開学100周年記念サイト/ニュース 国家プロジェクトの設楽ダム建設で活躍する卒業生たち

設楽ダム本体工事近くの新松戸橋の建設の様子 設楽ダム本体工事近くの新松戸橋の建設の様子
豊川の水を利用している地域 豊川の水を利用している地域

2034年度の完成を目指す、愛知県北設楽郡設楽町の「設楽ダム」。奥三河の地で、この国家プロジェクトのバトンを引き継ぎ、奮闘する卒業生たちがいる。国土交通省中部地方整備局設楽ダム工事事務所の調査課 建設専門官の山田真理子さん(理工学部土木工学科2001年卒)や設楽町役場企画ダム対策課 主任主査の林知宏さん(法学部応用実務法学科2003年卒)らだ。

「設楽ダム」は、愛知県東三河地域の代表的な一級河川である豊川の上流に建設が進められている多目的ダム。洪水調節、渇水対策、水道水や農業用水の供給、河川環境の整備など、地域の振興に貢献することが期待され、2009年2月の建設同意からは、国土交通省中部地方整備局設楽ダム工事事務所と愛知県、設楽町で連携して事業が進められている。

山田さん「自然環境にも配慮しながらダム建設を進めています」

  • 山田さん(左)と大越さん(右) 山田さん(左)と大越さん(右)
  • 「ネコギギ」の保全活動を紹介するパネル 「ネコギギ」の保全活動を紹介するパネル

山田真理子さんは「生まれ育った愛知を良くしたい。規模の大きな仕事をしてみたい」と国土交通省中部地方整備局を志望した。これまで河川環境の業務に携わる機会が多く、過去には、国の天然記念物に指定されている柿田川の外来種駆除や生物調査といった自然再生や保全業務などを担当してきた。

設楽ダムでは、ダム建設で影響を受ける可能性がある天然記念物でナマズの仲間である純淡水魚「ネコギギ」がダム完成後にも生息できるよう、移植場所や生息環境改善の検討に取り組んでいる。「天然記念物で個体数も少なく、知見があまりない。別の場所に移植してもちゃんと生息できるかわからない」。そこで、どんなところに生息しているか、生息するための条件は何かの調査からはじめ、その条件に合いそうな場所を選定しているという。「条件が揃っていない場合は、ネコギギの住処になるような石組みを作るなどの生息環境の整備を行い、その後、ネコギギを放流して生息できるかどうかを野外実験で確認しながら検討を進めています。」と、自然環境にも配慮しながら人々の安全・安心のために設楽ダムを建設していることを説明した。

山田さんと同じ設楽ダム工事事務所には卒業生の大越来明さん(理工学部社会基盤デザイン工学科2022年卒)も勤務している。大越さんは2023年度までは岐阜国道事務所で勤務し、昨年4月に設楽ダム工事事務所工務課に配属になった。
ダム建設は、ダムの本体工事以外に、貯水に伴いこれまで使用していた道路や橋梁がダムに沈むことになるため、その付け替え道路や橋梁、トンネル工事も並行して行われている。設楽ダムでは国道257号、設楽根羽線、瀬戸設楽線、小松田口線などが対象で、大越さんが所属する工務課では設計から工事の発注等を担当しているという。「ダムの本体工事完成前に、付け替え道路を完成させる必要があります。実際に工事をしてみないとわからない部分も設計段階にはあるため、その課題を日々クリアしながら業務を進めています」と仕事の難しさとやりがいを話した。

  • 設楽ダム本体建設予定地 設楽ダム本体建設予定地
  • 模型で工事状況を説明する大越さん 模型で工事状況を説明する大越さん

林さん「文系・理系の違いはあっても、同じ大学出身という親近感」

  • 林さん(左)と山田さん(右) 林さん(左)と山田さん(右)
  • 設楽町役場に勤務する卒業生。左から小川さん、 北口さん、米倉さん、林さん、関谷さん 設楽町役場に勤務する卒業生。左から小川さん、 北口さん、米倉さん、林さん、関谷さん

林知宏さんは「両親が生まれ育ったこの地域に愛着があった」と設楽町役場を志望した。卒業した2003年は「就職氷河期」で、公務員試験も容易ではない状況の中、「ダメ元で挑戦した」と振り返る。これまでに、総務や税務、障がい者や高齢者の福祉、林政、農政など、多岐にわたる業務を経験してきた。
2023年度からは企画ダム対策課に配属され、ダム対策やそれに伴う地域振興などを担っている。現在は、設楽町第3次総合計画の策定を主に担当しており、「総合計画は町のすべての事業の基本となるもので、住民の皆さんの意見やアイデアを参考にしながら計画づくりに取り組んでいる」と話す。
少子高齢化が進む地域で人手不足の課題はありつつも、「担当できる業務の幅は広く、多くの経験を積むことができる。人口が少ない分、顔が思い浮かぶ人たちの生活に直接つながる仕事の実感が持て、『ありがとう』の一言が何よりの励みになる」と笑顔で話した。

現在、設楽町役場には、林さんを含めて、小川泰徳さん(法学部法律学科1987年卒)、関谷恭さん(経済学部経済学科1991年卒)、米倉和彦さん(法学部法律学科1992年卒)、北口達也さん(法学部応用実務法学科2011年卒)の5人の卒業生が勤務している。

設楽ダム建設工事で、つながる卒業生たち。普段の仕事でも林さんは山田さんと関わりがあり、林さんは「名城大学という総合大学で、文系・理系の違いはあっても、同じ大学出身で親近感があり、自然と会話が弾む」と話せば、山田さんも「困った時に助けてもらうこともよくあり、同窓生が近くにいてくれることは心強い」と応じた。

「ぜひ後輩の皆さんと一緒に仕事ができたら」

林さんは「名城大学の卒業生は、さまざまな分野で活躍しています。後輩の皆さんには、将来のキャリアを考えながら資格取得に励むことをお勧めします。とはいえ、勉強だけでなく、友人との時間も大切にして、充実した学生生活を送ってほしいです」とメッセージを送り、山田さんは「国土交通省中部地方整備局も近年、女性の活躍がめざましく、年々女性職員の割合も増えています。性別に関係なく、スケールの大きいインフラ事業に携わることができる環境です。ぜひ、後輩の皆さんと一緒に仕事ができたらうれしいです」と期待を寄せた。

「新城・設楽卒業生の会」のために特別見学会を実施

設楽町を含む卒業生の会として「新城・設楽卒業生の会(会長:丸山繁治)」がある。設楽町役場や国土交通省中部地方整備局設楽ダム工事事務所に卒業生がいるため、その協力もあり10月16日、同卒業生の会16人が参加して「設楽ダム工事現場視察見学会」が行われた。
設楽町役場内を小川さんや林さんが案内し、その後、設楽ダム広報展示室で担当者から説明を受けた後、通常の見学では入ることができない建設現場の見学が実現。参加した同卒業生の会のメンバーは、想像を超える規模の建設に感嘆の声が相次いだ。
昼食には設楽町役場で働く卒業生も駆けつけ、先輩卒業生との交流も行われた。

  • 新城・設楽卒業生の会のメンバーに紹介される 山田さんと大越さん 新城・設楽卒業生の会のメンバーに紹介される 山田さんと大越さん
  • 小川さんと林さんが役場内も案内 小川さんと林さんが役場内も案内
  • 設楽ダム広報展示室で担当者から説明を受ける様子 設楽ダム広報展示室で担当者から説明を受ける様子
  • 昼食は名物の「したらダムカレー」 昼食は名物の「したらダムカレー」
  • 情報工学部始動
  • 社会連携センターPLAT
  • MS-26 学びのコミュニティ