在学生・教職員/ニュース 農学部環境動物学研究室の木下さんが「生きもの『なんで?』行動ノート」を執筆

学術論文を基に生きものたちの驚きの行動や生態を親しみやすいイラストで図解

                「生きもの『なんで?』行動ノート」から(いずれも「SBクリエイティブ」提供)                 「生きもの『なんで?』行動ノート」から(いずれも「SBクリエイティブ」提供)

本学農学部環境動物学研究室に所属する日本学術振興会特別研究員で、イラストレーターとしても活動する木下千尋さんが、研究者の着眼点から見た生きものたちの驚きの行動や生態とその意味を楽しくイラストで図解した「生きもの『なんで?』行動ノート」を執筆し、このほど出版社「SBクリエイティブ」から発売されました。

木下さんは行動生態学が専門で、これまでにウミガメの潜水行動などを研究し、昨年4月からは環境動物学研究室で海鳥の「オオミズナギドリ」とウミガメの研究を進めています。また、大学時代から「きのしたちひろ」名義でイラストレーターとしても活躍しており、昨年は科学絵本雑誌「たくさんのふしぎ」(福音館書店)11月号のイラストも担当しました。

「生きもの『なんで?』行動ノート」は、「研究者がどんなことに疑問を持ち、どんな方法で研究してその結果をどう解釈しているかを分かりやすく伝えることで、『研究者』とはどういうものかを知ってほしい」と考え、東京大学大学院時代の2018年ごろから得意のイラストを生かして作り始めた同人誌「科学論文イラスト図解」が編集者の目に留まり、2021年から新たに書き下ろしを加えていって完成させました。

A5判、160ページの本では、小さなアリから大きなクジラまで、動物や昆虫、海洋生物など「52+α」の生きものたちの行動や生態、その裏側を、国内外の研究者の学術論文を基にそれぞれ見開き1ページで紹介しています。見開きの左側では主人公となる個性豊かな生き物を紹介し、その下で研究者が考えたナゾや疑問を提示。右側では調査や研究で分かったことからそのナゾや疑問の核心に迫るという構成になっています。

「研究者という職業にも興味を持ってもらえれば」と木下さん

  • 執筆した本を手にする木下さん 執筆した本を手にする木下さん

例えば、集団で狩りをするライオンは「それぞれ決まった役割はあるのか?」と疑問を持った研究者が5年間にわたって観察して分析した結果、ラグビーのように得意のポジションに分かれて特定の陣形をとっていたことが分かったことや、アザラシが浅い潜水をするのは「子どもアザラシに泳ぎ方を教えているから」と結論が導かれ、「まさにアザラシの極寒スイミング」とユーモラスに紹介しています。

「私自身も読むことが苦手なので、できるだけ文字を読まずに絵だけで研究内容を伝える方法を編み出しました」と木下さんが話すように、どのページも親しみやすいイラストで描かれた生きものたちでいっぱいで、「子どもは絵を楽しみ、文章は親がかみくだいて説明することで、親子一緒に楽しく読んでコミュニケーションを取っています」という読後の感想も届いているそうです。

研究者という職業に興味を持ってもらうため、巻末には「ナゾを解く裏で何が起きてる? 研究現場のあれこれ」や「新発見を世界に知らせる『論文』製造法」というコーナーも設けています。木下さんは「家の庭にいるようなカエルの不思議なども紹介しており、そんな生きものたちの不思議が分かると、散歩をしているだけで楽しくなります。小学生から大人まで幅広い方々に読んでもらい、皆さんをそんな世界に引き込みたいです」と話しています。

「生きもの『なんで?』行動ノート」は税込み1540円です。

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