トップページ/ニュース セカチカセミナー「戦争の時代の日本の平和」を開催

講義をされている小原先生 講義をされている小原先生

国際化推進センターは12月15日、天白キャンパスで本学教職員及び学生を対象に令和5年度セカチカセミナーを開催しました。「セカチカセミナー」とは「世界に近づくきっかけになる」という意味をこめたセミナーです。

本学特任教授の小原雅博先生が「戦争の時代の日本の平和」をテーマに講演し、78人が聴講しました。小原先生は、アジア大洋州局審議官や在上海総領事を歴任され、その後、東京大学教授として国際政治と外交を教えられました。そんな経歴を活かし、外交官としての経験と国際政治学者としての知見の双方から、世界情勢の現状と展望について講義されました。

毎朝3時間以上世界の主要メディアや専門誌に目を通される小原先生は、講演当日未明に駆け巡ったニュース(ウクライナのEU加盟交渉の開始の一方でウクライナ支援予算は未採択)から話を始め、国際政治が大きな転換点にあることを示唆しました。戦争や気候変動などの複合危機が深刻化する一方で、対話や国際協調ではなく暴力や分断が広がっているとの認識を披歴し、特に、ウクライナ戦争やハマス・イスラエル戦争の衝撃や影響がいかに重大であるかを本質的な論点から解きほぐされました。例えば、リアリストとリベラリストの論争や国際社会と国内社会の相違、或いは経済安全保障が意味することなどにも敷衍されました。また、2024年は世界的に選挙の年となるとして、地政学リスクも孕む台湾、ロシア、アメリカでの選挙の行方について解説されました。その上で、昨年11月に上梓された『戦争と平和の国際政治』でも論じられている地政学や歴史の具体的事例も引きながら、こうした変動に直面する日本の課題と役割についても触れました。世界的軍拡の時代に防衛力の規模や態様はどうあるべきか、国民一人ひとりが自分の問題として考える必要があると強調され、貧困や気候変動、そして「核のない世界」を目指すという市民社会の理念やグローバル・サウスとの連携・協力などについても議論を深めることが肝要であると述べました。最後に、そのためにも若者の政治参加が不可欠であると締めくくられました。

講演後の質疑応答では、「どのメディア媒体を信じるべきですか」という学生からの質問に、「偽情報やプロパガンダが広がる現代においては、メディアは正確な情報をタイムリーに報じるかがかつてなく問われるが、一方で、情報そのものよりもその背後にある本質的問題をあぶり出す役割も重要になっている。私たちにできることは、同じ媒体の解説や分析を過去と現在とで比較し、それが正確だったか否か、不正確だった理由は何かを確認する作業によってメディアや専門家を評価し、信頼できるソースをいくつか持っておくことではないか」と、具体的方法を含め答えられました。

参加した学生は「同じ戦争でも2つの視点があり、それぞれに正義があり、考え方が異なることを知りました。米中の対立についてもその国の選挙だけでなく、周辺国の選挙も大きな影響をもつことも知りました。」と感想を話しました。

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