大学概要【2018年度実施分】橋の模型づくりを通じたエンジニアリングデザイン教育

理工学部

橋の模型づくりを通じたエンジニアリングデザイン教育
実施責任者:渡辺 孝一

〈ジャパンスチールブリッジコンペティション2018(JSBC2018)に向けて〉


JSBC2017(岐阜大会)での模型完成記念写真


橋模組み立ての様子(昨年度大会)今,理工学部の学生には,エンジニアリングデザイン力が必要とされています.本活動は,学生自身が橋梁の設計,製作と架設を行い,ものつくりの真の楽しさを経験します.この取り組みの目的は以下のようになります.
●模型製作を通じて,基本的な工学知識の応用力,問題解決能力を養う
●エンジニアリングデザイン力を養う
●参加学生の協調性を育む
●学生や参加者間の交流を図る
●製作の過程における遂行能力を通じて,社会人基礎力を育む
学生は過去の大会で得た反省を上級生から継承し,さらに新しい創意工夫をこらして夏に開催される日本鋼橋模型製作コンペティションJSBC2018に参加します.昨年度大会では部門で2位入賞でした.いよいよ今年は総合優勝を目指して頑張ります.

関連リンク

ACTIVITY

ブリコン2018がスタートしました

2018/06/13

ジャパンスチールブリッジコンペティション,通称「ブリコン」2018がスタートしました.

 4月上旬,参加者を募るための初回説明会を行いました.実施責任者の渡辺孝一准教授からプロジェクトの主旨説明がありました.続けて,上級学生リーダー(4年小島 諒,渡辺研究室所属)から昨年度の橋模型を使って概要説明があり,参加した学生から活発な質疑がありました.プロジェクトの趣旨を理解し,賛同した社会基盤デザイン工学科の学部3年生ら16名(男子学生12名,女子学生4名)がJSBC2018に参加することになりました.こらから本格的に活動を進めていきます.

JSBC2018初回説明会に参加する学部3年生ら

昨年の作品模型を説明する学生リーダー

プロジェクトの主旨説明資料に見入る学生ら

チームの顔ぶれが決まってようやく活動開始

2018/06/13

JSBC2018参加メンバーが決まり,初回ミーティングを行いました.今回は16名を2つのチームに分けること,それぞれのチームリーダーを選出することが目的です.同じ学科に所属していながら,名前は知っていても互いにほとんど会話したことがない学生が少なからず存在します.しかし,各自の自己紹介が終わるころには,互いがどんな思いでこのプロジェクトに参加したのかが分かり,緊張がほぐれた様子でした.2チームそれぞれ1名のリーダーを選出し,当面の活動日程を調整しました.本格的な活動は,GW明けから開始することになりました.

自己紹介する参加学生ら

チームリーダー選出の様子

各自の時間割を考慮し当面のスケジュール調整をする学生ら

ものづくりに必要な工作機械を習得し技術を向上

2018/06/13

 課外時間に大型構造実験棟に集合して,ものづくりに必要となる各種工作機械についてメンバーが実践を重ねています.

 ブリッジコンペティションで要求される鋼の橋は,支間(橋の長さ方向の距離)が4000mmの規定があります.また,橋を構成する部材(一つひとつのパーツ)は,最長800mm以内を組み合わせる制限も設けられているなど,細かなルールを守って製作を進める必要があります.(今年のルールはまだ公開されていないため,昨年ルールを踏襲して作業しています.)部材の材料は「鋼」であることから,文房具用のハサミやカッターで加工することは到底出来ません.従ってプロ用の工作機械を使います.孔明け加工に用いるボール盤や鋼材を切断するコンターマシン,研磨を行うディスクグラインダー,接合のための半自動溶接機械など,目的に応じて多種多様です.

 工具の呼び方すら知らない学生もいる中,指導教員や上級生の監督のもと,保護具を装備して安全を確保しながら全員が実践を積み重ねています.この過程を通じて,図面で描いた部品を「形」にするために,どれだけの手間が必要となるかが理解できるようになります.また,こうした作業を経験する中で,「工程を効率化するためには,どのような図面を描けば良いか」について議論し,改善につなげるスキルが修得できます.

 また,昨年度製作した橋を利用して,実際の組み立て作業を上級生がメンバーの目の前で実演しました.メンバーは完成イメージや組み立て時の段取りを大まかに掴むことができ,目標がより明確になりました.

溶接機械の説明を受ける学生

はじめてアーク溶接を行う学生

溶接ビード(熱で溶けた金属接合部)の仕上がりを見て,上達のコツを伝授

ベルトサンダーの使い方を教わる学生

ディスクグラインダーによるバリ取りを練習する学生

コンターマシンによる鋼材の切断を行う学生

先輩による去年の作品の組み立てを確認するメンバーら

練習用設計図面を参考にして鋼材加工を実践

2018/06/26

 本番の設計や製作に取りかかる前の準備として,鋼材加工の練習を数段階のレベルを設定して実施しました.初級編では,部材の切断と指定された場所への穴あけが主な課題としました.切断代(刃物の削り代)の考慮や,部材を斜めに安定して切断する技術の習得を目指しています.各課題の完成後はメンバーそれぞれで指定寸法との誤差を求め,ランキング付けしました.加工精度が高かったメンバーは累積誤差が1.0mmと非常に高精度に仕上げることができました.
 上級編では,初級編・中級編で作成した部材にガセットを取り付け,ボルトにより接合する構造の製作を行いました.ガセットの取り付けには溶接を用い,熱影響での変形を考慮するなど,それぞれ加工精度が向上するように取り組むことが出来ました.大会本番で使用する橋梁模型では,1部材のわずかな誤差が積み重なると,大きな歪みとなって完成形状に大きく影響します.この様な練習課題に各個人が取り組み,加工精度を上げることは非常に大切です.

設計図に従って罫書き(下書き)する様子

設計図に従って罫書き(下書き)する様子

研磨工具の扱いの指導を受けるメンバー

どのように切断すると効率が良いか?上級生の助言に聞き入るメンバー

正確な孔明けを行うには,位置決め精度が重要

溶接トーチの扱いも様になってきました

出来栄え(誤差)の程度をメンバーで競い合いました

課題の完成部材の精度に対して,指導教員のアドバイスを受けるメンバー

橋の設計完了!橋づくりがいよいよスタートします

2018/06/26

 橋の設計方針がまとまり,いよいよ本格的なものづくりの作業がスタートしました.
 橋の骨格(一つひとつの部品のこと,実際には「部材」と呼びます.)には,例年通り角パイプ材を使用することになりました.橋の支間4000mmに対して,長さの異なるそれぞれの角パイプをつなげた総延長は1橋あたり35,000mmにも達します.この他に部材連結部分に使用する鋼板も必要です.角パイプや板材は市場に流通している規格サイズの鋼材を利用します.
 設計図は橋の接合部分が完全に連続している条件で構造計算を行い,目標とする変形性能を推定しています.しかし,橋を構成する部材一つひとつを「どのような形状から組み立てるか?」については,何通りもの「解」が存在します.この難題に対してチームメンバーは,上級生のアドバイスや過去の作品,コンペティションのルールブックを参考にしながら何度も討議と試行錯誤を行いながら解決していきます.
 最初の課題は,構造力学的に理にかなった形状で,かつ,組み立て効率の良い「部材」を,如何にして導き出せるかということです.エンジニアリングデザインの力量が問われます.

概略図面に対して議論を重ねるメンバー(Bチーム)

様々な意見を交わしてアイデアを具体化していきます

PCソフトで作成した3D画像を参考として部材の切断位置を議論

CG画像と実物では違いがあることを踏まえて試行錯誤の連続です

部材連結部分の細かな部材を加工するメンバー

作業中は無駄口なく,機械の音だけが響きます

加工手順について,メンバー同士も活発に意見交換します

図面だけで理解できない部分は,過去の模型橋を参考にして想像力を膨らませます

役割分担が明確になってものづくりの効率的な流れが出来てきました

2018/07/10

橋を構成する部材の元になる鋼材が搬入されました.ようやく本格的な「橋」づくりがスタートしました.部材は輸送可能な長さ制限から1本あたり4000mmの長さにプレカットした状態で実験室に搬入しました.いよいよ目的の形状に加工していくことになります.まだ,橋らしい「形」は見えてきませんが,確実に完成に近づいている気迫が伝わってきます.

意見を交わしながら疑問点を解決していきます

丁寧に罫書きを行えば部材の加工精度が自ずと向上します

罫書き線に合わせて慎重に切断していきます

担当がそれぞれ違ってもお互いに確認しながら作業を進めます

グラインダーによる加工も手馴れてきました

切断や孔明けが終わった段階で一つ一つ加工精度を確認していきます

加工のための工作機械の「癖」も分かってきたようです.

溶接の腕前も格段に向上しています

作業が終わる毎に進捗を作業ボードに記録していきます

まだ,「橋」の形は見えていませんが完成が待ち遠しいです

設計した橋が立体的な「形」になってきました

2018/08/03

これまでの活動を通じて,橋を構成する部品を個別に製作してきました.部品が完成に近づき,それぞれを接合することで,橋の「形」が見えてきました.完成にはまだまだ手を加える必要がありますが,「形」が見えてきたことで,メンバーの志気も高まっていきます.一方,講義の合間を利用して橋を効率よく組み立てるための「架設手順」について,小さな模型を使ってシミュレーションも進めています.役割を分担することで,効率的にプロジェクトを推進することができるようになってきました.

模型を利用して橋の組み立て方法を考案中

組み立て方法は無限通りのため,議論は簡単には進みません

橋のパーツを仮組みするためのミーティングの様子

広い実験作業空間を利用して架設場所を確保しました

テープによる仮固定ですが,橋の形が見えてきました!

「橋」が完成に近づくにつれて様々な課題が明らかに

2018/08/29

 順調に進んできたプロジェクトも佳境にさしかかり,ばらばらだった部品を組み合わせることで「橋」として見られる状態となった矢先,トラブルが噴出しています.仮組み段階ではテープで固定していた場所を,ボルトなどの接合部品に置き換えてみると設計図面よりも誤差による「ひずみ」が大きくて,歪んだ「橋」になることが判明しました(実際は,形にならないほど重傷).練習では製作誤差もシミュレーションしていても,異なる部材通しの立体的な誤差の想定することはかなり難易度が高いことを実感できました.こうした誤差を修正する作業を重ねるうちに断面を削りすぎて強度不足になったり,間違った組み合わせのパーツを溶接で一体化するミスをしたり.こうした様々なトラブルを乗り越えながらプロジェクトは進みます.
 夏休みはメンバー全員で集中してプロジェクトが進められると期待していましたが,実際は,メンバーそれぞれがインターンシップやアルバイトでスケジュール調整が難航し,全員が集まって作業が進められないという課題も浮かび上がってきました.事前に予想してスケジュール調整していたものの,トラブル対応で時間を割かれた結果,大幅に時間が不足しています.当初余裕だったメンバーに焦りの色が見えてきました.

継手部をテープで止めた段階では「橋」になっています

撮影方向を工夫すると「橋」らしく見えます

接合誤差の修正作業に追われるメンバー

部材と部材の接合状況を確認するメンバー

金属加工と平行して塗装手順について討論しています

塗装の工程を入念に確認するメンバー

美しい仕上がりになるようペンキの配合比率を変えて試験しました

塗装後の表面をチェックするメンバー

完成に向けて必要なパーツの製作を進めるメンバー

大会に向けて作品の仕上げに全力で取り組む

2018/09/10

大会を目前にしても作業時間が十分に確保できない中,橋づくりの作業が最大の山場を迎えています.この窮地を乗り切るため,過去に大会に出場した経験のある上級生がメンバーに助言しながら部品の作り直しや,形状の矯正などを行ってなんとか完成に近づけていきます.形として完成させた後に「美観」を高めるための塗装が残っています.塗装は,金属の塗装表面の下地処理を行った後,塗装を行い,十分に乾燥させる各工程が必要となります.橋の「完成」を目指して気の抜けない作業が続きます.

上級生も加わって修正方法を協議するメンバー

参加できるメンバーを総動員して作業するメンバー

なんとか橋を完成させることができました(Aチーム)

Bチームも橋を完成させることが出来ました

続いて塗装するための部品の番号付けを進めるメンバー

塗装のために手間をかけて下地処理をするメンバー

部品一つひとつ,丁寧に塗装するメンバー

塗装が完了し完成に向けて橋を組み立てるメンバー

部品どうしの不具合を手直しするメンバー

幾多の修正の甲斐あって完成が見えてきました

大会目前,架設練習で本番に備える

2018/09/10

橋の塗装が完了し,プロジェクトは橋を組み立てるための「架設練習」に移行しています.大会のルールにより制限時間内に定められた作業範囲で安全に効率よく組み立てることが求められます.少ない人数で早く組み立てるほど評価ポイントが高くなりますが,部品点数も多くて複雑な構造のため,ルール内で認められる最大の架設人数(6名)で挑むことになりました.大会を目前に実験室内の特設作業エリアにおいて,制限時間内に橋を完成できるよう練習を重ねました.

架設練習の様子―橋の背骨部分を繋ぐ

侵入禁止エリア等に注意しながら組み立てを進める

それぞれ担当の持ち場を手分けして行う

この段階でようやく橋の下半分が接合完了

続けて橋の上部の組み立てに移行

ようやく橋らしい外観になってきました

接合部のボルトの締め忘れがないか確認

完成後に反省会を行うメンバー

架設練習と平行して橋の紹介パネルも製作しました

JSBC2018ついに開幕(大会初日)

2018/09/20

 いよいよジャパンスチールブリッジコンペティション2018(会場:摂南大学)が開幕しました.名城大学チームは,名城大学ロゴが大きくプリントされた大型バスで会場に入りました.今年の大会は,全国19の大学や高等専門学校からエントリがあり,20チームで競技が行われ,2日間に分けて開催されます.競技種目は「架設競技」,「載荷競技」,「美観投票」,「プレゼン審査」に分かれており,それらをすべて制する総合優勝目指して各競技に挑みます.初日はこの大会で一番見どころのある「架設競技」が行われます.
 「架設競技」はその名の通り会場内に設けられた特設会場においてバラバラの状態の橋を「形」にする,組み立ての速さを競うものです.実際の橋梁の架設を模擬して,組み立て方法には細かなルールが定められていますが,少ない人数で早く組み立てると有利になります.使用する工具やボルトを落下させることなく,また,定められたエリア内での作業(部品類の落下や禁止エリア侵入はペナルティーが課される)を守ってミスなく橋を完成させるには,最適な架設の順序であること,架設者の息の合った連携が必要です.名城大学から参加した2チームは,制限時間内に練習時よりも早く組み立てることに成功しました.明日の載荷競技に期待がかかります.

決戦の地(摂南大学)に到着

資材一式を会場へ搬入するメンバー

競技会場の設営も参加者が協力して行います

本番前の緊張の面持ちで記念撮影(Aチーム)

本番の緊張の面持ちで記念撮影(Bチーム)

決戦の舞台で最後の架設練習を行うメンバー

開会式後にてJSBC全参加者の集合写真

エイ・エイ・オー!(大会を楽しもう!)

熱気溢れる競技会場,名城チームの黄色いユニフォームがひと際目立ちます

いよいよ架設競技,安全装備も厳しくチェックされます

Aチーム架設競技の様子,6名の連携で次々と組み上がっていきます

Aチーム無事完成!きれいに組み上がりました

Bチーム架設メンバー,気合の円陣です

Bチームは5名の架設メンバーで挑みました

Bチームもスムーズに組み上がりました

ユニークな橋が次々と完成しました

架設競技が完了して,明日の載荷競技を待つ個性溢れる橋(作品)の数々

惜しくも入賞ならず!JSBC2018閉幕(大会2日目)

2018/09/20

 ジャパンスチールブリッジコンペティション2018,大会二日目では「プレゼン審査」,「載荷競技」,「美観投票」が行われました.「プレゼン審査」は橋に携わっている“その道のプロ”に対して,橋の設計,製作,架設までの過程をプレゼンします.質疑に対する回答も審査対象となります.プレゼンの後に行われる「載荷競技」は完成した橋に錘(おもり)を載せた台車を橋に設置したレール上で移動させる必要があります.台車が移動した時の橋のたわみが規定値に収まるかを競うものです.「美観投票」はデザインや意匠性に優れた橋を参加したチーム全員による投票で美しい橋を選ぶものです.これらのそれぞれの競技に対して加点され順位付けされ,部門別の上位3チームが表彰されます.すべての部門で上位になったチームが総合優勝となります.
 名城大学から参加した2つのチームは載荷競技で目標をクリアすることが出来ず,残念ながら入賞はなりませんでした.入念に設計して製作した橋も,大会当日の架設競技時でのボルトの締め具合など,当日の加減で変化する要因もあって,規定をクリアするだけでも大変な大会です.振り返ると反省点も多い大会でしたが,どの参加チームも総合優勝目指して真剣に作品を作り,競技に備えていることが感じられました.ブリコンに参加したメンバーにはとても刺激的で意義ある体験となったのではないでしょうか.

プレゼンの様子,各チームが審査員と会場に向けて作品をアピール!

プレゼンテーション審査の様子(Aチーム)

載荷競技前の重量測定,細部まで審査対象となります

載荷競技の様子(Aチーム),台車に慎重に錘を載せていきます

台車は橋を通過したものの,橋の主要部位がまさかの破損,惜しくも失格!

プレゼンテーション審査の様子(Bチーム)

載荷競技主審とルール確認をする様子(Bチーム)

Bチームも台車による変形が規定をオーバーして無念の失格

各チームの橋に対して美観投票も行われます

個性的なデザインの橋,ひと際目立ちます

今年度大会の優勝チームの橋(熊本高専)

別会場では後援団体によるVR橋梁点検の体験もできました

大会を終えてメンバー全員で記念撮影,JSBC2018お疲れ様でした!

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