特設サイト第32回 お世話になった漢方処方2016

12月も半ばを過ぎ、いよいよ2016年もその終わりに向けてカウントダウン体勢に入ってきました。それほどには寒くもなく、うららかな年の瀬といったところでしょうか。
毎年恒例の「新語・流行語大賞」や「今年の漢字」もありますが、グッズや書籍、音楽など一年の間に世の中に出たものの年間ランキングなども発表される頃です。
そこで、今回の漢方随想録では、極めて個人的な話になるかもしれませんが、今年お世話になった、あるいは気になった漢方処方について綴ってみたいと思います。

12月に入って、遅まきながらインフルエンザの予防接種をしたのですが、一週間もしないうちに風邪をひいてしまいました。身体のあちこちが痛み、喉も少し痛く、徐々に熱が出てきたと、まるでインフルエンザに罹ったような症状でしたが、念のため検査をしてもらったところ「陰性」でした。悪寒もなく、突然の発熱、身体痛ということで、麻黄湯(まおうとう)を煎じて服用し、「ほぼほぼ」一日で回復しました。今回もその即効性と効き目に感嘆した次第です。

秋口には、まだまだ暑い日が続いたせいで、飲料水など飲み過ぎたせいか、夜中にトイレに起きることが続きました。なぜだかその頃は夢見も多く、ふと気になって漢方でもと考え、いろいろな書籍をながめた結果、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)をOTC(※1)ではありますが試してみました。結果としては良好で、夜半にトイレに起きることもなく、夢もあまり見なくなり、快適な睡眠を確保できるようになったのですが、これも初めて服用した処方なので、その効果に驚きました。
清心蓮子飲は、蓮肉(れんにく)といってハスの種子を用いる漢方処方です。八事キャンパスのベンゼン池に植栽したハスもいくつか花を咲かせ、種も見せてくれましたので、私にとって印象深い処方となりました。

ハスの花

ハスの花

ハスの実(左)と種子

ハスの実(左)と種子

また、今年になってTVのコマーシャルでよく見かけますが、このコラムでも取り上げた半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)も今年気になった処方でしょうか。「のどの違和感」にと宣伝されていますし、西洋医薬品ではカバーしきれない自覚症状の改善に漢方薬が一役買っているのは事実です。
その他、相変わらず、ときどき芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)のお世話になりましたし、飲み過ぎたときには五苓散(ごれいさん)や黄連解毒湯(おうれんげどくとう)のお世話にもなりました。ほとんど定番ですね。
さらに、私どもの研究室では、夏の卒論研究セミナーや研修旅行の際に、咳やのどの痛みを主訴とする夏風邪が大流行したのですが、その際には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が活躍しておりました。研究面でもさまざまな漢方処方を日々調製しており、当然のことながらいろいろな発見をしています。今年は学会でもいくつか表彰されましたし、いろいろと楽しみな成果もでてきております。

来年もいろいろな発見を漢方薬の中に見出すことができれば幸せだなと思いつつ、年末の大掃除をしたいと思います。もちろん、ラジオで今年のヒットチャートを聞きながら。
みなさんも今年一年を振り返りつつ、新たな一年をどうしようか考えることでしょう。
良いお年をお迎えください。

(※1)英語の「Over The Counter」の略語。医師が処方する「医療用医薬品」ではなく、薬局やドラッグストアなどで買うことができる「要指導医薬品」と「一般用医薬品」のことです。

(2016.12.22)

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