信したりして存在感を示す鈴木秀和准教授にフォーカスしました。その話には、人材育成のエッセンスが詰まっています。

教育、研究両面で目立つ存在ですが、その原動力はどこにありますか。

学生の表彰状をバックに色紙を手にする鈴木秀和准教授

学生の表彰状をバックに色紙を手にする鈴木秀和准教授

IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)など、ICT分野の技術革新はめまぐるしいものがあり、常に最新の技術やトレンドをいち早く理解して活用することで、新しいサービスの創出やイノベーションを起こすことが期待されています。大学の教育・研究においても、じっくり腰を据えて行うだけでなく、世の中の流れにおいていかれないよう、迅速かつ積極的に物事が熟すようにしていくことが重要だと考えて教育と研究にあたっています。

教育では研究室の学生2人が日本最大級の学生ハックイベント「JPHACKS 2018」で大賞を受賞しました。どのような助言をしましたか。

実はJPHACKSにおける彼らの挑戦に対しては直接的なアドバイスはしておらず、彼らの実力です。彼らは情報工学科で実施している「ITエンジニア育成プロジェクト」に参画しており、そこでは学生に対して自らの能力がどこまで通用するのか、あるいは何が不足しているのかを把握するために、積極的にハッカソン(ハックとマラソンを掛け合わせた造語で、ソフトウエア開発者が技能やアイデアを競う催し)や開発コンテストに参加するよう、さまざまな情報を提供して奨励しています。サポートしたと言えば、ハッカソン参加に必要な旅費の支給くらいでしょうか。それだけ本学の学生は高い能力や可能性を秘めているということが誇らしいです。

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どのような授業をしていますか。学生に繰り返し説いていることはありますか。

学生が授業で学ぶ内容が社会とどのようにつながっているのかを意識できるよう、英語を含む最新の動画や資料などを使って、世界や世の中では情報技術がどのように活用されているのかを説明したり、どのような課題が存在しているのかを考えさせたりしています。

研究では、次世代IoTバスロケーションシステムなどに力を入れているようですが、内容を説明してください。

スマートフォンを持たない高齢者でもバスの位置情報や遅延情報を提供できるバスロケーションシステムを安価に導入・運用できるようにするために、最新のIoT技術やICTを活用して産官学連携で研究開発をしています。バス停に電子ペーパー(表示装置)を設置することにより、バスの運行情報だけでなく、地域情報の配信や、災害時には避難所の情報を表示するなど、まちなかの情報配信スポットとなるようなプラットフォームを構築することを目指しています。

産学連携で力点を置いていることは何ですか。

製品化など、世の中で実用できるレベルを意識して研究開発に取り組んでいます。また、可能な範囲で研究開発を担当する学生を打ち合せや報告会などの場に参加させ、社会人と議論やコミュニケーションがとれるよう心がけています。

尊敬したり、目標にしたりしている研究者、教育者はいますか。

名古屋大学の河口信夫教授や奈良先端科学技術大学院大学から九州大学に移られた荒川豊教授ですね。お二方とも大学における研究もさることながら、産学連携による研究成果の社会実装やシビックテック(シビックとテックを掛け合わせた造語で、市民自身がテクノロジーを活用して行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組みをいう)関連の活動など、さまざまな分野でご活躍なさっており、僭越(せんえつ)ながら目標としています。

学生にメッセージをください。特に新入生にも。

大学生はさまざまなことにチャレンジできる機会がたくさんあります。失敗を怖がることはありません。失敗を恐れて行動しないと、何も成長しません。大学の授業は言うまでも無く大切ですが、コミュニティーに参加し、知的な課外活動をたくさん経験してみてください。同じ学科の仲間だけでなく、皆さんと違う考え方を持つ他学科・他学部、他大学、社会人の知り合いをたくさんつくれば、多様性の価値に気付き、今よりも一回りも二回りも大きく成長できることでしょう。

受験生にもメッセージをください。

名城大学では、海外研修をはじめ、行政や企業との社会連携など、学生が多様な経験ができるさまざまな活動が行われています。しかも大学が助成金を出して学生の自主的な学びや活動を支援するプロジェクトなどもあります。9学部23学科の文理融合型の総合大学ならではの魅力的かつ刺激的な学生生活が待っています。

名城大学に期待することは何ですか。

学生数1万5000人以上、教職員数800人以上を抱える総合大学であるが故に、学内におけるさまざまな仕組みや制度、情報システムが今の時代にそぐわないものもよく見かけます。変化の激しい現代社会であるからこそ、学生、教職員がこれまで以上に創造的な活動がしやすくなるよう、柔軟な運営や新しい仕組み・システムの導入を推進していただきたいと思っています。

好きな言葉を色紙に書いてください。

Happiness is a way of travel, not a destination.

研究活動も真にそうだと思います。研究成果ももちろん大切ですが、調査、発見、提案、評価、発表という一連のプロセスの中にこそ重要なことがたくさん含まれています。それが学生にとってもかけがえのない経験や財産になり、技術者として大きく成長することにつながると信じています。

趣味や気分転換法を教えてください。

愛車にまたがる鈴木准教授

愛車にまたがる鈴木准教授

趣味は旅行とバイクです。国内・海外を問わず、これまでに行ったことのない場所に行って、景観やご当地グルメを楽しんでいます。バイクは大学生のころから乗っており、今は1000 ccでサーキットも走れるタイプに乗っています。学生と一緒にツーリングに行くこともあります。

学生時代を振り返って、最も印象に残っている思い出は。

研究室には自分の学生時代の表彰状も掲げられている

研究室には自分の学生時代の表彰状も掲げられている

研究室生活ですね.研究室の一期生だったこともあり、すべてゼロからの立ち上げでした。同期10人のうち9人が大学院に進学したこともあり、朝から夜遅くまで、時には徹夜で研究し、旅行や遊びもたくさんしましたね。とても濃密な時間を過ごした仲間の多くは関東で仕事をしていますが、今でも年に数回集まって家族ぐるみの付き合いをしている仲です。

学生時代にやっておけばよかったということはありますか。

海外に留学しておけばよかったなと思います。今は国際会議などで短期間しか滞在できませんが、それでも得られるものがとてもあります。大学生ほど自由な時間がある時は、恐らく老後にしかやってこないと思いますので、ぜひ今の学生にはチャレンジしてほしいと思います。

鈴木 秀和(すずき・ひでかず)

1982年、愛知県豊田市生まれ。2009年、名城大学大学院理工学研究科電気電子・情報・材料工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員PDを経て2010年、名城大学理工学部情報工学科助教に就き、2015年より准教授および東北大学電気通信研究所共同研究員を兼務。所属学会はIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)、ACM(Association for Computing Machinery)、情報処理学会(シニア会員)、電子情報通信学会。著書に「モバイルネットワーク」(共著、共立出版)。

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