トップページ/ニュース - 植物の香りを用いた新しい害虫管理法 - 食害を受けた植物の香りで特定の天敵を誘引し、 標的とした害虫の発生を抑制

研究成果を農学部の上船准教授らが発表

記者会見した(左から)高林純示教授、上船雅義准教授、安部順一朗上級研究員 記者会見した(左から)高林純示教授、上船雅義准教授、安部順一朗上級研究員
記者に研究成果を説明する上船准教授 記者に研究成果を説明する上船准教授

植物の香りを用いた新しい害虫防除法に関する研究成果が11 月11 日、英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「Royal Society Open Science」に掲載されました。農学部生物資源学科の上船(うえふね)雅義准教授(応用昆虫学)らの研究です。上船准教授は11月17日、安部順一朗上級研究員(農研機構西日本農業研究センター)と高林純示教授(京都大学)と一緒に天白キャンパス研究実験棟Ⅱで農研機構と共同発表という形で記者会見しました。

上船准教授らは、食害を受けた植物の香りを用いて天敵の行動を操作し害虫の発生を抑えるという新たな害虫管理法の可能性を示しました。

論文のタイトルは「Targeting diamondback moth in greenhouses by attracting specific native parasitoids with herbivory-induced plant volatiles(植食者誘導性植物揮発性物質を用いて特定の土着捕食寄生者を誘引することによりハウス内のコナガを標的にする)」です。

発表の概要は以下の通りです。

植物は、害虫(植食性昆虫)から食害を受けると特異的な香りを放出し、その天敵(捕食者や寄生蜂など)を誘引することで身を守ることができます。害虫の食害を受けた植物(被害植物)の香りのブレンドは、害虫の種によって変化します(香りの害虫特異性)。さらに天敵はその変化に対応して、特定のブレンドに誘引される場合があります。そこで、被害植物が放出する香りの害虫特異性に注目し、その応用の可能性をアブラナ科野菜の重要害虫のコナガを標的にして研究しました。これまでにコナガが食害したキャベツが放出する香り成分中の4成分をブレンドすることで、コナガの土着天敵であるコナガサムライコマユバチを誘引できることを報告しました。本研究では、合成した4成分を剤形化した天敵誘引剤ならびに誘引した天敵を維持するための天敵給餌容器を用いた実証試験を行いました。その結果、これらを設置したハウスでは、設置しなかったハウスに比べてコナガの発生を抑制できました。この成果は、特定の天敵を誘引する効果を持つ合成した被害植物の香りを用いることで標的とした害虫の発生を抑えることに世界で初めて成功したものとなります。

4社の記者が参加しました。記者からは、どんな作物に応用できるかという質問があり、上船准教授は「マメ科、ナス科などの果菜類で実用化の可能性があると思う」と答えました。

掲載論文

  • 情報工学部始動
  • 社会連携センターPLAT
  • MS-26 学びのコミュニティ