特設サイト第135回 漢方処方解説(77)胃苓湯
今回ご紹介する処方は胃苓湯(いれいとう)です。
この処方は、急性胃腸炎や機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群などに用いられる処方で夏の下痢症にも用いられています。これからの暑い季節、ついつい冷たいものを食べすぎてお腹を壊すこともあるでしょう。あるいは、暴飲暴食をして下痢をする場合などに効果を示すものとして知られています。
構成生薬を見ますと、朮(じゅつ)、厚朴(こうぼく)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、陳皮(ちんぴ)、桂皮(けいひ)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)の10味からなる処方で、胃苓湯は平胃散(へいいさん)と五苓散の合方と考えることができます。平胃散は朮、厚朴、陳皮、甘草、大棗、生姜からなるもので、急性および慢性胃炎、機能性ディスペプシアや胸やけ、呑酸などの胃食道逆流症(GERD)、下痢や過敏性腸症候群などによる消化不良や食欲不振に用いられる処方です。理気薬の厚朴が配合されていますから、みぞおちの膨満感を訴える消化器疾患には有用です。一方で、五苓散は利水薬の代表で(第4回、第26回を参照)、沢瀉、猪苓、茯苓、朮、桂皮が配合されています。
医療用漢方エキス製剤の胃苓湯には、芍薬が配合されたものもあり、その場合は腹痛が強い場合によいと考えられています。感冒に用いられる桂枝湯の芍薬の配合量を倍にすると、体表面を温め、発汗させるはたらきから、お腹を温める作用に転じ、そのため腹部膨満感をともなう腹痛や過敏性腸症候群に有効な処方、すなわち、桂枝加芍薬湯になるという場合と同じと説明されます。
今年も梅雨時に台風がいくつも日本列島に近づき、各地で発生する地震とともに不安な日が続きます。食欲も低下することもありますが、高温多湿な夏を乗り切ろうと冷たいものの食べすぎや、スタミナをつけようなどとついつい食べ過ぎてしまうことがあると思います。そんな折に、消化不良の下痢や水溶性の下痢までいろいろな形でお腹を壊すことがあります。ときに痛みを生じることもあるでしょうが、発熱などの全身症状がないため、食中毒とは考えにくいなどというときに有効だと思います。また、同時に口が渇くとか、尿量が減ったということがあれば、最適だと思います。
ドラッグストアで販売されている漢方エキス製剤(第2類医薬品)の中にもありますので、もしものときにはお試しください。
(2026年7月1日)


