大学概要【2026年度実施分】多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト

外国語学部

多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト
実施責任者:宮崎 新

人は、人と、社会とつながることで社会性を維持することができます。本プロジェクトではコミュニケーション研究を専門とする宮崎ゼミ生を中心に『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と『久遠チョコレート』の取り組みを取り上げ、「働くこと」からの社会参加について学び、その成果を発信していきます。

ACTIVITY

『TOUTEN BOOKSTORE』での選書ツアー体験

2026/06/24

1.事前学習&事前準備
25年度の活動に続き、本プロジェクトでは「多様な働き方デザイン」という視点から、社会とのつながり方について学んでいます。今年度最初の活動として、『教養演習』(宮崎ゼミ)の一年生12名が、名古屋市熱田区の沢上商店街にある『TOUTEN BOOKSTORE』(https://www.touten-bookstore.net/)で選書ツアーを実施しました。


選書ツアーとは、学生が実際に書店を訪れ、大学附属図書館にまだ所蔵されていない書籍の中から、自身の興味や研究に関連するもの、他の学生に薦めたいと思うものを選ぶ活動です。本屋に行くことそのものが学生にとっての非日常になりつつあるなか、過去の活動においても、実際に足を運ぶことで視野が広がったという声が聞かれました。


そこで今回は、書店の店舗数が減少し続ける今日において、個人経営の「本屋」を開くことの社会的意味(働き方デザイン)について考えるため、訪問に先立って事前学習を行いました。学生たちは、TOUTEN BOOKSTOREに関するウェブ記事や動画を通して、「読点(TOUTEN)」を店名に冠する理由や、商店街に立地する意義について学びました。また、比較のため、自分たちの生活圏にある書店にも足を運び、それぞれの店舗づくりにどのような特徴や工夫がみられるのかを観察しました。


2.選書体験@TOUTEN BOOKSTORE
大手書店と違い、商店街の古い時計店をリノベーションしたTOUTEN BOOKSTOREは、10名以上の学生が入るとすぐに店内がいっぱいになってしまいます。そこで、2026年6月20日(土)の開店前に店舗を訪れました。オーナーの古賀詩穂子さんからTOUTEN BOOKSTOREに込めた思いを伺った後、選書ツアーが始まりました。


活動中には選書だけでなく、事前学習の中で生まれた疑問についても古賀さんにインタビューを実施。「お店に置く本を選ぶ基準」「本屋の魅力」「本屋をやっていて良かったこと」「利用者の客層」など、一つ一つの質問に丁寧に答えていただきました。学生にとっては、書店の方とじっくりとお話をすること自体が貴重な体験になりました。


学生たちは、それぞれ異なるテーマに取り組んでいます。教育、日本社会の時事問題、動物の権利、心身の健康など興味の範囲はさまざまです。必ずしも自分のテーマに合致する本が見つからない場合でも、古賀さんに相談し、お薦めの本を紹介していただくことで、自分のテーマを考える視点が必ずしも一つではないことに気づくことができました。


また、TOUTEN BOOKSTOREでは、一階の書籍スペースに加えて、二階でさまざまな展示が行われています。学生が訪れた際には、パレスチナのこどもたちの写真展や絵画展が開催されていました。こうした展示や募金による支援活動を実際に目にしたことで、「本屋」が本を販売する場所にとどまらず、社会との関わりを生み出す場でもあることを実感する機会となりました。


3.学生の声:まとめ
予定していた2時間はあっという間に過ぎ、今回の選書ツアーは、学生にとって本を選ぶこと以上の学びの体験になったようです。特に振り返りでは、さまざまな「つながり」に気づいたという声が多く聞かれました:


・今回の選書ツアーを通して、本を選ぶ楽しさだけでなく、本屋という空間が新しい知識や価値観、人のつながりを生み出す場所であることを実感できた。


・本屋は本を売るだけでなく、地域とのつながりを大切にしている場所だと感じた。


・スタンプカードの特典を他のお客さんに譲るお客さん同士の繋がりがあったり、募金スペースがあったり、人の繋がりがないとできないようなことが行われていた。


・印象に残ったのは空間が与える影響の大きさだ。見出しの有無や広がる香り、照明などによって、本屋はただ本を購入する場所ではなく、人々が共存しゆっくり時間を過ごせる場所に変わる。


・「選ばない本の基準」で、ヘイト本や人を傷つける本、不安を煽るもの、真偽の曖昧なものは置かないなど古賀さんの明確な軸があることを知り素敵だと思った。


・(お客さんが本を選ぶ際)自身のかなり深いプライベートな部分に触れて相談する方が多く、それを親身に聞く古賀さんはカウンセリングのようなものだと仰っていたこと。


同じ空間でそれぞれが本を探す中で、自分の興味のある本を見つける喜びだけでなく、クラスメイトの興味関心に近い書籍を見つけて共有し合う場面もありました。こうしたやり取りを通して、学生同士の新たなつながりが生まれたことは、一年生のこの時期の体験として非常に貴重な成果であったといえるでしょう。

選書ツアースタート

古賀さんへのインタビュー

新しい切り口のアドバイス

深くて温かい2時間の記録

(続)『TOUTEN BOOKSTORE』での選書ツアー体験

2026/10/12

1.卒論研究の一環としての選書ツアー
一年生の『教養演習』で行った選書ツアーでは、TOUTEN BOOKSTOREを訪れて本に触れるとともに、社会で「働くこと」について考え始めるきっかけ作りを目的としていました。同じ活動でも、入学直後に行うのと、大学生活の中盤以降に行うのとでは見えてくるものが大きく異なるでしょう。


今回で2年目となる『ゼミナール』での本プロジェクトをより豊かなものにするため、新たに選書ツアーを最初の活動として取り入れました。宮崎ゼミに加わった3年生は、先輩たちの活動や関連資料を参照しつつ、「社会とつながることと働くこと」というテーマについてコミュニケーション学の視点から考察しました。


議論を重ねる中で学生たちの意見に表れてきたのは、現代社会における本屋の存在意義は、本の売り買いにとどまらない「居場所」としての価値にもあるのではないか、という視点でした。オーナーである古賀詩穂子さんがメディアで発信する考えに触れ、本屋は人と本との出会いや利用者同士の交流の場であるだけでなく、古賀さんと地域との接点にもなっているのではないか。こうした互恵的な関係性にも目を向けながら、事前学習を進めました。そして何よりも、久しく足が遠のいていた本屋を訪れる機会に、多くのゼミ生たちが期待に胸をふくらませました。


2.安心して自分の興味を深掘りできる空間
選書ツアーの意義は、「本選び」だけにとどまりません。実施当日の7月25日(土)には、4年生も数名参加することができました。「ゼミ室」を持たない外国語学部生にとって、普段の大学生活の中で先輩・後輩が気軽に研究テーマについて語り合う機会を設けることは、なかなか容易ではありません。そうした学生たちにとってフラットに交流できる場、つまり、学びのコミュニティがこの活動を通して生まれることには大きな意味があります。


現地での選書は、事前学習からの期待に応える刺激的なものでした。独自のテーマに沿った本の陳列から伝わるメッセージ、古賀さんとの会話を通して知る本に対する思い、そして普段は気に留めることのないほかの来店者の過ごし方。学生たちはそれぞれ、熱心に本を選び続けたり、腰かけてゆっくりと本に目を通したり、古賀さんとの会話を楽しんだりしていました。限られたスペースだからこそ、一人ひとりが思い思いの時間を過ごしながらも、同じ空間にいる互いの様子が自然と目に入ります。寄付されたドリンクチケットを通して、見ず知らずの人々の思いやりに触れた学生もいました。


ゼミでは、学生がそれぞれ選んだ事象をテーマに研究を進めています。マイノリティ性や当事者性に関わるもの、センシティブな社会課題を扱うものも少なくありません。そうしたテーマについて安心して話し合い、選書中に「これ〇〇(ゼミ生)のテーマに近いんじゃない?」と見つけた本を共有する場面が何度もありました。このようなやりとりこそ、TOUTEN BOOKSTOREが掲げる「セーファースペース」(safer space)の理念(https://www.touten-bookstore.net/about)が具現化されたものでしょう。


3.学生の声から考える、本(屋)を通した「他者」との出会い
学生たちは、選書ツアー後に改めて「社会とつながることと働くこと」について振り返りました。多くのコメントに共通したのは、本屋が目当ての本を買うという目的以上に、異なる価値観や人とのつながりに出会う場所にもなり得る、という気づきでした。


<学生の声>


「物語や小説だけでなく、ジェンダーや平和など今の時代にしっかりと向き合って考えるべきであるテーマの本がたくさん取り扱われていて、自分の興味や関心が多く目に入るスマホからの情報だけでなく、このような本屋さんにきて今起きていることについて目に入った部分から少しずつ取り入れていくことがとても重要なのではないかと考えました。」


「古賀さんが出演されているYouTubeでは、「本屋は息継ぎをする場所」と紹介されている。その言葉のように、気負って選ぶのではなく、誰かがその時必要とした情報に触れる機会が得られる場所が書店であり、本という情報伝達媒体が持つ役割なのではないかと思った。」


「実際にスタンプカードでドリンクを頂戴したが、一枚のカードをいっぱいにするには、15,000円相当のお金が必要になるらしい。カードを埋めるのは、決して簡単でも安価でもないが、それでも柱に複数貼られていたカードを見つめてみると、この書店に来る人の優しさや、優しくさせてしまう古賀さんのお店づくりが確かに存在することを痛感した。」


「古賀さんに、自ら本屋を立ち上げ、店の運営を一人で担いながら、これほどまでに人と社会をつなげるために行動できる原動力は何なのかと質問したところ、「本や本屋に対する『好き』が原動力になっている」とおっしゃっていた。自分のやりたいことを突き詰め、さまざまなことに挑戦しながら、街の人のために社会とつながる場を生み出している古賀さんの姿は、本当にかっこいいと感じた。」


本というメディアが時空を超えた「他者」との接点を生み出すのであれば、本屋は、普段の生活では交わることのなかった人々が出会い、関わり合う場にもなるでしょう。こうした他者との具体的な関係性のあり方を、学生たちが実体験から学ぶことができた一日となりました。

選書に没頭するゼミ生たち

古賀さんとの会話を楽しむゼミ生たち

思いやりの循環「やさしいドリンクチケット」

支援活動も積極的に行われている

先輩・後輩一緒に集合写真

選書体験以上の一日に

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