在学生・教職員/ニュース 外国語学部の岩井眞實教授が評伝「伝統演劇の破壊者 川上音二郎」を出版

明治期の演劇人、俳優で新派劇の創始者の波乱万丈の人生をたどる

  •           著作を手にする岩井教授           著作を手にする岩井教授

本学外国語学部の岩井眞實教授(演劇学・近世文学専攻)が、新派劇の創始者で日本の近代演劇の発展に貢献した川上音二郎(1864~1911年)の波乱万丈の人生をたどった評伝「伝統演劇の破壊者 川上音二郎」を出版しました。岩井教授は「最新の研究成果をまとめながら高校生や大学生にも親しめる読み物にしました」と話しています。

博多出身の音二郎は、自由民権運動の弾圧が激しさを増す中、演劇一座を率いて興行師として活躍。世情を風刺した「オッペケペー節」で評判を呼んだことでも有名です。さらに、新派劇では歌舞伎をしのぐ人気を博し、戦争劇や西洋演劇を日本の設定に置き換えた翻案劇など新たなジャンルを開拓して演劇史上に大きな功績を残した人物です。

岩井教授は福岡県の大学に在職していた際、博多では「郷土の誇り」と英雄視されていた音二郎の研究に着手しました。2016年に名城大学に移った後、鶴舞図書館で当時の新聞を調査し、それまではっきりしなかった自由民権運動での音二郎の活動実態や中央と地方のつながりが明らかになり、こうした研究成果も盛り込んで本書に仕上げました。

ほら吹きで老獪な興行師の一面も紹介 「元気をあたえてくれる人物」と岩井教授

  •               書籍の表紙               書籍の表紙

本書では、博多時代の音二郎の動静を詳述しているのをはじめ、自由民権運動での足跡や一座の旗揚げ、芝居が当時の最大のメディアだった時代に手掛けた日清戦争劇、欧米での興行とその人気ぶり、劇場「帝国座」の建設など、明治期を駆け抜けた近代演劇の先駆者・音二郎の生涯と演劇史に残る功績を紹介しています。

これまでは音二郎をヒーロー視する評伝が大半でしたが、「ほら吹きで老獪な興行師というダーティーな面も描こうと考えた」と岩井教授。高利貸しに手を出し、劇場が完成した時には人手にわたっていたエピソードや、二度の総選挙での落選などで妻の貞奴とともにボートで東京湾から日本脱出の逃避行を試みた逸話なども紹介しています。

昨年の「近代博多興行史-地方から中央を照射する」(文化資源社)に続く2作目の単著となった本書で綴った音二郎について、岩井教授は「歴史に残した功績も大きいが、姿を見れば元気が出てくる人。落ちこぼれで汚い面、みっともない面も持ちながら前に進んでいく。音二郎の人生を見たら、何でもできると元気を与えてくれます」と話しています。

「伝統演劇の破壊者 川上音二郎」(海鳥社)はA5判、248ページ、税込み2420円です。

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