大学概要【2018年度実施分】研究室・研究室外での先端研究体験を通じ、早期に大学での多様な学びを気付かせる取り組み

理工学部

研究室・研究室外での先端研究体験を通じ、早期に大学での多様な学びを気付かせる取り組み
実施責任者:六田 英治

現在の理工系の大学のシステムでは、3年生まで講義を中心とした座学に加え、自動車学校のような実験実習の基礎的な科目である学生実験を行い、4年生になって卒業研究、さらには大学院に進学し、高度な研究開発の素養を学ぶのが一般的である。その一方で、3年生までの座学中心の教育と、4年生からの実験実習の間には、学生の意識に乖離が見られ、その接続を円滑にすることは、「学生が自ら楽しんで学ぶという学びのコミュニティ」を構築する上で極めて重要となっていると考えられる。本事業ではそのような背景を基に、研究室・研究室外での先端研究体験を通じ、早期に大学での多様な学びを気付かせる取り組みを行う。

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ACTIVITY

大型放射光施設Spring-8への派遣

2018/07/10

■派遣日時:平成30年6月28日~平成30年7月2日
■派遣場所:兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
■実施内容:
兵庫県にある大型放射光施設Spring-8のビームラインBL11XU-QSTを用いて、グラフェンの成長過程のその場観察とX線CTR散乱測定を行った。実験に関して、量子科学技術研究開発機構の高橋先生、佐々木さん、藤川さんに多くの助言を頂いた。

■学んだことに対する抱負:
本派遣で学んだことは、細かいことまでノートに記録するということです。今回の測定ではサンプルやX線のセッティングに5時間ほどかかり、それから測定が始まります。このとき、もしセッティングにミスがあるとサンプルが測定できないまま1日が終わってしまいます。このような事態を防ぐために、本派遣先では非常に細かくノートに記録しています。私もノートの取り方を見直し、小さな異変が起きても、素早く原因を特定し、対処できるようにしたいと思いました。

Spring-8内を見学しているところ

X線の検出器の位置調整をしているところ

測定中の様子

Spring-8卒業研究に際した打ち合わせ

2018/09/21

■派遣日時:平成30年9月12日~平成30年9月14日
■派遣場所:大型放射光施設Spring-8
■実施内容: X線回折像の解釈とデータの解析について学ぶ
 前回、6/19-6/20に大型放射光施設Spring-8のBL40_XUを用いて、サブミクロンビームを用いた局所領域におけるX線回折のデータを得ることに成功した。データは膨大であり、学術的に意味のある形とするには解析と深い理解が要される。BL40_XUの担当者である安田様と以前から研究室単位で利用させていただいているBL13_XUの担当者であり、私が卒業研究を語る上では不可欠である3次元逆格子マッピングがご専門である今井様とソフト関係やその他測定系に詳しい隅谷様に解析ソフトの提供とレクチャーをして頂いた。加えて、測定系の疑問解消、解析に際して重要な考え方などご教授いただいた。これにより、一部ではあるが、生の測定データから逆格子マップへの変換及び校正が可能になった。

■学んだことに対する抱負:
 今回の派遣を通じて、測定データの一部ではあるが、逆格子マップへと変換が可能になり、サテライトが確認できた。この逆格子マップがナノワイヤのどの位置から得られたものであるか、ゴニオメーターと回折強度のスキャン結果から、正確に見積もっていきたい。加えて、その他測定結果と測定位置との対応関係を付け、本派遣で学んだ同様の手法で逆格子マップを表示、サテライトから、量子周期膜厚及びIn組成の割り出しを行いたい。
 上記の事柄から、卒業研究を通し、今後得られるであろう知見から、現在、窒化物系ナノワイヤの問題の解決の糸口を見出していきたい。
 敷いては、半導体光デバイスの向上及びさらなる発展に貢献したい。

本部管理棟のエントランスにて撮影。ここからビームライン担当者と合流し、打ち合わせを行った。

Spring-8のビームライン内の様子。この時期はビームタイム期間外のため、加速器は稼働していない。打ち合わせは別部屋にて行った。

実際に生データから得られた逆格子マップ(コントラスト調整済)。実際は、直行座標に直すためには、補間計算を行う必要がある。

IWN2018への派遣

2018/12/20

■派遣日時:平成30年11月11日~平成30年11月16日
■派遣場所:石川県立音楽堂・もてなしドーム
■実施内容:
口頭およびポスター発表による窒化物半導体に関連する最新の研究報告の講聴

■学んだことに対する抱負: 
講聴させて頂いた研究発表の中にはNWであっても自分たちとは違う観点・方法から研究を行っている大変興味深い発表があり、多くの刺激を受けることが出来ました。また、自分たちと同様の方法で作成したNWに関連する報告を講聴することが出来ましたので、この結果を吟味して自分の研究に活かしていきたいと思っております。
一方で、初めてIWN2018という世界中の窒化物半導体に携わる研究者が集まる国際学会に参加して、実際に学会という場所で自分の研究をそれらに興味・知識を持った多国籍の研究者の方々の前で発表し、内容を吟味され疑問や矛盾など様々な視点から質問を受けるということについて、今まで曖昧でいた自分の理解が現実に追いついたと思いました。
そして、改めて自分の力量不足を痛感しました。口頭発表ではスライドの内容の理解と発表者の口頭での説明を同時に行うのに大変苦労し、TOEICなどとも違うネイティブの方々がしゃべる英語をほぼ聞き取れなかったこともあり、自分の英語能力不足を改めて実感しました。そして、発表者の方々を見て、知識や考え方、向き合い方など全てにおいて自分がその足元にも及んでいないことを思い知らされました。改めて自分を変えていかなければならないと強く思い、2年後あの場に立てるよう、努力していく所存であります。
IWN2018に参加したことで、学術的にも自分についても多くのことを学び取ることが出来たと思います。これらの経験を活かして今後の研究に臨んでいこうと思います。

企業ブースにて多くの半導体メーカーが宣伝を行っている様子。

交流ホールで多くの参加者が議論・歓談を行っている様子。

ポスターセッションにて多くの研究者が議論を行っている様子。

大型放射光施設Spring-8への派遣

2018/12/20

■派遣日時:平成30年10月22日~平成30年10月25日
■派遣場所:兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
■実施内容:兵庫県にある大型放射光施設Spring-8のビームラインBL11XU-QSTを用いて、グラフェンの成長過程のその場観察とX線CTR散乱測定を行った。この測定は大学レベルの放射光装置ではできない規模の放射光とその場観察装置を用いて行われた。実験に関して、量子科学技術研究開発機構の高橋先生、佐々木さん、藤川さんに多くの助言を頂いた。その結果、炭素のニッケル触媒への固溶および析出過程を従来の測定より詳細に解析することができた。

■学んだことに対する抱負:本派遣で学んだことは、実験ノートの取り方です。細かいことまで全てノートに記録しており、ノートを見ただけで前回何を行ったかわかるほどでした。今回の測定ではサンプルやX線のセッティングに5時間ほどかかりました。その後、測定が始まったのですが、このときセッティングにミスがあるとサンプルが測定できないまま1日が終わってしまいます。したがってこのような事態を防ぐために、本派遣先では非常に細かくノートに記録していました。私も普段の実験ノートの取り方を見直し、小さな異変が起きても、素早く原因を特定し、対処できるようにしていきたいと思いました。

X線検出器を取り付けているところ

測定中の様子

測定前に液体窒素ボンベの流量調整しているところ

2018夏合同ワークショップへの派遣

2018/12/26

■派遣日時:平成30年9月13日~平成30年9月14日
■派遣場所:立命館大学 びわこ・くさつキャンパス エポック21
■実施内容:
名城大学、大阪大学、立命館大学、三重大学の四校における合同研究発表

■学んだことに対する抱負:
 自分は今回の派遣まで、自分と同じ系統の研究をしている学生に、名城大学内以外で出会うことがありませんでした。しかし、今回の派遣では大阪大学に似た研究をしている学生がおり、尚且つ同じ年代でいました。他機関の人たちと研究について意見や情報の交換ができ、研究への新たなアプローチを考えるきっかけになったのではないかと感じています。また、他大学で研究している人の発表を生で聞くことにより、自分の中で研究に対するモチベーションが上がりました。

エポック21の前で参加した名城大学のメンバーで撮った写真です。

立命館大学内で撮った写真です。

エポック21内で泊まった部屋の写真です。

MSTでの試料受け取り及び東京工業大学での試料観察

2019/02/01

一回目の派遣では、試料作製をして頂いたMST様(一般財団法人材料科学技術振興財団)に伺い、そこで実際に試料を加工した装置の見学をしてきたのですが、今回は試料の受け取りだけ行いました。そして東京工業大学に赴き、三宮研究室にある球面収差補正電子顕微鏡R005を使用して高分解能で試料観察を行いました。
 私が扱う試料は縦4μm横20μm以下のGaN/AlInN多層膜観察試料を直径3mmの凹型の Cuメッシュに設置したTEM試料で、とても繊細な試料となっています。前回は何らかの衝撃でCuメッシュから GaN/AlInN多層膜観察試料が取れてしまいGaN/AlInN多層膜部分が観察できませんでした。前回の反省を生かし、今回は一日目に不要な荷物を全てホテルに置き、二日目からの試料の受け取りと観察は最小限の恰好で行い、移動での人ごみを避けるために二日目は早朝にMST様で試料を受け取り、そのまま東京工業大学に試料を運びました。その結果、 GaN/AlInN多層膜観察試料は破損しておらず無事観察することが出来ました。
 R005で観察する際、高さ調整、電圧軸調整、非点収差や回析収差など様々な収差の補正などいくつか調整を行わなければならないのですが、TEM試料を用いて調整をすると長い間電子線を照射させて損傷を与えてしまう可能性があるので、調整用の試料として今回のためにGaN粉砕試料を作製しました。この試料は、GaN基板を乳棒で乳鉢の上に粉々に粉砕し、粉砕したGaNをエタノールと混ぜ、駒込ピペットでマイクログリッドに分散滴下したものです。調整用の試料としてGaN粉砕試料を用いたのは、GaN粉砕試料の回析図形を見た時にGaNのみの回析点だけ表されるので試料の方位の調整を行うのに容易だからです。しかし実際にGaN粉砕試料の回析図形を見てみると、二つ以上のGaN単結晶が重なり合って回析図形が混ざった場所が多々あり、一つのGaN単結晶を見つけ出すのに時間を要しました。
 調整が終わった後、実際に TEM試料を観察すると低倍像ではGaN/AlInN多層膜部分が縞模様のコントラストで観察することができ、他にもGaN層とAlInN層の境界部分から発生している線欠陥や点欠陥なども見ることが出来ました。高倍像では各層の格子縞を確認することができ、欠陥部分では格子縞のずれがあることが分かりました。現在、得られたTEM像の格子縞や回析図形から欠陥の発生機構を解析中です。
 本派遣を通して、研究目的に沿った様々な観察データを得ることができ、とても充実した派遣となりました。

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