在学生・教職員/ニュース 【卒業生の皆さまへ】名城大学学長からの「告辞」

告辞

 卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。

 今回の新型コロナウイルス関連肺炎で亡くなられた方々にお悔やみ申し上げると共に、罹患された方々の一日も早い回復と、感染の早期終息を心よりお祈りいたします。
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、やむを得ず通常の卒業式の挙行を中止いたしました。皆様の門出の式でありますので、可能な限り実施することを模索いたしましたが、社会的な影響とはいえこのようなこととなり、卒業式を楽しみにしていた皆様には大変申し訳なく思います。皆様におかれましても、くれぐれも感染には気を付けていただきたいと思います。

 本日、皆様一人一人に学位記が授与されました。対象となったのは大学院博士課程、修士課程、法務研究科専門職学位課程の修了者、合計3,000名を超える方々です。皆様を社会に送り出すことができましたことは、名城大学にとりまして、大きな喜びであります。本日ご卒業・修了を迎えた皆様と、今までご子息・ご息女を支えてこられましたご家族の皆様に心からお祝いを申し上げます。

 本学は、田中壽一先生が前身である名古屋高等理工科講習所を開設した1926年から、幾多の障害を乗り越え94年を経て、現在の9学部10研究科を擁する日本有数の文理融合型の総合大学に発展しました。これまでに卒業生は20万人以上います。卒業生はこの中部圏を中心に、産業界や教育界、また政界や経済界など、さらに国の内外のさまざまな分野で活躍しています。本学としましても大変心強く思っているところです。皆様も、就職あるいは大学院への進学と、それぞれ新たな道に進まれることになります。その意味においては、本日の卒業は、皆様にとって一つの大きな節目であると同時に、新たなスタートでもあります。

 皆様がこれから出ていく社会は、科学技術、特に情報通信技術のさらなる進展により、情報化やグローバル化が加速度的に進み、社会のシステム、文化までもがどんどん変わっていくと思われます。第4次産業革命によるSociety5.0の実現もそれほど遠いことではありません。10~20年後には日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能となる、という推計もあります。このような、我々大学のスタッフも皆様のご家族も経験したことのない激動する社会構造の中を、皆様は力強く生き抜いていかなければなりません。

 本学は2026年に開学100周年を迎えます。本学ではこの年を目標年とする中長期計画「MS-26」を2015年に策定し、現在、さまざまな取り組みを行っています。この計画では、本学に係わるすべての方々と共有したい価値観として、「生涯学びを楽しむ」という言葉を掲げています。
 この言葉の意味するところは、これからの変化の激しい社会を力強く生き抜いていくためには、在学中はもとより卒業後においても「人生を通して学びを楽しむ」ことが大切であるということであり、これを理解して実際に行動してほしいという考えの下、定められました。

 皆様が本学で学んだ4年間、あるいは6年間は、これから続く長い人生の中の一つの通過点ではありますが、社会へと巣立つ前の大切な準備期間であり、人生を豊かにする、「生涯学びを楽しむ」ための土壌づくりの期間であったとも言えます。ここで言う「学びを楽しむ」とは、いずれの時代においても積極的に学修し、その知識や技術、そして経験値を自分のものにして成長していくことを意味します。この学ぶという力は、先ほどお話ししたこれからの時代において、最も大切なものになると思っています。

 これから皆様は、正解のない多くの課題に直面すると思います。それらの課題に対して、自分で考え、自分で解決するための方策を見つけていかなければなりません。そのような力を、皆様は名城大学での経験を通して培ってこられました。本学での学びを通じて知識を深め、さまざまな経験によって成長した自分に自信をもって、社会へ、そして世界へ羽ばたいていってください。

 私は、名城大学開学以来初の卒業生の学長です。卒業される皆様の将来への期待を込めて、学長として、そして一人の先輩として激励の言葉を贈り、門出を祝福させていただきます。

 まずは、学長としての激励の言葉です。皆様もご存じのように、2019年12月に大学院理工学研究科教授の吉野 彰先生がノーベル化学賞を受賞されました。私も授賞式に同行いたしました。ノーベルレクチャーや授賞式での吉野先生の紹介の際に、もちろん旭化成名誉フェローとも呼ばれましたが、‘Meijo University, Nagoya, Japan’とはっきりと呼ばれていました。その時の感動は今も忘れることはできません。皆様は日本でも数少ない、ノーベル賞を受賞した先生がおられる大学の卒業生であることに誇りをもって、吉野先生に負けない活躍をしていただきたいと思います。また、新聞報道で見た方もいると思いますが、ストックホルムで吉野先生と対談をした際に、本学学生に贈る言葉はありますか?と尋ねたところ、「若い頃は、自分で限界を作らず、小さくまとまることなく失敗を恐れずに、どんな分野でもよいので、これと思う分野で尖ってほしい」と言っておられました。吉野先生は40歳手前でリチウム電池の開発に一つのめどをつけ、それから何年もかけて実用化に向けた研究を続けられたと聞いています。皆様も、卒業後の新しい世界の中で、しっかりと自分のやるべきことを考え、妥協することなく前進していただきたいと思います。

 次に先輩として皆様に贈る言葉です。私は兵庫県姫路市の生まれです。同郷の先人で尊敬している一人に、奈良東大寺の元管長で大仏殿の昭和の大修理を行った清水公照という方がいます。彼は、普段の生活の中で自分に対して次の6つの戒めを掲げて守っていたそうです。「なまけるな」、「おこるな」、「いばるな」、「あせるな」、「くさるな」、「おごるな」です。何も難しいことは言っていません。人として生きていく上で当然の内容ばかりです。しかし、時として忘れることがある内容でもあります。先ほども触れましたが、皆様は新しい時代の荒波の中で活躍することになります。しかし、どんなに社会の構造が変化しようとも、人間としての心構えは昔も今も、もちろん将来においても変わることはないと思っています。この6つの戒めを皆様も心に留め、悔いのない尖った人生を送っていただければと思います。

 そして、くじけそうになったら母校名城大学へ帰ってきてください。名城大学は皆様の第二の故郷です。教職員一同、皆様を温かく迎え、次のステップへ進むための種々の対策を一緒に考えていこうと思っています。

 最後になりますが、6年後の2026年に開学100周年を迎える名城大学は、これまでの20万人以上の卒業生をはじめ、ご家族の皆様、地域の皆様のお力を支えとしながら、在学生と共に、開学以来初の卒業生の学長である私も含めた教職員が一丸となって、さらなる発展に向けて力強く進んでまいる所存です。本日卒業されます皆様には、是非、名城大学のこれからを楽しみにしていただきたいと思います。

 本学は、今後も皆様の活躍を応援してまいります。社会に出てから、もう一度学びたいという人はいつでも足を運んでください。これからの人生、学びの姿勢を忘れることなく、名城大学の卒業生として胸を張って歩まれますことを、切に希望し、学長の告辞といたします。

令和2年3月17日 
名城大学    
学長 小原 章裕

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