トップページ/ニュース 農学部吉田助教らの研究グループの研究がNature Physicsに掲載

農学部の吉田幸大助教と齋藤軍治教授をはじめとする研究グループは、歪んだスピン三角格子を持つ有機結晶において、分子上の電子スピンの秩序状態が関与する特異な相転移現象を発見した。同研究は、名古屋大学、京都大学、理化学研究所、東京大学に所属する研究者との共同で行われた。詳細な内容は、6月8日付けで英国科学誌「Nature Physics」のオンライン版に掲載された。

水を冷やすと、水分子の熱運動が抑制され分子間の相互作用が有効になるために、摂氏0度で秩序化して氷になる。磁性体内の電子スピンの場合も同様で、通常は温度を下げるとスピン間の磁気的相互作用のためにスピンの秩序状態が形成される。しかし、隣り合う電子スピンが反平行に揃おうとする磁気的相互作用を持つスピンを正三角形の各頂点に置いた場合には、全てのスピン対を反平行に揃えることができず(図a;幾何学的フラストレーションと呼ばれる)、極低温まで秩序化しない「量子スピン液体」状態が形成されることがP. W. Anderson(1977年ノーベル物理学賞)によって理論的に予想されている。量子スピン液体そのものの性質だけではなく、その周辺の電子状態や、量子スピン液体からその電子状態への相転移(量子相転移)現象は、近年の固体科学において最も重要なテーマの1つある。

今回、同研究グループは、BEDT-TTFと略される平面分子と四面体型陰イオンB(CN)4から成る(BEDT-TTF)2B(CN)4単結晶(図b)を電解酸化法により合成し、BEDT-TTF二量体上の電子スピンが少し歪んだ三角格子を形成することを見出した(図c)。静磁化率の温度依存性から算出した2種類のスピン間磁気的相互作用(J, J’)の比J’/J ~ 2.0は、第一原理計算結果と非常によく一致する。また、静磁化率や核磁気共鳴測定から、この物質は5ケルビン(摂氏マイナス268度)で、量子スピン液体的な状態から、隣り合うスピンが互いの磁気モーメントを打ち消しあったスピン一重項状態に相転移することを見出した。現在までに5~7種類程度の量子スピン液体物質が報告されているが、量子スピン液体を冷やすことにより別種の電子状態に相転移した例はなく、さらに、その電子状態がスピン秩序状態ではなくスピン一重項状態であった点は、上記の課題を解決する上で重要な手がかりになると期待される。

【図に関する説明】
(a) 正三角形の各頂点に電子スピン(赤色矢印)を置いたとき、全てのスピン対を反平行にはできない。(b) (BEDT-TTF)2B(CN)4単結晶の顕微鏡写真(方眼紙の目盛は1ミリ)。(c) (BEDT-TTF)2B(CN)4結晶中でBEDT-TTF分子は二量体を形成している(上図)。各二量体は電子スピンを持っており、2種類のスピン間磁気的相互作用(J, J’)の大きさによって、スピン幾何構造が決定する(下図)。

論文情報
掲載雑誌名 Nature Physics(オンライン版公開日:2015年6月8日)
論文タイトル Spin-disordered quantum phases in a quasi-one-dimensional triangular lattice
著者 Y. Yoshida, H. Ito, M. Maesato, Y. Shimizu, H. Hayama, T. Hiramatsu, Y. Nakamura, H. Kishida, T. Koretsune, C. Hotta and G. Saito
論文URL http://dx.doi.org/10.1038/NPHYS3359

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