トップページ/ニュース ノーベル化学賞受賞者の業績に農学部の寺田理枝教授がコメント
ゲノム編集技術の「クリスパー・キャス9」は学生にも指導
10月5日から2020年ノーベル賞の発表が相次ぎ、6日は物理学賞、7日は化学賞の受賞者が決まりました。2019年にノーベル化学賞の吉野彰大学院理工学研究科教授・特別栄誉教授を出した本学には、「2年連続」を期待した報道陣が多数訪れ、天白キャンパス共通講義棟ⅡのK261多目的室で発表の模様を映すYouTubeの中継をかたずをのんで見守りました。
新型コロナウイルス感染防止のため部屋に入れる人数を絞り、6日は16社・36人、7日は17社・38人が出席しました。両日とも本学から受賞者は出ませんでしたが、関係者は来年に希望を託していました。
化学賞は、生物のゲノム(全遺伝情報)を効率よく改変できる「ゲノム編集」の技術である「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)」を開発した、欧米の女性研究者2人が受賞します。この技術は農学をはじめ生命科学の研究手法を一変させ、広く活用されています。ゲノム編集に詳しい本学農学部生物資源学科の寺田理枝教授(育種学)は、発表を受けて記者の質問に答えました。
科学研究を飛躍的に進展させた一方で倫理課題も
寺田教授は、イネでクリスパー・キャス9を使った実験を卒研生と一緒に進めました。学生も遺伝子改変の結果が色や形でわかる点などに興味を持ち取り組んでいます。同技術の開発によって、遺伝子の働きを知ることが格段に容易になったといいます。標的遺伝子をピンポイントで破壊でき、破壊した植物と、破壊しない植物を比較すれば、さまざまな標的遺伝子の働きを突き止めることができるのです。哺乳類でも菌類でも何にでも使える技術だと説明。同技術を使って、農学の分野では、大型のトマト、低グルテンのコムギ、褐変色しないマッシュルーム、高収量のイネなどが既にできているといいます。
「クリスパー・キャス9の開発で科学研究が飛躍的に進展したが、倫理的に許される一線も同時に考えて研究しなければならない」と、意義と課題を語りました。