大学概要【2019年度実施分】他大学・国立研究所との連携による新しい研究分野の開拓と学生自身のコミュニケーション能力の向上プログラム

理工学部

他大学・国立研究所との連携による新しい研究分野の開拓と学生自身のコミュニケーション能力の向上プログラム
実施責任者:六田 英治

 本学科・本専攻では新材料の開発や材料のポテンシャルを活かしたデバイス開発など世界的に高い評価を得ている研究課題を実施している。その一方で、材料開発においては数兆円規模の国家予算で運営されている超大型放射光施設をはじめとした国立研究所や他大学など他研究機関との連携が不可欠である。本プログラムは、それらの研究機関と連携しながら、新しい研究分野の開拓、さらには一流の研究者との交流を通して学生自身のコミュニケーション能力を向上させることを目的に活動を進める。本学が掲げる価値観である「生涯学びを楽しむ」を具現化するために、学生が社会との連携を強く意識し、その学びのフィールドを拡大させることを狙う。学生には,学内に留まっているだけではなく,世界のフィールドで活躍することの重要性に関して理解し,様々なことに挑戦してもらい,広い意味でのコミュニケーション能力を養ってもらうことを主眼にプログラムを構築する。これらは、学科内の教育改善WGを中心に議論を進めて行きながらPDCAサイクルを基に最適な方法を検討していく。

ACTIVITY

局所領域X線による窒化物系ナノワイヤ構造解析

2019/06/03

初日は準備のために前泊をして5月22日~24日まで実験を行った。実験としてはSPring-8にある大型のX線装置を用いたナノワイヤの構造解析である。実験室系のX線装置では測定のできない数百nmのナノワイヤにSPring-8のX線を当ててX線回折を行うものである。初日の22日は装置の立ち上げと調整を行い、試料のどこにX線を当てるかを検討した。
また23・24日は実際に試料のm面と非対称面にX線を照射して測定を行った。この測定によりナノワイヤのa軸とc軸の組成、構造について調べた。また7月にはSPring-8でスクールがあるので、今回の派遣で学んだことをそのときのスクールにも活かすことができたら良いなと思う。

実際にX線を照射し測定する前に試料の任意の場所にX線のビームが当たるように試料の位置を決定する装置。ゴニオヘッドはネジで変位を調整でき、写真の装置のゴニオメーターはX線回析装置と同期しており、パソコンで入力することで位置を細かく調整できる。

X線を試料のどの部分にどのように照射させるかをみんなで議論している場面。写真に写るモニターは、X線回折装置を制御する各種ソフトが表示されている。コンピューターにパラメーターを入力することであらゆる条件の回折データを得ることができる。

Spring-8のビームラインから出たところにある廊下で撮った写真。後ろにはアンジュレータが展示されている。全員の首から下がっているものはユーザカードで、ビームラインに出入りする際は、自分のユーザカードをタッチしなければならない。

実際にX線回折を行った装置(まだ試料を置いていない状態)。使用したビームライン(BL13XU)では放射光をゾーンプレートと呼ばれる集光素子で数100nmサイズに集光するとともに集光ビームを利用したX線を利用するため、局所構造測定に有効である。

局所領域X線による窒化物系ナノワイヤ構造解析

2019/07/01

私たちは6月の22日、23日に大型放射光施設SPring-8へ行ってX線によるナノワイヤの構造解析を行ってきました。この施設の周長は1436mもあり硬X線から軟X線まで広い波長の範囲で世界最高クラスの輝度で測定が可能です。この施設のX線のおかげで、ナノメートルオーダーのナノワイヤにもX線を当てて構造解析することができています。
5月の末にも同じ施設でBL13XUという装置を使って同様にナノワイヤの構造解析をしてきましたが、今回はBL40XUというまた別の装置を使って実験を行ってきました。この装置によりナノワイヤを数本取り出してナノワイヤの格子定数等を測ることにより構造の解析を行ってきました。

上写真は今回の実験で使用したビームラインであるBL40XUの装置の扉前で撮影した写真である。スイッチによって扉を開けるとビーム装置があり、そこに試料をセットし実験を行った。

上写真は測定をしている際の学生の様子である。パソコンの画面には測定の結果が表示され、これを解析し逆格子マップを作成する。また、測定装置の様子がモニターに表示され、画面と試料の配置を確認しながら測定を進めることが可能。

写真は実際に試料をセットし測定を行った送致である。写真左方向からX線が照射されこれによる回折を観察する。写真の中央右下あたりにはカメラが存在し測定の様子をパソコンで実際に確認できるようになっている。

写真は実際に測定した試料である。試料台の先端にはガラス片が取り付けられており、さらにその上に数本のGaN系ナノワイヤが取り付けられている。この数本にX線が当たるようにして測定を行った。

大型放射光施設 Spring-8においてグラフェンのX線回折測定を行った。

2019/07/08

 本派遣では、兵庫県にある大型放射光施設Spring-8のビームライン11にて実験実習を行ってきた。放射光を利用した「グラフェン成長過程のその場X線回折測定実験」や「単結晶ニッケル上のグラフェンの配向測定」を行った。これらの取り組みを通して新しい研究分野の開拓ができるように取り組みを進めた。

装置に基板を導入するためにブロックに取り付けている様子

実験室のハッチを操作している様子

測定中の様子

大型放射光施設SPring-8における局所領域X線による窒化物系ナノワイヤ構造解析

2019/07/25

私たちは7月7日から11日まで大型放射光施設SPring-8で夏の学校ということで7.8日に講義を学び、9.10日に実際に実習で装置の使い方について学びました。講義では放射光施設の概要やX線について学びました。色んな研究機関の方から講義をしていただいて、様々なことを教えていただき、とてもためになるものだったと思います。またSPring-8内の普段では入れないところに入ることができ、良いものを見ることができました。また実習では1日目と2日目に違う装置を使い、それぞれの装置の使い方について学ぶことができました。また講義と実習ではそれぞれ課題が与えられているのでその課題によりまた理解を深めることができれば良いなと思います。

Spring-8の中央管理棟の前で撮影した写真である。中央管理棟は受付やビームライン関係者の研究室や会議室などがあり、帰宅する際は中央管理棟で線量計を返却する。

加速器内見学で撮影した写真である。加速器内部には電子を加速させるためのアンジュレータと呼ばれる磁石や電子を曲げ電磁波を発生させる偏向電磁石がある。

宇野が3日目の実験で使用したBL25XUの写真である。BL25XUでは軟X線を用いた光電子分光を行っている。実験では九州大学の大学院生と協力しダイヤモンドにドープされている不純物の解析を行った。

小林が4日目の実験で使用したBL22XUの写真である。BL22XUでは溶液内イオンが光酸化還元反応によって変化する様子をXAFS測定法を用いて観察した。

大阪大学・立命館大学・名古屋工業大学・三重大学と連携最先端ゼミの参加と交流

2019/09/02

大阪大学・立命館大学・名古屋工業大学・三重大学と連携最先端ゼミに参加し、他大学との交流を通して自分の研究分野の開拓やショートプレゼンやプレゼン、さらには質問を通して学生自身のコミュニケーション能力の向上を目指す取り組みを、8月23日~24日に立命館大学・びわこ・くさつキャンパスで行いました。ゼミ合宿形式で、宿泊をしながら自分のやっている研究や詳細に関して語り合う機会となり、学生のうちに横のネットワークを構築するような取り組みを行いました。以下は参加した学生の感想です。

「学生の感想」

*今回のワークショップで特に大阪大学の酒井先生の転位のお話が勉強になりました。転位の成長機構や転位が結晶に及ぼす影響など図を用いて説明してくださり、私の研究テーマ―は転位の削減であるためこれからの研究の評価や考察の参考になると思いました。
自身にとって初めて他大学の方の前で発表する機会を頂き、素晴らしい経験になりました。この経験で、私のプレゼンで足りない能力を確認することができました。今後の発表で学んだことを生かしていければと思います。
2年前にも同様の取り組みを行ったが、前回よりも多くの知見を学ぶことができた。特に招待講演の方の発表は話し方も面白く、とても聞きやすかった。交流会では積極的に他大学の学生と交流することができ、多くの先生ともお話をすることができたので大変貴重な経験となった。
本ゼミの目的でもある「横のつながり」を構築できた点は非常に良かったと思う。一方で、難しい議論に対して理解が追い付かず質問すらできなかった点については反省・今後の課題であるなと感じた。新たな知見や横のつながりを広げることができたので、これからの研究に活かしていけたらなと思う。
今回、立命館大学にて他大学との交流ゼミに初めて参加しました。私自身3年生ということもありわからないことだらけでしたが、発表の進め方を学んだり、他大学との話し合いに参加できたりと多くの収穫があったので、よい経験となりました。
他研究室との交流を通して同じ分野の研究をしているということもあって、様々な話を共有することができた。また、発表会では自分の研究しているテーマの応用先などについても聞くことができたので研究の価値を再確認することができた。
今回参加した合同ゼミで、自分の知らない分野も含めてたくさんのことを学びました。例えば、谷川先生の多光子励起PL法での3次元的の転位線の観察や酒井先生の転位のメカニズムの講演は非常に興味深く、また、講演を聞いていて研究を進めていくうえで原理の理解や学術的な考察が大切であると感じました。
私はショートプレゼンを行ったが、自分のことを簡潔に伝える難しさを痛感した。招待講演や他大学の発表において、新たな知見を得たのと同時にまだまだ自分の知識が足りないということを感じた。今回の経験を今後の研究活動に生かしたい。
他研究機関の方々の前で発表を行い、多くの意見交換、指摘をいただくことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、他研究機関の方々の発表を聞き、改めて自分の研究へのモチベーションが上がりました。
色々な大学の学生や先生の講演を聞いて、研究内容は全然違っても研究の進め方や着眼点などがそれぞれ異なり、良い刺激を受けた。また、転位についての講演を聞き、完全に理解できていなかった基本的な内容を理解することができたが、まだまだ分からないことが多いため、今回学んだことを基にさらに考えていきたい。
私は他大学との合同ゼミに初めて参加しました。プレゼンテーションを見学し、私自身の研究結果や成果を数年後に、今回のようなプレゼンテーションが私自身行えると良いなと思いました。そして、今回の合同ゼミで他大学の先生方や先輩方にお話を伺えてよりよい時間を過ごせたと思いました。
私は大学院に行こうか迷っています。大学院に進学すると、必ず学会があり、自分で発表すると思います。大学院に進学した場合、初めて学会に行くより想像しやすいと思ったので、参加してみようと思いました。参加した結果、発表している内容が難しく、私には理解できなかったですが、自分の身になりました。

学生の発表の様子。多くの学生の前で学会発表ではないような議論を中心の発表を行った。

セミナーの様子。全部で80名程度の参加者があり、活況でした。

夜はバーベキューをして他大学の学生、国研から来ている研究者との交流を行った。横の連携を構築するために良い機会となったと考えられる。

最後に集合写真を撮って来年また集まりましょうということを誓いあいました。

結晶成長についてディスカッション

2019/09/02

■派遣日時:令和元年8月28日~令和元年8月30日
■派遣場所:大阪大学吹田キャンパス、箕面観光ホテル
■実施内容:大阪大学吹田キャンパスで結晶成長セミナー、研究室見学を行った。箕面観光ホテルに移動し、参加者によるポスター発表、AIが結晶成長技術にどのような影響をもたらすかランプセッションが行われた。

■学んだこと、抱負:本派遣で学んだことは、結晶成長技術の基礎です。私は研究室に配属されて間もなく、窒化ガリウムの結晶成長を学んでいます。今回の討論会では、自身に関わる研究をしている方が多く参加しており、ポスター発表やディスカッションを通して多くの知見を得ることができました。今後の研究方針を決めるにあたって大変参考になりました。また、他分野の最先端研究を学ぶことができました。

大阪大学に到着した様子 1

ポスター発表会場前の様子 2

ランプセッション後の様子 3

国立研究開発法人 情報通信機構(NICT)における情報通信技術関連のミーティングの実施

2019/10/11

令和元年10月3日、国立研究開発法人 情報通信機構(NICT)の本部にて先端研究技術についてディスカッションしたり名城大学の研究テーマを絡めた議論をおこなったりした。今後の研究方針の決定や大学での多様な学びを気付かせることを目的とした取り組みを行いました。以下は参加した学生の感想です。

[学生の感想]
*この度のNICTとのミーティングにて、大学内では難しい測定を共同で行うことを期待し、今後の研究が一層良いものになるであろうと私は考えているほか、自らの知識不足を強く感じた。今後は材料系のみならず情報系についての学習も進めていきたいと考えている。
*NICTとのミーティングによって、今後の研究活動がより充実したものになると考えている。一方で、今まで履修した材料系の知識ではなく、情報通信分野の知識を身につければならないと感じた。

実験室内を撮影したかったが撮影禁止であったため玄関前で撮影したもの。実験室内にはNICTにしか無いものや、国内でもトップレベルの実験装置が多くあった。

NICT正面玄関にて撮影したもの。実験室には、たくさんの実験装置であふれており、充実した環境であると感じた。

大阪大学への派遣

2019/11/08

大阪大学は広大で参加初日は会場に到着することも苦労しました。

派遣日時:令和元年10月29日~令和元年11月1日
派遣場所:大阪大学 吹田キャンパス

大阪大学で開催された結晶成長学会に参加した。本派遣先では様々な最先端の結晶成長方法、メカニズムや応用先について学んだ。自分の知らなかった結晶の物性や必要性、医療や光学機器への応用先等を学ぶことができ大変貴重な経験となりました。

開場前で撮った写真

大阪大学内も見学しました。医学系の展示が多くありました

樹脂の成形及び成形品の加工方法等について学ぶ取り組み。

2019/11/19

 卒業研究と同様の研究を行っている他大学や企業の発表を聴いた。論文等を調査しただけでは分からなかった操作手順や各条件について発表を直接聴くことで、より樹脂の成形や射出条件について詳しく知ることができた。また、様々な発表を聴くことで、今まで考えもしなかった条件やパラメータについても重要であることが分かり、今後の卒業研究の参考にすることができて良かった。特に、熱可塑性樹脂を射出成形するときに、金型の温度だけでなく、金型の熱伝導率や熱拡散率といった要素が樹脂の流動性に影響を与えることが分かり、非常に興味深かった。

各セクションを行う会場内が撮影禁止の為、会場入口で撮影した写真。セッションでは、他大学の発表を公聴するだけでなく、研究室の先輩の発表を見学することで、今後の自分自身の研究活動のイメージを持つことができた。

会場の椅子に座り、寄稿集を読んでいる様子。企業や大学の発表に関する論文を事前に読無ことで、より深く発表を理解することができた。

会場ロビーで行われた、企業による展示の様子。ここでは、直接企業の方と研究について話をすることができた。特に、具体的な数値や条件、処理方法について教えて頂き、今後の参考にすることができた。

ポスターセッションが行われた会場入り口の写真。ここでは、様々な企業や大学が研究内容についてポスターを掲示し、興味を持った人に説明していた。実際に研究を行っている人と直接話すことができ、研究内容について詳しく知ることができた。

工学院大学での光変調反射実験

2019/12/06

励起用レーザーを試料に照射するためにミラーの位置を調節しているのを見学している写真。

 工学院大学八王子キャンパスの尾沼研究室に13時30分頃に訪問し、はじめにミーティングを30分ほど行った。そのミーティングでは尾沼准教授に酸化ガリウムやInGaNで測定した光変調反射のスペクトルを見せていただき、光変調反射実験を行う上での注意点を説明していただいた。また当日の実験方法やどの試料を測定するかなどを話し合った。その後、実験室に移動した。
 測定系は測定用のXeランプの後に、プラスチックに2mmほどの穴を開けたアパーチャを設置し、そのうしろに光量を調節するアイリスを設置した。点光源となった光をロックインアンプにつなげたチョッパーと焦点距離が100mmの平凸レンズをはさみ、試料に照射した。また、励起用レーザーをチョッパーとAlミラーを通して、試料に照射した。このとき、試料のフォトルミネッセンスを検出しないように試料と分光器の間に十分な距離を置いた。光軸調整と試料の設置を2時間ほどかけて行い、16時に実際に測定を始めた。試料の設置は、黒い板に弱粘性の両面テープを張り付け、上から順番にGaN、E1343、E1348、E1337、E1493を固定した。

測定系について学んでいる写真。

最初に測定した試料は工学院大学にあるLED用のGaNであった。この試料を測定した理由は、基準となる試料であり、ちゃんと測定できるかどうかを確かめるためである。測定条件は、測定範囲が350nm~500nm、ステップが0.3nm、時定数を3sである。

光軸調整をしている写真。

 次に測定した試料は1周期を9MLのGaN障壁層と1MLのInN井戸層とした50周期のInN/GaN短周期超格子(E1343)である。この試料でGaNとは違う測定条件にして測定を行ったがうまくいかなかったため、GaNと同じ測定条件で実験を行った。ただし、測定範囲は340nm~440nmとした。同じ測定条件でGaN障壁層が7MLで50周期の短周期超格子(E1348)とGaN障壁層が4MLで100周期の短周期超格子(E1337)とGaN基板の上に1MLのInNが積まれその上からGaNでキャップしている試料(E1493)で測定を行った。
 9ML、7ML、1MLはGaNの発光ピークである約361nm、約3.4eVのところで変調反射スペクトルに大きな振動を確認できました。しかし4MLは約365nmと離れているので原因を考察したいと思います。1ML InNの発光ピークが約385nmなので、その付近の変調反射スペクトルを調べたところ、わずかに振動していることがわかりました。InNのピークなのかどうかをこれから解析してみたいと思います。
 すべての試料の測定が終わったら、各装置の電源を落として実験を終了した。

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