理工学部/材料機能工学科科目 Pick Up
物性論I・II
物性論では、金属や半導体、誘電体といった固体材料(主に結晶物質)で起こる物理現象を扱う学問である固体物理学を学びます。物性論Iでは、結晶構造や結晶における波の回折、逆格子空間、結晶の結合力といった結晶の基本概念を学びます。続く物性論IIでは、結晶格子の振動や熱的性質、結晶中に存在する電子の性質、更に結晶格子と電子の相互作用によって現れるエネルギーバンドなど、固体デバイスの設計に必要不可欠な概念を学びます。
量子力学 I・II
電子や光は粒子性を持つと同時に波動性も併せもっています。このようなミクロの世界では私たちの住むマクロな世界では考えられないことがおこっておりそれを取り扱うのが量子力学です。材料を構成している原子を理解するためにはこの量子力学の考え方なしには成り立ちません。本講義ではシュレーディンガー方程式をはじめとした量子力学の基本的な考え方を理解した上で、物質・材料を構成している原子、さらには原子核・電子の軌道について理解を進めます。
結晶材料
電気電子システム、機械システムに幅広く用いられる結晶材料の基礎について学びます。結晶を構成する原子の構造から始め、原子の結合による結晶の形成され方とその種類について、さらに、結晶方位ならびに結晶面の表記方法、実用上の観点から問題となる各種の欠陥について学びます。
半導体基礎論
半導体基礎論では、半導体結晶の結晶構造、熱的、電気的特性に関する理論、さらにバンド理論について学びます。半導体材料は、元素半導体であるSiとGe、化合物半導体であるGaAs、InP、GaNなどであり、これらの結晶構造や物性は、物性論I・IIで学んだ内容にも含まれています。また、バンド理論は量子力学I・IIで学んだシュレーディンガー方程式を利用します。そして、バンド構造は半導体工学の基礎となります。
半導体工学
現在世の中で用いられている半導体デバイスには、シリコンを用いたものと化合物半導体を用いたものがあります。それぞれの半導体の物性や添加する不純物、さらには半導体同士の接合、半導体と金属との接合の働きなど基本的性質や構造の学習を通じて、ダイオード、トランジスタ、FET等の半導体デバイスの中で何が起きているか、その現象を理解します。
鉄鋼材料
鋼や鋳鉄に代表される鉄鋼材料は、現在でも機械構造材料として最も広範囲に使用される材料であり、歴史的にも第1次産業革命を具現化した重要な役割を担ってきました。本講義では、鉄―炭素合金を主題として位置付け、合金開発の基礎となる状態図や熱処理そして炭素量と組織構造並びに機械的性質の関係を講義します。材料機能工学実験1でも本講義と関連する内容が実施され、"理論"と"実践"の両面から鉄鋼材料の理解を目標とします。
複合材料
性質の異なる複数の材料を組み合わせることによって個々の材料の短所を補って単一材料では実現できない優れた特性を持たせた材料が複合材料です。この講義では、代表的な複合材料である繊維強化プラスチック(FRP)を中心に、その構成素材・内部構造・成形加工法・力学的挙動について学び、複合材料の優れた特性を利用するための基礎を習得するとともに、複合材料がどのように活用されているかを具体例を通して学びます。
材料強度学
航空機や橋梁などの大型構造物の事故の多くは、材料内部の非常に小さな欠陥の成長によって発生します。予想される欠陥の形態について材料組織の構造から考えます。
機械設計・製図
空想を現実にする第一歩、アイデアを図面に描き、具象化する技能を修得します。基本的な機械要素の部品図や組立図を2次元CADを使って描きます。
機械製図の基礎を学び、また2次元CADの操作をマスターします。
製図基礎
製図はエンジニアにとっての読み書きであり、モノづくりに不可欠な技能です。線の太さや種類を使い分けて製品・部品の形や構造を表します。三角法による平面図、透視投影法による立体図、寸法の記入法などを学び、アイディアを具体的なカタチにします。また平面図から立体を想像したり、立体を平面図に描き表すことができるようになります。漫画やイラストが苦手でも、基本さえ修得すれば、誰でも綺麗な図面を描くことができます。
(図)二点透視投影法による立体図
光誘電工学
先端材料として半導体や磁性体は良く耳にしますが、「誘電体」はあまり聞いたことがないかもしれません。しかしながら、光通信のための光ファイバやレーザダイオードの光導波路、レンズやディスプレイの反射・無反射コーティングなど、光を制御する先端材料として現代社会に広く浸透している材料が誘電体です。本講義では、その誘電体の基礎物性、特に光学特性について理解し、その特性を活用した光制御素子への応用原理を修得します。
(写真)光導波路を有するレーザ
表面工学
表面工学は、物質表面の性質を、原子のレベルからひも解き、知る授業です。表面における分子の吸着を学び、薄膜成長や触媒反応を理解する素地をつくります。また、表面の特異な電子状態を学ぶ過程で、物性論や量子力学で学んだ電子エネルギーバンドの話題が再登場し、この科目で確かな知識に固まります。受講生は電子構造論のエキスパートになることができます。
熱力学
熱力学は、物質科学の限界と可能性を教えてくれる基礎科目であり、フランスの物理学者カルノーによる「熱機関の効率の理論的な限界」の追究から始まりました。熱力学の第一法則、第二法則を学習し、熱や温度といった身近な量の理解を深めていくと、自然現象の進む向きを決めているエントロピーという概念に至ります。現代社会が直面している環境・エネルギー問題から身近な材料の性質まで非常に幅広い応用分野が関係します。
(図)等温変化と断熱変化を繰り返すカルノーサイクルのP-V図。熱機関の効率が最大となる。
材料機能工学実験 I・II・III
材料機能工学の知識を深め、また発展させるために、テーマ別に少人数グループでさまざまな実験・実習を実施します。実験・実習を通して、実験装置の取扱いなどの実験方法、得られた結果をまとめ分析すること、得られた結果の考察、さらにはレポート作成について学び、技術者・研究者として必要不可欠な実験の計画・実行およびデータ解析の能力、日本語による論理的な記述力、自主的・継続的に学習できる能力、与えられた制約の下でコミュニケーションを図りながら協働して計画的に仕事を進めまとめる能力を養います。
(写真左から順に実験風景の写真)(1)実験Iより「低融点合金の熱分析による状態図の作成とその評価」。(2)実験Iより「オシロスコープ」。(3)実験I、実験IIより「真空技術の基礎I~III」。(4)実験IIIより「油圧ジャッキの作製と評価」。
卒業研究
4年間の集大成である卒業研究では、これまで学んだ知識を生かし、研究室の方針に沿って問題点を明らかにし、その解決方法を自ら考え、実践する科目です。この科目では、(1)個人・グループで研究を実施し、創造性により課題解決を図るエンジニアリング・デザイン能力、(2)国内外の研究進捗を調査し、自然や社会への影響も考慮する、国際的視野に立った研究遂行能力、(3)ゼミや中間発表により、課題解決のためのコミュニケーション力やチームワーク力を発揮する能力、(4)卒業論文により、論理的記述能力、そして、(5)卒業研究発表により、プレゼンテーション能力を養います。