特設サイト第28回 漢方処方解説(8)六君子湯

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    六君子湯

今回取り上げる処方は、2014年に日本で生産された漢方製剤のうち第4位の生産高を誇る(※1)「六君子湯(りっくんしとう)」です。

明代(1368~1644年)の医学書で1,000処方ほどの漢方薬を収載した「万病回春」にある処方で、現代医学的には主として慢性胃炎や胃下垂症、胃アトニー症などに用いられてきました。

構成生薬は、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、大棗(たいそう)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)の8種の生薬からなります。構成生薬のうち、最初の6種は「四君子湯(しくんしとう)」そのものですし、茯苓以下の5種で「二陳湯(にちんとう)」でもありますから、両者の合方とも言えます。胃腸機能を高め、消化吸収を改善し、さらに胃腸内の水分の停滞をとるように設計されています。

本処方については、基礎・臨床両面からの科学的な解析が進み、まずは機能性ディスペプシアや逆流性食道炎などの治療に積極的に用いられるようになりました。みぞおちの痛みや不快感、吐気などの自覚症状があるにもかかわらず、画像診断などでは明らかな病変がない、そんな不快な症状が長く続く状態を改善する作用を持ちます。

また、食欲不振に対する作用についても多くのことがわかってきました。わたしたちの身体の中には、食思促進効果をもつ「グレリン」というホルモンが存在しますが、六君子湯はこの「グレリン」の分泌を促進するだけでなく、さらにその標的分子である「グレリン受容体」の感受性を上げるなど、相加・相乗的に「グレリンシグナル」を増強することで食欲不振を改善することがわかってきました。とくに、がん患者さんの食思改善や嘔気・嘔吐の改善に有効であると報告されたことは、臨床応用に際し、重要な発見だと思います。

さらに最近の研究では、老化マウスに投与したところ、六君子湯がマウスの寿命を延長させることも報告されており、非常に興味深い事例となっています。この例においても、自ら食事をとり、生命活動のために必要な栄養素を摂取するという基本的な機能を整える作用が六君子湯にあるからではないかと思います。病に倒れた際にも、きちんと口から食事をとることが早期の回復に重要であるという事例も数多く目にすることです。

食べること、あるいは食欲という基本的なことがわたしたちの健康の維持・増進の上でいかに重要であるか、あらためて考えさせられる処方ではないでしょうか。

なんとなく胃に不調を感じる、そこのあなた。
朗報ではありませんか?

(※1)出典:平成26年「薬事工業生産動態統計年報」

(2016.8.30)

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