トップページ/ニュース 探査機はやぶさ2のカプセル帰還の陰で農学部卒業生が活躍
故・岡本千里さんが試料採取のための金属塊発射の技術で
日本の探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウの石や砂が入ったとみられるカプセルを12月6日、無事に地球へ送り届けました。新型コロナウイルス感染症の拡大で暗雲が漂う中、世界中に明るい話題をもたらしました。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)のこの一大プロジェクトには、本学農学部応用生物化学科卒の故・岡本千里さんがかかわりました。
岡本さんは農学部では助教授時代の小原章裕学長の研究室に属し食品の機能について研究していました。名古屋大学大学院環境学研究科博士後期課程では荒川政彦准教授(現・神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻教授)に師事し、小惑星同士の衝突破壊の研究をして博士(理学)を取得しました。JAXA宇宙科学研究所研究員を務めていましたが、乳がんのため、はやぶさ2がリュウグウに到着した翌月の2018年7月、38歳で亡くなりました。死去を惜しみ、2019年、リュウグウの岩の一つが「オカモト岩」と名付けられました。
荒川教授によると、火薬類取扱保安責任者の国家資格を持ち、火薬銃を使う技術にすぐれ、コミュニケーションのよくとれる、若手の優秀な研究者だったといいます。
はやぶさ2は、金属の塊をリュウグウに撃ち込み、地表に穴を開けた後、石や砂を採取して地球に持ち帰るという重大な任務を負っていました。岡本さんは撃ち込む技術と装置でプロジェクトを支えました。
持ち帰ったカプセルの中身の研究がJAXA宇宙科学研究所で進められていますが、JAXAは12月15日、「リュウグウ由来のサンプルを確認しました」と発表しました。「どっさり」という報道もあります。
荒川教授は「岡本さんは、あれだけの量の試料が得られるとは予想していなかっただろう」と言いながら、リュウグウの成果を見ることなく早世した若手研究者を惜しみました。
岡本さんは大阪市出身。母の昭子さんは「がまん強く負けず嫌いな子でした。前向きで、私がネガティブなことを言うと、『言霊があるんやからほんまになるよ』と怒られました。コロナ禍で暗い年でしたが、娘がかかわったプロジェクトが明るいニュースを届けてくれて誇らしい」と語りました。
岡本さんについては下記のサイトで詳しく紹介されています。