大学概要【2021年度実施分】学年横断の実践体感型の建築設計教育プログラムの実施

理工学部

学年横断の実践体感型の建築設計教育プログラムの実施
実施責任者:高井 宏之

建築設計課題で優秀な成績をおさめた学生が主体となり、複数学年横断型で行う建築設計教育プログラム。実社会で必要な課題解決能力の涵養を目的に、第一線で活躍する建築家・技術者と協働する形で、次の3つを実施する。
(1)学生が主体となった特別講義(2回)
選抜学生グループ(学部2年生~修士)が、講師の工房や設計事務所を訪れ実践の場と活動を体感、かつ講師より作品等解説を得る。そして後日、講師とテーマを企画し、100名規模の特別講義を開催する。
(2)全学年の建築設計作品(優秀作)の特別講評会(1回)
(3)これまでの総括としての「実践的な建築設計教育プログラムのパネルディスカッション」の実施

ACTIVITY

スキーマ建築計画の長坂常氏の建築作品の視察と事務所訪問

2021/11/29

11月に、学年横断メンバーで、建築家として活躍されているスキーマ建築計画の長坂常先生の「建築作品の視察」と「事務所にて設計業務の内容の紹介」をしていただく機会を持ちました。
長坂常氏は、独創的な空間リノベーションや家具製作などで有名な先生です。
当日は、午前中にまずスキーマ建築計画の事務所を訪問し、その建物の改修計画がどのような理念をもとに考えられ、どのように手が加えられて行ったかについて、細かくお話を伺いました。また事務所にて手がけている家具や什器などの制作サンプルを目にしながら、どのようにプロジェクトを進めているかを伺いました。
例えば捨てられる運命であったシューズボックスが、煮溶かされ、ノリで繋いで成形され、新たな展示台として再生されるまでの検討過程などの説明を受け、大変刺激的な内容でした。
午後には、スキーマ建築計画が設計した「HAY TOKYO」と「武蔵野美術大学16号館」を見学しました。
HAY TOKYO・武蔵野美術大学では、他律的な空間デザインとして、使用者が工夫しながら、空間を変更していくことが可能な壁・天井システムが導入されていました。シンプルながらも、様々な可能性を開く空間の作り方を目の当たりにし、学生達は興味深く見学していました。

スキーマ建築計画のオフィスにて、計画の説明を受ける

スキーマ建築計画のオフィスの前で集合写真

HAY TOKYO の見学

武蔵野美術大学16号館の見学
単管パイプを手掛かりとして利用者が思いのままに壁や棚をつけている

建築家 長坂常氏の講演会

2021/12/13

本プログラムでは学年横断型の実践体験型の建築設計教育プログラムとして、著名な建築家の作品と思想を学ぶ企画を実施しています。
12/8には、スキーマ建築計画の長坂常先生を迎えて、講演会が開催されました。
長坂先生は国内外で数々の商業施設などを手がけ、特徴的な家具デザインでも有名であり、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示などにも携わっています。

講演会では最初に、学生達からリサーチの結果が発表され、その後先生からお話を伺いました。
卒業設計から現在に至るまで、どのように思考を発展させて来られたか、多くの人の関わりを想起させるインターフェースの設計論、半建築、見えない開発、様々な概念の説明。また、SAYAMA FLATやHAPPAで体験したことなど、丁寧に説明していただき、大変勉強になりました。
最後には学生に対して「世相に惑わされずに、自分の本音を貫く」よう力強いアドバイスをいただき、学生達も将来の自分の職業に思いを馳せる機会となりました。

講演会後に長坂先生を囲んで

学生達に語りかける長坂先生

学生の発表

講演会ポスター

徳島県神山町の視察及び建築家伊藤暁氏の特別講演の実施

2021/12/27

本事業では、学生が建築家作品の見学の上で建築家とディスカッションを行い、特別公演を企画するというものです。実空間を生み出す建築分野では、実物を体験することが何よりの学びとなります。今回は、神山町の視察結果と、同地区に多くの作品を手がける伊藤暁氏の特別講演の模様を報告します。

神山町は、サテライトオフィスを活用した町おこしが有名な地域です。様々なIT業者が自然豊かな環境下に高速インターネットを整備した神山町にオフィスを構えています。今回見学したえんがわオフィス(写真1)などの作品も、そんなサテライトオフィスでした。地域への開き方や少ない予算の中での設計手法など、建築家独自の視点を聞いた上で作品見学に臨んだ学生たちにとって、多くの学びがある時間でした。伊藤氏らが30代に試みたこれら実践活動は、学生にとっても身近に感じられる挑戦だったようです。

更に、設計作品WEEK神山(写真2)に宿泊することもでき、自然の中にただずむ建築のあり方を考えました。

また、神山町の視察の後には隣町の上勝町を訪れ、本年の日本建築学会賞を受賞するなど高い評価を得ている「上勝ゼロ・ウェイストセンター」の視察も行いました。ゴミと言う全世界で取り組まなければならない問題に取り組む、世界からも注目を集める最先端の事例から学ぶことも多かったようです。

その後、大学では伊藤暁氏の特別講演も行いました。建築物単体を設計するのではなく、設計を通して、社会や都市の課題にどう向き合うのかをお話しいただきました。

写真1: えんがわオフィス

写真2:神山町の作品WEEK神山

写真3:上勝ゼロ・ウェイストセンター

写真4:伊藤氏の特別講演の様子

学生が主体となった特別講義(2)ブルースタジオ 大島芳彦氏

2022/01/10

リノベーションまちづくりのトップランナーである建築家である大島芳彦氏にお願いし、2021年11~12月に、数度に分け次の4つの取り組みを行った。
 
(1)ZOOMによる大島氏の作品についてのレクチャー(11月29日)
事前に学生から視察希望の作品を複数挙げ、これに対し大島氏に解説をいただくとともに、より優先度の高い作品の紹介を受けた。

ZOOMでのスライドレクチャー

 
(2)作品見学(12月2日~14日)
学生が各自、大島氏の作品を視察して回った。立地特性や周辺の住環境の特性を含め、作品を理解することができた。それぞれの場所で“なりわい”を行う住民の生活を生で感じることができた。

たかすなヴィレッジの様子



(3)ブルースタジオ事務所への訪問&ヒアリング(12月3日)
大島氏の作品の視察を経て、現地で感じたこと、疑問に思ったことを質疑した。作品への理解が深まったと同時に、大島氏の街づくりに対する思いを知ることができた。

ブルースタジオ事務所での訪問&ヒアリング



(4)名城大学での特別講義(開催日:12月17日)
特別講義は、前半の20分間で学生が打ち合わせの様子や、建築見学で感じたことを発表した。発表は大島氏の設計に対するコンセプトと、実際に現地で起きているコミュニティや、人と人の空気感などを写真を通して伝えることを心がけて行った。その後、大島氏の講義が1時間ほど行われた。内容は大島氏の祖父が土地を分譲する職に就いていたことから始まる。そこで、大島氏は線になってしまっている境界を面にかえることに注目する。家を買う時代から暮らしを編集する時代へとなっていること、リノベーションとリフォームの違いなど、興味深く濃密なものであった。
講義後は参加者からの質疑応答が行われ、店舗のプレイヤーの特徴や、ハード面での設計の工夫、キッチンカーを呼び込む仕組み、といった幅広い質問が出、大島氏は一つ一つに丁寧な回答をして下さった。
参加者は、コロナ禍のため学内のみで50名程来ており、建築学科に問わず別学科からの参加もあり、大島氏の話を聞いてみたいという学生が多いように思われた。大島氏は、リノベーションの第一人者であり、話す内容のスケールが大きく、考えの幅が広がった人が多いのではないかと思うと同時に、これまでにない貴重な機会だったと感じる。
(建築学科3年生 西本帆乃加)

学生発表の様子

特別講義の様子

熱弁に聞き入る学生たち

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