特設サイト第138回 竜骨について

  • 竜骨

今回は「竜骨(りゅうこつ)」という生薬についてのお話です。

竜骨は鉱物生薬の一つで、教科書によれば、ゾウやサイ、ウシ、ウマ、カモシカなどの大型ほ乳動物の化石化した骨を用いるもので、主に山西省や、陜西症、甘粛省など中国を産地としています。また、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムを成分とし、鎮静、収斂、心悸亢進の改善、不眠の改善や補腎に用いられています。漢方医学、中国伝統医学において、主に精神不安定、煩躁、不眠などに応用される「安神薬」の代表的なものです。

安神薬には、重鎮安神薬と養心安神薬の二種類があり、重鎮安神薬については「重いものは気を静めて、落ち着かせる作用がある」と考えられ、その名が付いたとされます。竜骨やカキの貝殻を用いる牡蛎(ぼれい)が代表的な生薬です。一方で、植物性の生薬を用いたものが養心安神薬で、遠志(おんじ)や酸棗仁(さんそうにん)といった生薬があります。

さて、その竜骨ですが、漢方配合生薬として「消尽」する可能性が非常に高く、医薬品として代替品を用意するというニュースが入ってきました。

日本で用いられる医薬品の品質を正しく保つために、厚生労働大臣が定めた公的な規格基準書(公定書)を「日本薬局方」と称するものがあります。5年に一度大幅な改定があり、その間に2度マイナーチェンジとして追補が出されるもので、現在、第十九改正日本薬局方が施行されています(2026年4月10日告示)。また、その第一追補についての案が提出されて、パブリックコメントの募集がなされていますが、その中で「竜骨の消尽」に伴い、「沈降炭酸カルシウム」を代用とする案が新規収載漢方エキス(柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蛎湯)の中で記載されています。

  • 海螵蛸(烏賊骨)

生薬は天産物ですし、栽培ができない場合には資源に限りはあるものですが、それを目の当たりにすると少々戸惑います。

中国や台湾でも竜骨が欠品することがあり、その際には牡蛎や海螵蛸(かいひょうしょう)で代用すると聞きました。海螵蛸は烏賊の骨(甲、内殻)を用いる生薬だそうで、成分は炭酸カルシウムとされており、その点竜骨と同じです。別名、烏賊骨(うぞくこつ)といい、「漢薬の臨床応用(神戸中医学研究会訳・編)」によれば、コウイカの骨状の内殻を日干しにしたもので、収斂、制酸、止血などの作用があるそうです。どちらかといえば、安神薬というよりは制酸・鎮痛や止血(とくに泌尿器・生殖器の出血、不正性器出血)、止瀉に用いるとあり、代用となるのか不思議に思いました。本学の標本室にもありましたので、写真を掲載します。

生薬の資源問題は、なかなかに大変だと痛感しております。

(2026年10月2日)

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