特設サイト第137回 漢方処方解説(78)通導散

今回ご紹介する処方は通導散(つうどうさん)です。
原典は「万病回春(1587年)」と言われていますが、それ以前の「古今医艦(1576年)」の巻16折傷門に記載があるとされます。元来、打撲傷に対する処方とされていますが、昭和初期の森道伯を始祖とする一貫堂派によって「駆瘀血剤」の代表処方とされています。

構成生薬は、枳実、大黄、当帰、甘草、紅花(こうか)、厚朴、蘇木(そぼく)、陳皮、木通、芒硝の10種です。この構成をよく見ると、大黄と甘草との組み合わせは大黄甘草湯(第55回)ですし、それに芒硝が加わりますと調胃承気湯(122回)となります。また、大黄、厚朴、枳実、芒硝の組み合わせもありますから、大承気湯としての顔も見えます。これら承気湯類には本コラムでも取り上げた桃核承気湯(第77回)もあり、大黄を中心としていますが、使い分けは様々です。大黄甘草湯は常習性便秘に応用されるように下剤としての特長が強いと考えられるのですが、調胃承気湯では胃を整え、気を承ける(たすける)、すなわち気の巡りをよくするとされます。大承気湯では枳実と厚朴といった理気薬が配合されていますから、気滞の解消といった色が強くなっていると考えられます。一方で、桃核承気湯は調胃承気湯に桃仁と桂枝を加えただけのものですが、駆瘀血作用を主とするものになっています。構成生薬が少し変わるだけで、いろいろと適応が変化していくのは興味深いことですが、中心にある大黄自体も多彩な作用をもつことを示唆していると思います。

さて、通導散ですが、大承気湯に桃核承気湯の方意を加えた「加味承気湯(万病回春に収載される処方)」からさらに発展した処方と考えられているそうです。つまり、体格や体質としては丈夫で栄養状態のよい、いわゆる実証タイプの方で、そもそもは打撲傷に用いられる処方であることを基本とし、駆瘀血薬としてのはたらきを期待して月経不順や月経痛、更年期障害などの婦人科疾患、便秘、肥満した高血圧症の方の頭痛やめまい、肩こりの改善に、また腰痛などにも用いられています。打撲に用いる処方としては、以前にご紹介した桂枝茯苓丸(37回)治打撲一方(61回)などの処方もありますので、ご参照ください。

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漢方一貫堂の書籍に記載された「通導散」の記述

漢方薬の奥深さは計り知れなく、それぞれの成り立ちや特性については構成生薬のはたらきから理解していくのが一つの近道だとは思うのですが、使い分けなどについては漢方医学の「証」についての考え方をある程度知らなくては難しいことだと思います。先人たちがどう読み解き、どのように応用したかを知ることも大切だと思いますので、いろいろな流派の考え方を比較することも興味深いことだと思います。

(2026年9月4日)

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