大学概要【2019年度実施分】杉原千畝ボランティア・ガイド育成プログラム
都市情報学部
2018年10月、愛知県教育委員会は名古屋市の瑞陵高校(戦前の県立第五中学校)に、卒業生で人道外交官だった杉原千畝の銅像を建立し、60枚のパネルを作り、杉原千畝広場「センポ・スギハラ・メモリアル」を完成させた。責任者と法学部のGreen准教授がパネル作成に協力した。
文科省は、2018年から小学校、19年から中学校で道徳の教科書化を推進し、高校でも道徳教育を強化している。第二次大戦中にリトアニアで6000人のユダヤ人を救った杉原千畝も、18年から小学校、19年から中学校の道徳の教科書で取り上げられる。
2019年度教養教育科目「国際化時代の人間と社会」でホロコーストからユダヤ人を助けた人々を教える。一方で愛知県と連携して、最新の研究を含んだ杉原千畝の事績をボランティアでガイドできる人材を育成する。名城大学にボランティアの窓口を立ち上げ、依頼があればガイドが無料で瑞陵高校に派遣される。ボランティア・ガイドをドーム前だけでなく天白キャンパスの国際関係学研究室でも育成する。
2020年度から実施責任者は学芸員養成課程の博物館実習を担当する予定である。その準備も兼ねて、学生を参画させて、杉原千畝ボランティア・ガイド用の教材を作成する。
2019年度の実施計画
10月末、ボランティア・ガイド育成プログラム開始(詳細は後日連絡します)
ACTIVITY
第1回講演会のお知らせ
2019/06/04
【2019年度杉原千畝ボランティア・ガイド育成プログラム 第1回特別講演会】
講演者:シモナス・ストレルツォーヴァス准教授(シャウレイ大学、リトアニア)
演 題:「スターリンとヒトラーのはざまで:リトアニアの悲劇1939-53年」
(英語、日本語通訳なし)
日 時:2019年7月6日(土)14:00-16:00
場 所:名城大学ナゴヤドーム前キャンパスDW207教室
〒461-8534 愛知県名古屋市東区矢田南四丁目102番9
地下鉄名城線ナゴヤドーム前矢田駅下車徒歩3分
(駐車場がございません。公共交通機関でご来場のほどお願いいたします。)
入場料:無料(事前申し込みなし)
連絡先:稲葉千晴 e-mail: chiharu@meijo-u.ac.jp
The First Special Lecture:
The Encourage Program of Sugihara Chiune Volunteer Guide in 2019
Lecturer: Associate Professor Simonas Strelcovas (Siauliai University, Lithuania)
Title: Between Stalin and Hitler: Tragedies of Lithuania in 1939-1953
(in English, no Japanese translation)
Date: 14:00-16:00, Saturday 06 July 2019
Place: Lecture Room DW207, Nagoya Dome Campus, Meijo University
Address: Yada Minami 4-102-9, Higashi-ku, Nagoya 461-8534
Way of Visit: Get off the Nagoya Dome mae Yada Station, the Meijo Line (Metro)
Caution: There is no parking. Please come to the lecture by public transport
Inquiry: Chiharu Inaba, chiharu@meijo-u.ac.jp
7月6日(土)第1回特別講演会に73人が参加
2019/07/10
講演者
リトアニア シャウレイ大学准教授、一九七二年リトアニア生まれ。元スギハラ・ハウス(旧在カウナス日本領事館)主任研究員。第二次大戦中の欧州難民問題を研究。
「スターリンとヒトラーのはざまで ――リトアニアの悲劇 1939~1953年」
バルト三国の南に位置する人口三百万人の小国リトアニアは、第二次大戦期に大国の狭間で苦しめられた。一九三九年八月二六日、それまで敵対関係にあったスターリンとヒトラーは、独ソ不可侵条約を締結して手を結んだ。その秘密議定書で中欧諸国を独ソの勢力圏に二分割することが決められ、翌月にポーランドがドイツとソ連によって占領された。
リトアニアは議定書によってソ連の勢力圏に含められたため、一〇月にスターリンが相互援助協定の締結を迫り、二万人の赤軍を同国に駐留させた。その代わりに「親切にも」独立時にポーランドに奪われた古都ヴィリニュスを返還した。リトアニアは歴史的な首都を取り戻してつかの間の安寧を得た。
第二次大戦が勃発するとリトアニアは新たな困難に直面した。ユダヤ人を含む大量の難民がポーランドから逃れて入国してきたのだ。冬の寒さに耐えられる難民キャンプを用意し、食料・衣服・医療品を支給するだけの予算が確保できない。それでも政府は難民支援に尽力した。
四〇年春、ドイツはオランダやフランスを打ち破り、西ヨーロッパを自らの支配下に置いた。ヒトラーの西欧における勢力圏拡大を目の当たりにしたスターリンは、ソ連勢力圏への支配力を強化するため、六月半ばバルト三国を軍事占領する。七月半ばにはリトアニア最高会議がソ連邦への加盟を議決し、八月初旬にソ連側が受け入れた。干戈を交えることなくリトアニアはソ連の軍門に屈して併合された。併合反対派とその家族二万人が四一年六月半ばにシベリアに流刑された。
その一週間後に独ソ戦が始まると、独軍に呼応してリトアニアで反ソ蜂起が起き、暫定政府が樹立された。同国はドイツによって解放されたように見えたが、内実は違った。ナチスは暫定政府を無視して、ユダヤ人住民二十万人の九割を虐殺してしまう。さらに国民六万人を徴用工として強制的にドイツで働かせた。リトアニアは独軍に利用されただけで、独立国家の体をなしていなかった。
四四年夏、赤軍の反攻により独軍の東部戦線は崩壊し、リトアニアはソ連に再占領された。祖国が解放されたとスターリンは宣言したものの、リトアニア人にとっては再び支配者が入れ替わっただけで自由は奪われたままだ。三万人の若者が母国の軍服を着てパルチザンに参加して、スターリンが亡くなる五三年まで占領軍と戦った。
ソ連側も黙ってはいない。林に隠れて抵抗するパルチザンや、それを支援する村人たちに対して徹底的な弾圧をおこなった。三万人が命を落とし三十万人が投獄・強制労働の刑に処せられている。だがリトアニア人はくじけない。再度独立を獲得する一九九〇年まで、民族自立の気構えを保持し続けた。
趣向を変えながら11回目の海外研修
2020/01/24
都市情報学部の稲葉千晴教授(国際関係論)が主催する「ホロコーストと杉原千畝研修プログラム」が8月2?13日の日程で行われ、学部・研究科を超えた14人が参加し、リトアニアとポーランドの学生たちと交流して帰国しました。
海外でホームステイをしたいと希望しても、言葉の壁と高額な費用の前で躊躇する学生が少なくありません。一方で、日本語を学ぶ外国人学生にとっても、日本は物価が高く、留学のハードルが高いのが実情です。稲葉教授は長年のホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺)研究などで培った海外人脈を使い、短期間ですが双方の学生が交流するプログラムを夏休みに続けています。今年は11回目になります。
今回は、リトアニアとポーランドで、ホロコーストと、第二次世界大戦時のリトアニア領事代理杉原千畝(1900?1986年)に関する資料館などを見学するのが主眼です。
一行はラトビアから入り、首都で世界遺産のリガの街を見学。リトアニアでは、古都カウナスで、杉原が「命のビザ」をユダヤ人難民に発行した旧日本領事館、ポーランドでは、南部のアウシュビッツ博物館などをそれぞれ訪れました。
カウナスでは、名門ビータウタス・マグヌス大学の学生の案内で、杉原の足跡をたどりました。旧日本領事館は杉原記念館となっており、「命のビザ」を発行した杉原のジレンマに思いをはせました。8月5日の夕食は、日本語を学ぶ同大学の学生6人とリトアニア料理をともにしながら、互いの国の文化などについて話し合いました。
ポーランドでは、学術交流協定校のワルシャワ大学の学生が案内し、ワルシャワ市内や、アウシュビッツ見学の起点となるクラクフ市内を巡りました。7日の夕食は同大学日本学科の学生ら7人と、日本のアニメーションやゲーム、好きな日本料理 などの話題で盛り上がりました。SNSで情報交換する仲になった学生もいました。
ほとんどの学生は11日、クラクフからアウシュビッツに行き、ユダヤ人強制収容所の跡を時間をかけて回りました。
理工学研究科の梅田さん「お薦めしたい内容」
2020/01/24
旅を終えて梅田大知さん(大学院理工学研究科情報工学専攻修士課程2年)は「もともと、私は海外の現地学生と交流したい、欧州の歴史を学びたいといった2つの目的があったため、今回のプログラムに参加しました。現地学生との交流前、私は英語に自信がなく、うまくコミュニケーションを取れるか不安でした。しかし、ほとんどが日本語を勉強している学生だったため、気軽にコミュニケーションできました。その結果、各国の学生と交流を深めることができ、現地の考え方や日本との違いを学ぶだけでなく、多くの学生と友人になることができました。さらに、実際に中欧諸国を訪問し、アウシュビッツなど歴史的に重要な場所で歴史や文化を直接学ぶことで、資料では分からない知見を得ることができました。今回の研修で、私の目的を満たすことができ、大変有意義な体験をすることができました。この研修は私のように海外に興味はあるが、不安も持っている学生にぜひともお薦めしたい内容でした」と感想を話しました。
稲葉教授は「自分で考えなさい」と学生に繰り返し強調し、独力で往復の航空券やポーランドでの列車、クラクフのホテルの予約をするように指導しました。今回の研修を受けた学生たちにとっては、海外を自力で旅する「地球の歩き方」入門編になりました。