特設サイト第115回 「食薬区分」について

寒暖差の激しい日が続いており、体調管理が難しい今日この頃です。
かくいう私も久しぶりに風邪をひいて、いくつかの漢方エキス製剤にお世話になっております(^^;)。

さて、今回も前回に続いて、「用語」の話をしたいと思います。 漢方薬の原料でもある生薬は「くすり」として利用される一方で、薬味や香辛料など「食品」として利用されるものもあり、「食」か「薬」かの線引きが難しいものが数多くあります。また、それらは有史以来、体調が優れないときなど、人々が「経験」をもとに利用してきたものであり、いわば科学の誕生以前から存在するものです。そのため、その有効性や安全性についての科学的根拠は後から整備しており、今も途上にあります。一方、「食」については「食べられる」「食べられない」、「おいしい」など、いわゆる「食経験」にもとづいたもので、とくに有効性や安全性の根拠が必要ではありません。

一般に、「食品」については3つの機能があるとされ、一次機能は生命維持のための栄養素としての機能を指し、二次機能には味や香り、触感など感覚や心理面での嗜好を高める機能があり、三次機能として免疫能や生体防御能、神経機能など生体の高次機能を調節する役割があるとされます。近年、この食品の三次機能を取り上げたものが健康食品です。しかし、「健康食品」という用語は法律で定義されたものではなく、健康に良い影響を与えそうな、どんな食品にも使用される名称となり、混乱を生んでいます。「くすり」については効能効果を謳うことができますし、なにより「作用する」と表現することができますが、「食品」ではできないため、さまざまな健康食品では「機能する」と表現しているのです。「健康食品」については、第48回の当コラムでも説明していますが、歴史的にみると「機能性食品」という名称が使われました。その後、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品からなる保健機能食品制度が始まってからは、この機能性食品という名称は使わなくなったはずですが、マスコミをはじめ健康食品業界ではまだ使用されているようです。2015年に、保健機能食品制度には第3番目として「機能性表示食品」というカテゴリーができ、今年健康被害が明らかになった紅麹商品で、その名称も浸透したかと思うのですが、未だに用語や制度に対する理解が不十分ではないかと思います。正しい知識は、まず用語からということがここでも言えます。

タイトルに挙げた「食薬区分」ですが、もっぱら医薬品として使われてきた材料や原料はもちろんのこと、医薬品としての効能・効果を標榜するようなものは食品として使用することはできませんし、その用法・用量や製品形状が医薬品と見間違えるようなものを「食品」として提供することはできないといった線引きのことを表した言葉です。一番重要なのは原材料であり、そのリストは厚生労働省が「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」や「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」として公開しています。ご興味・ご関心のある方は是非とも検索してみてください。消費者庁が所管する保健機能食品制度についても一層のご理解をいただきたいと思います。

(2024年11月5日)

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