移行用/ニュース 益川敏英さんが名城大生にエール「学生時代ほど自由な時間はない」 新聞会がインタビュー

新聞会のインタビューに応じる益川さん 新聞会のインタビューに応じる益川さん

理工学部の理工談話会は9月8日に、ノーベル物理学賞受賞者である名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長の益川敏英さんを講師に迎えて特別講演会を開催しま した。益川さんは講演後、名城大学新聞会のインタビューにも快く応じ、学生記者たちに学生生活の過ごし方や読書の楽しさなどについて、自身の学生時代の体 験をもとに語りました。インタビューに挑戦したのは法学部4年の亀山由季さんと同2年の加藤雄也さんです。

――名城大学の学生たちに、学生生活を有意義に過ごす秘訣を教えて下さい。

秘訣ってないと思います。自分の人生を思いっきり生きるということに尽きると思います。自分の面白いことを真面目に面白いと思うことです。それで一生懸命 生きればそれでいいと思います。その中でいろんなことを経験して、そういう過程の中で自分は、ここの分野で仕事ができるかなということを見つけたらいい。 勉強は本来、楽しいことで、ギリシャ語にあたるストューディオとは「知る楽しみ」の意味です。日本では小学生でも3年生くらいまではみんな理科なんかが好 きなんですが、試験の成績が良くないからダメだとかいいとか言われているうちに嫌いになる。もっと純粋に、知るということを楽しんだらいいと思います。

――先生は英語が苦手という話をお聞きしました。

知識はおおむね文字から入ってきます。英語は国際語です。英語が理解できなかったら外界から知識が入ってきません。僕はこれまでやってきた仕事の中で、論 文にしていない仕事がいくつかあります。実はそういうことに興味を持って、英語力で協力してくれる人がいなかったからです。

――好きなことを続けるにはそうした困難も乗り越えなければならないわけですね。

それは困難というよりは楽しい作業ですね。山を乗り越えるということをアルピニストは誰も苦しいと思っていません。自分で真剣にやっている仕事だったらハードな仕事であっても楽しいはずです。そういうものを見つけて、それに取り組むことだと思います。

――好きなことをやって結果がついてこなかった時はどうしたらいいのでしょう。

1109162294.jpg結 果がついてこないというのではないと思います。結果が自分の予想とは違って、あまりいい結果ではない時があります。そういう場合も、僕に言わせれば、それ は失敗例ではない。一つの成功例です。情報が入ってくるからです。こうやって、こういう仮定のもとにこうやれば、こういう結果になるぞ。だから、その結果 を徹底的に分析する。そんな分析をして正解が分かるわけではないが、自分のやった結果を自分の頭で分析しておく。そうすると時間がたって、それを解決する ような局面が現れてきます。失敗したと思ってやめたら何も残りません。やれば自分がやったことの整理にもなります。新しい道ができたときに人より先に気が つきます。

――名城大学の学生たちエールをお願いします。

学生の時期というのは今しかない。こんなに自由な時間はないと思います。我々の学生時代は60年安保のころですが、デモには真面目に参加しました。授業は 休講になりましたが、午後の集会、デモまで時間があると、いつでも読みかけの本を木陰で読んだり、友達と一緒に輪読しました。デモが流れ解散になって終わ ると、興奮しているもんだから、友達同士別れがたい。「喫茶店に行くか」とか言って、そこでまた議論を始める。だから、60年安保の年は楽しかった。時間 があったし、いろんなことを勉強できました。

――時間を有意義に使うということですね。

「有意義に使う」というのは嫌いです。思いきり自分の関心があることをやっていればいいと思います。有意義に使おうなんて思うと、有意義に過ごしました、 はい、後は何をやりましょうということになる。自分の好きなことを考えたらエンドレスです。「ここまで勉強してやるぞ」なんていう勉強法は大嫌いです。 きょうはここまであげるぞとか。我々のころの「あげるぞ」とは長編小説を読むときの言葉でした。「ロマン・ロランをあげた」とか。もっとすごいやつがい て、吉川英治の「宮本武蔵」全巻を本屋で立ち読みした。その日読み終えたところにちゃんと紙切れをはさんでおく。おおらかな時代で、本屋のオヤジと顔なじ みになって、腰掛けを持ってきてくれました。

――専門書以外で、お薦めの本はなんですか。

私は雑学的な読み方ですから何でも読みました。マルクスの「資本論」の1は面白いです。出版社によって巻数は違うかもしれません。僕は1~3巻の1が面白かった。3までは読み切れませんでした。

――いつごろ読まれましたか。

大学2、3年生のころです。60年安保のころです。そういう関係でヘーゲルの「小論理学」とかそのほかにもヘーゲルの本は結構読みました。岩波新書で買っ て持っています。難しいから完全に読み切ったというのはないですが、「小論理学」だけはかなり真面目に読みました。それから、もう一つ印象に残ったのは、 スウェン・ヘディンの「さまよえる湖」です。それは当時、井上靖も「楼蘭」に書きました。中国の奥地、楼蘭(ろうらん)という東経90度、北緯50度くら いのところにあるそれほど深い湖ではなのですが、ヒマラヤの雪解け水が湿地帯みたいなところに流れてくる。時と場合によって湖になる。歴史書には2000 年くらい前、ここに、こういう湖があったと書いてある。探しにいくとそこにない。別の時に立ち寄るとこつ然と現われてくる。雪解け水がたまるので、気象条 件とかいろんな条件によって動く。それを井上靖が「さまよえる湖」と言って、日本で有名になりました。仲間で井上靖が好きなやつがいて読んでくる。そのう ちオリジナルを読むべきだということになってヘディンを読みました。あとは推理小説的なんですが、古代文明で失われた文字を扱ったものも大好きです。

――ありがとうございました。先生が薦められた本を名城大学新聞でも紹介したいと思います。

11091622943.jpgインタビューを終えた亀山さん、加藤さんとともに
(共通講義棟北 N236号室で)

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