移行用/ニュース 農学部の植物保全学研究室が八重咲きサクラ新品種を発見 尾張を代表する八重桜への願いこめ「オワリガサネ」と命名
愛知県小牧市内の県有林で生育していた八重咲きサクラが、今まで知られていない新品種であることが、名城大学農学部生物環境科学科の横内茂講師(植物学)を中心とする植物保全学研究室の調査で明らかになりました。花は白色に近い淡紅色で、同研究室では愛知県とも相談したうえで「オワリガサネ(尾張重)」と命名。鑑賞価値が高いサクラであるとの判断から増殖のため天白キャンパス温室で育てている挿し木苗15本の成長を見守っています。
新品種を発見したのは生物環境科学科を2012年に卒業、岐阜大学大学院に進学した連合農学研究科博士課程の伊藤玄(げん)さん。2013年4月9日、車で通りかかった際、道路脇で、見なれない、白っぽい花を枝いっぱいに咲かせている高さ12mほどのサクラの木に気づきました。伊藤さんは名城大学を卒業後も、週に1度は植物保全学研究室に顔を出していたこともあり、横内講師に「新品種ではないか」と相談。横内講師や同研究室の学生たちも加わり、県有林を管理する愛知県県有林事務所と連絡を取り詳しい調査を開始。岡山県の天然記念物に指定されているソウドウザクラに類似しているものの、おしべ数や花弁の形状などで明らかな違いが見られことや、花弁の外側のがく、葉にヤマザクラの特徴が見られることからヤマザクラ系の新品種であることが明らかになりました。調査結果は伊藤さん、横内講師、植物保全学研究室4年生の永富裕輝さん、山内康平さん、サクラの新品種に詳しい富山県中央植物園の大原隆明さんの5人の共同研究として2014年9月に東京で開催された日本櫻学会第9回研究発表会で発表され、新品種として公式に認められました。
植物保全学研究室では愛知県の許可を得たうえで、1本しかない新品種の原木から挿し木用の枝を採取し2014年6月から同研究室温室で栽培を開始。育っている15本の苗木はまだ高さ10㎝ほどしかなく、花を咲かせるのはまだ数年先ですが、愛知県の新たな観光資源となる可能性もあるため、新品種名を、「尾張を代表する八重桜に」との願いを込めて「オワリガサネ」と命名しました。
横内講師は「愛知県内で発見された野生種ではない、栽培品種のサクラはこれまで知られておらず、オワリガサネは愛知県産栽培品種のサクラ第1号になる。新品種確定までの調査・研究には4年生の学生2人も卒業研究として取り組んでおり、貴重な経験になったはず」と話しています。発見者の伊藤さんも「名城大学の植物保全学研究室によって認知されたオワリガサネが、いつの日か、愛知県の“地桜”と言われる日が来るのを楽しみにしています」とうれしそうでした。
なお、愛知県は、このサクラの生育場所について、交通量が多い県道脇で、付近には駐車場もないことから非公表としています。