特集名城大学のAI&ロボット研究
長い伝統と高い研究力を強みに、産業界で活躍する人材の育成を通して社会に貢献してきた名城大学理工学部。AIとロボットに関わる、注
福田敏男教授研究室
ロボット・メカトロニクスをキーワードに、さまざまな研究を行っている。(下記は研究の一部)
インテリジェンスロボットのための環境適応制御/マルチロコモーションロボットによる移動形態の形成/歩行補助のための杖型ロボット/ヒューマンマシン協調型ロボティクス/マイクロロボット、マイクロメカトロニクス/バイオマイクロマニピュレーションシステム
福田敏男教授
いずれAIが人間の能力を超えるのではとの意見もありますが、わたしは懐疑的です。ゲームや画像判断のように、AIは、膨大な データから結果を導き出すのはとても得意。けれど、人間や自然などの「不特定要素」が絡むと、AIが解析できる範囲には収まりきらず、一気に予測の精度が下がります。また、目の前にある「丸い」が、「円」なのか「球」なのか、それを人間は瞬時に判断できるけれど、AIはまだその段階にありません。人間の創造性は、みなさんが思っているよりずっと優れているとわたしは思いますよ。
学生には、テクノロジーを使うだけでなく、作るほうの視点を身につけてほしいですね。クリエイティブな視点は、機械に代替されない確かな能力。失敗を重ねて、人間力と学問の幅を広げてほしいと思っています。
福祉ロボット(リハビリロボット)の研究・開発
わたしが名城大学で行っているのは、歩行補助のための杖型ロボットをはじめとする、リハビリ分野におけるAI・ロボットの研究・開発です。本研究におけるAIの役割は、利用する患者の状況に応じて、力加減や移動速度を判断し、 その指示をロボットに伝え、実際に動かすこと。痛いと感じる強さや、重いと感じる重量は一人一人異なるため、それらを判断する能力がAIに求められます。
新たなAIを開発する際、重要となるのは知能指数のデザインです。どのような学習をさせて、どのような結果を得たいのか。ゴールをイメージしながら構築することが大切です。
現在は、病院などの協力を得て実際にロボットを使用した患者のデータを収集しています。人がモノを握るときの強さ、左右の力の違いなど、多くの患者のデータをもとにAIが機械学習を繰り返すことで精度を高め、使い勝手の向上を図っています。
大原賢一准教授研究室
ロボットをつくるためには、ハードウエアやソフトウエアをはじめとする各要素の組み合わせや、どのようにシステムを構築していくかが重要なポイントとなる。本研究室では、複雑なロボットシステムを俯瞰的にとらえ、システムを構築(デザイン)しながら、再利用性・汎用性の高い知能ロボットの創出を目指している。
キーワードは Cars that think and communicate.
コンピューター囲碁が人間に勝ったりコミュニケーションロボットと会話を楽しめたりといった面が注目されていますが、現状では、AIが人間の仕事を奪うレベルにまで達しないのではと考えています。囲碁もロボットも 、クラウドにアクセスし膨大な量のコンピューターから回答を得るのが前提なので、社会で活躍できるAIが登場するのはまだ難しそうですね。解析や分析が得意であっても、突発的なひらめきや、アイデアを生み出すという点では人間にはかなわないのではないでしょうか。
名城大学理工学部に来て4年がたちますが、企業出身と大学出身の先生のバランスのよさに魅力を感じています。会話を通じて違う視点を得られますし、企業などとのコラボレーションも非常に進めやすい印象がありますね。
研究者、エンジニアとして社会の役に立つものづくりを
本研究室では、他大学や企業との共同研究に力を入れています。例えば「住環境のロボット化に関する研究」。キャスターや家具にロボット機能を持たせ、音声認識でテーブルが動いたり、自分でロボット空間を構築できるような技術を開発したりするものです。
そのほかにも、医師と協力して内視鏡の検査を支援する画像処理技術を開発したり、ドローンを使ったインフラの検査装置を開発したり。既存の枠にとらわれず、社会に役立つものをつくり続けていきたいと思っています。
コンテストを通じて学生のスキルアップを狙う
まずは5月に名城大学で開催される「ロボカップ@ホーム ジャパンオープン」と、7月に名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)で開催される「ロボカップ世界大会」に出場予定。12月には、コンビニ業務を自動化するためのロボット技術を競う「FUTURE CONVENIENCE STORE CONTEST」に参加します。
コンテストへの参加は、学生たちが自発的にロボット製作の技術を身につけるいい機会であり、モチベーションの向上にも役立っています。