学部・大学院/ニュース 情報工学部学部生によるEプロチーム「眠れぬ獅子」、IVRC2025で総合3位・川上記念賞を受賞 書類審査落選からの大逆転 学生主体で"自然界最強のパンチ"をVRで再現

Eプロチーム「眠れぬ獅子」のメンバー Eプロチーム「眠れぬ獅子」のメンバー

2025年10月25日(土)・26日(日)に東京・テレコムセンターで開催された Interverse Virtual Reality Challenge(IVRC)2025 の決勝大会「LEAP STAGE」において、名城大学情報工学部情報工学科の学部4年生チーム 「眠れぬ獅子」 が、川上記念賞(総合3位) および 坪井一菜賞(ゲスト審査員賞) を受賞しました。

本チームは、名城大学の「学びのコミュニティ」によって結成された学生団体です。
当初は書類審査で一度落選していましたが、IVRCの「チャレンジ枠」から再挑戦。予選大会「SEED STAGE」では全国の強豪大学20チームを相手に高い評価を受け、見事決勝進出を果たしました。

書類審査から決勝までの道のり

IVRC2025には全国から96企画が応募。そのうち20作品が書類審査を通過し、さらに4作品が「チャレンジ枠」として特別展示に参加しました。
予選大会「SEED STAGE」では、計24作品のうち10作品が決勝大会「LEAP STAGE」へ進出。最終的に、フランス・Laval Virtualからの招待作品を含む11作品が東京での決戦に臨みました。
審査の結果、上位入賞チームは以下の通りです。

  • 総合優勝(IVRC大賞):大阪大学大学院 情報科学研究科
  • VR学会賞(総合2位):フランス・Laval Virtual チーム
  • 川上記念賞(総合3位):名城大学チーム「眠れぬ獅子」

「眠れぬ獅子」は、作品のインパクトに加え、幅広い人が体験しやすいユニバーサルデザインが高く評価されました。
作品の企画段階では、チームメンバーが大会創設(1993年)からの過去作品をすべてリスト化し、約500件を分析。過去にない新しいアプローチを目指して生まれたのが「シャコパンチ」です。

作品概要:「シャコパンチ」 ― シャコになりきってパンチを放てるVRシステム

受賞作品「シャコパンチ」は、海洋生物モンハナシャコが放つ“自然界最強のパンチ”を体験できるVRシステムです。
体験者は、前腕に装着する「シャコてデバイス」と、膝立ち姿勢を支える「台シャコ」を使用して体験します。
人差し指につけた圧力センサーを使い、“デコピン”のように指を弾くと、バーチャル空間でシャコパンチを繰り出せます。
シャコのパンチとデコピンはいずれも、弾性エネルギーを蓄えて一気に解放するという共通原理を持っており、この発想から本システムが生まれました。

パンチの瞬間、装置内部では回転円盤を急停止させて生じる衝撃力とソレノイドによる瞬間的な打撃を組み合わせることで、実際に何かを殴ったような感触を表現します。
さらに、複数の腕用エアバッグ(腕浮き輪)に空気圧を順番に送り込む仕組みを用いて、水中での衝撃波(キャビテーション)が腕を伝っていく感覚を表現。まるで“水中でパンチの衝撃が走る”ような体験を実現しました。

実験では21~36歳の被験者13名を対象に、圧迫時間差が何ミリ秒のときに動きとして感じられるかを探りました。
その結果、各エアバッグの圧迫時間差を30~50ミリ秒とすることが、最も衝撃波が腕を伝う動きの錯覚(仮現運動)を提示できることを確認し、衝撃方向の識別正答率は90%を超える高い再現性を示しました。

「シャコパンチ」の詳しい紹介映像はこちら

  • 大学祭(11月1日開催)での体験ブースの様子 大学祭(11月1日開催)での体験ブースの様子

ゲーム体験を通じた環境意識の啓発

VR体験では、海洋ごみで構成された敵を「シャコパンチ」で破壊し、汚染された海をきれいにしていくというゲーム要素を導入。
VRヘッドセットとヘッドフォンを組み合わせることで没入感を高め、科学的知見に基づく触覚再現技術と環境問題への意識喚起を融合しました。
審査員からは「技術とストーリー性の融合が優れている」と高く評価されました。

書類落選からの“復活劇”

  • ユニバーサルデザインを意識し改良した「座位シャコ」 ユニバーサルデザインを意識し改良した「座位シャコ」
  • より没入感が得られる「台シャコ」 より没入感が得られる「台シャコ」

「シャコパンチ」は当初、IVRC2025の書類審査を通過できませんでした。
しかし、学生たちは諦めず作品を完成させ、第30回日本バーチャルリアリティ学会(立命館大学・大阪いばらきキャンパス)で“復活枠”として技術展示と口頭発表を実施。
同会場で行われたIVRC予選審査で評価を受け、決勝大会への切符を掴みました。チャレンジ枠からの入賞は「眠れぬ獅子」が初の快挙です。

決勝進出決定後もチームは改良を続け、幅広い年齢層が楽しめるようにと、座った状態で体験できる「座位シャコ」を新たに考案。ユニバーサルデザインを意識した進化を遂げました。
企画から設計、製作、評価実験、プレゼンテーションに至るまで、すべて学生主体で進行。まさに学生たちの情熱と努力の結晶が「シャコパンチ」です。

大会後の取材では、チームメンバーの安藤 暢恭さん(リーダー)、菅本和希さん、荻野悠月さんが次のように語っています。
「大会ルールに合わせていったん完成させましたが、ゲーム性や利用者視点で見ればまだ改善点が多く残っています。これからも改良を重ね、納得のいく作品を作り上げていきたいです。」

参考:IVRCとは
IVRC(Interverse Virtual Reality Challenge) は、学生によるインタラクティブ作品を競う世界的なVRコンテスト。
1993年に日本で始まり、現在はフランスの「Laval Virtual」と連携した日仏合同開催形式を採用しています。
技術力だけでなく、創造性・体験性・社会的意義など、多面的な観点から審査が行われることが特徴です。

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