大学概要【2017年度実施分】自然環境教育をとおした生物環境問題についての問題解決能力の育成

農学部

自然環境教育をとおした生物環境問題についての問題解決能力の育成
実施責任者:日野 輝明

環境問題の解決を図るためには,身近な環境において自ら問題を見つけて仮説をたて、自ら調査方法を考えて実施し、得られた結果を自ら考察・検討し、新しい問題に応用していく実践能力を有する人材を育てていく必要がある。 本事業では,奥山でのシカの高密度化,里山林や耕作地の管理放棄,都市での緑地消失やゴミ処理についての環境問題に対して取り組むための実習地を整備し,そこでの動植物の調査を通して,学生の問題解決能力を育成することを目指している。

ACTIVITY

水田(田植え)実習(6/15更新)

2017/06/15

5月19日に行った1年生の実習では,豊田市古瀬間町で田植えと水生動物の採取を行いました。この水田は耕作放棄された場所を2年前に水田として整備したもので,農薬や肥料を使わない冬期湛水・不耕起による稲作を実践しています。学生たちは泥にまみれながらも田植えを行い,お米の大切さを知ることができました.また,いろいろな種類のカエルとオタマジャクシ,ドジョウやメダカ,ヒメタイウチやコオイムシなどの水生昆虫などを採集し,水田における生物多様性を体感しました.実習後は,耕作放棄地の問題や冬期湛水・不耕起栽培による生物多様性保全の効果について,各自が考えレポートをまとめました。10月にはまた実習で稲刈りをして,獲れたお米を味わう予定です。

干潟実習(6/15更新)

2017/06/15

4月14日と5月12日に藤前干潟で1年生の実習を行いました。最初に藤前干潟活動センターの職員の方から藤前干潟がゴミ埋立処分場計画から守られた歴史や干潟生態系の重要性についてのお話を聞きました.望遠鏡で干潟で採食するシギやチドリなどの水鳥を観察したあと,干潟に入ってスコップや網を使っていろいろな種類のハゼ,カニ,エビ,貝などを採取しました.採取した生き物は,センターに戻ってから,各グループで協力して名前を調べ,行動を観察したりスケッチを行いました。最後に採取した生き物を干潟に返し,沿岸沿いのゴミ拾いを行いました.実習後は,干潟の保全とゴミ問題をどう解決していくべきか、実習で学んだことをもとに,各自の考えをまとめてレポートを作成しました。

都市近郊林林実習(7/13更新)

2017/07/13

6月2日と9日に行った1年生の実習では,豊田市自然観察の森において野鳥の観察を行いました.まず施設のセミナー室で森林内に生息する鳥の囀りと姿の識別方法について学んだ後,ロッジに出て双眼鏡の使い方の練習をしました.その後4グループに分かれて,定められたルートを歩きながら鳥の種類と個体数を調べました.囀りの違いで鳥の種類を識別することの難しさを実感しながらも,2クラス合わせて28種類を記録することができました.ほとんどの状況において 「声はすれども姿は見えず」でしたが,ヤマガラの親がヒナに餌を与えたり,ツバメが池で飛びながら水を飲んだりする様子を観察するなど,野外における鳥の生活の一端を知ることができました.学生たちは8カ所のセンサスポイントにおいて記録した鳥の種数や個体数について,草本層から高木層までの階層ごとの植生被度との関係を分析し,鳥の生息にとって望ましい森林管理についてレポートをまとめました.

里山林実習(7/14更新)

2017/07/14

6月16日と23日に行った1年生の実習では,豊田市自然観察の森に設置してある里山林試験地で,樹木の樹高・胸高直径の調査,地表徘徊性昆虫であるオサムシと土壌動物の採集,地表環境(落葉落枝量・土壌水分・土壌硬度)の調査およびネズミの捕獲調査を行いました。この場所では,豊田市の許可を得て4年前に50mx50mの伐採を行い,伐採区では下刈りと落ち葉かきを毎年行う「管理区」と何も行わず遷移に任せる「放置区」,非伐採区では「落ち葉かき区」と何も行わない「対照区」の4タイプの試験区を設置して,動植物の比較調査を継続的に行ってきています。学生たちは,炎天下の中,藪をかき分けてトラップを仕掛けたり,高木の樹高を読み取るのに苦労しながらも,しっかりと調査を行いました。採取した土壌動物とオサムシは,6月30日と7月7日に実験室で顕微鏡下で同定作業を行いました。学生たちはこれらのデータと管理方法や環境要因との関係を分析して,里山林管理のあり方について夏休み中にレポートを作成することになっています。

下刈・落ち葉かき区

放置区

落ち葉かき区

対照区

水田(稲刈り)実習(11/29更新)

2017/11/29

10月6日に行った1年生の実習では,5月19日に別のクラスが田植えを行った豊田市古瀬間町の水田において稲刈りを行いました。この水田は,本事業プロジェクトによって耕作放棄された場所を水田として整備したもので,農薬や肥料を使わない冬期湛水・不耕起による稲作を実践しています。1年中水を張っていることで,雑草も生えにくいために除草剤の必要はなく,カエル・クモ・トンボなどの天敵も豊富なために殺虫剤の必要もありません.肥料には脱穀後に出た稲わらと米ぬかを散布しています.稲刈り時も田んぼの水を抜かないため,学生たちは泥に抜かったり足をはまらせながらも,楽しんで稲を刈り,刈った稲を天日干しのためにハザ掛けを行いました。また,水生生物の採取では,ホトケドジョウ,ヒメタイコウチなどの希少種を含めて多くの動物をを捕まることができました。実習後は,別クラスと同様に,耕作放棄地の問題や冬期湛水・不耕起栽培による生物多様性保全の効果について,各自が考えレポートをまとめました。また,後日有志学生によって脱穀と精米を行いました。

成果発表会(11/29更新)

2017/11/29

11月25日にS102で開催した生物環境科学科の公開講座にあわせて,1年生2クラス16班が「生物環境科学実習」で行ってきた調査結果を班ごとにまとめてポスター発表を行いました。学生たちは,各実習地における動植物の採集や観察の結果をもとに,干潟の保全とゴミ問題,里山林の維持管理,耕作放棄地と農薬の問題,土壌汚染のなどのさまざまな環境問題についてしっかりまとめて,一般の方にも熱心に説明をしていました。実習で取ったデータに自分たちで新たに取ったデータを加えて発表していた班もあり,学生たちが発表会に向けて意欲的に取り組んだ成果が現れていました.それぞれの発表について学科教員が全員で審査を行い,合計得点の高かった上位2つの班に図書券を進呈し,表彰しました。また,水田実習で収穫したお米をわずか4合ほどですが全員に配り,各自自分たちで田植え・稲刈りを行ったお米を味わうことができました.

都市緑地実習

2017/11/30

11月27日と29日に行った2年生の実習では,天白区の相生山緑地において,現地で自然保護活動をされている団体(ラブリーアース)の方たちと一緒に,陸生貝類とヒメボタルの採集を行いました.相生山緑地は,植生や地形が多様性に富んだ広大な緑地であり,かつヒメボタルの大規模な生息地でも知られています.また,陸生貝類は環境によって種類相が異なる環境指標生物で,ヒメボタルの餌となります.学生たちは班ごとに分かれて,緑地内の16箇所で,穴を掘ってヒメボタル捕獲用のトラップを仕掛けたり,土の中や低木の枝葉から小さな陸貝を熱心に探し出していました.採集した陸貝は,1週間後の12月4日と6日に実験室で顕微鏡下で同定を行って種類と個体数を調べました.また,自然保護活動団体の方のお話を聞いたり一緒に実習を行うことで,大学で学んだ自然に対する知識や経験が社会に出てからどのように活かせるかについて学びました.学生たちは得られた結果をもとに,陸貝-ヒメボタル-環境要因との関係を分析し,都市緑地における生物多様性と環境保全の意義についてまとめたレポートを作成しました.

里山林管理実習(1/18更新)

2018/01/18

12月22日と1月5日に,豊田市自然観察の森に設置してある里山林試験地において,1年生最後の実習を行いました.この試験地では,「里山林実習」でも書いていますが,4年前に50mx50mの伐採を行い,伐採区では下刈りと落ち葉かきを毎年行う「管理区」と何も行わず遷移に任せる「放置区」,非伐採区では「落ち葉かき区」と何も行わない「対照区」の4タイプの試験区を設置して,動植物の比較調査を継続的に行ってきています.しかしながら,「放置区」では植生の回復によって低木が密生して安全な実習を行うことが難しくなってきたため,12月半ばに業者委託によって低木の伐採を行いました.男子学生は伐採後に残された幹や枝葉を試験区外に運び出す作業を行い,女子学生は管理区で毎年行っている下刈りと落ち葉かきを行いました.例年は,午前に水鳥の観察を行って,午後に作業を行うのですが,今年は伐採後の整備のため午前からの作業になり,学生たちは疲労困憊の様子でした.しかしながら,学生たちの頑張りのおかげで,上級生が整備してきてくれた試験地を,次年度の1年生のために今年も整備を行うことができました。

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